関西テレビ放送株式会社


番組審議会
No.604 2019.4.11
関西テレビ
「僕が笑うと」について審議
出席の委員

上村洋行 司馬遼太郎記念館 館長 司馬遼太郎記念財団 理事長(委員長) / 難波功士 関西学院大学 社会学部長 教授(委員長代行) / 安東義隆 産経新聞社大阪本社 編集局長 / 井上章一 国際日本文化研究センター教授 / 金山順子 適格消費者団体 ひょうご消費者ネット 専務理事 消費生活アドバイザー / 黒川博行 作家 / 高江洲ひとみ 弁護士 / 通崎睦美 音楽家 文筆家

レポート参加

早嶋茂 株式会社旭屋書店 代表取締役

関西テレビ

福井澄郎 代表取締役社長 / 宮川慶一 専務取締役 / 前田ひとみ CSR推進局長 / 妻屋健 編成局長 / 安藤和久 制作局長 / 兼井孝之 報道局長 / 安渕修 スポーツ局長 / 松田茂 制作技術局長

4月11日に開催された第604回関西テレビ番組審議会では、4月期の番組改編報告に加え、2018年度下期 6カ月間の番組種別ごとの放送時間の集計と CM放送時間について報告があり、番組審議会の了承をいただきました。審議番組は、カンテレ開局60周年記念の最後を飾る特別ドラマ『僕が笑うと』が審議されました。戦時中の大阪を舞台に、5人の孤児を養子として引き取って育てた夫婦を描いたオリジナル作品で井ノ原快彦と上戸彩が夫婦役で初共演のドラマについて委員の皆様から貴重なご意見をいただきました。

番組を見た感想

子供がいない夫婦のところに5人の孤児が集まってきて疑似家族をつくるという、疑似家族でありながら、その絆は強くて、家族愛が生まれていく、みんなでご飯を食べて楽しかった、みんなで一緒に笑っておればいいんだ、つまり笑いとユーモアを持てる家庭の大切さをテーマに、今の時代にこのドラマをつくったということは、私は大変よかったのではないかなというふうに思います。
井ノ原さんと長男さんの交流を見ても、うるっと泣けましたし、気づけば時間がたって、意外に楽しめたなというのが感想です。ただ、ちょっと突っ込みどころも多くて。今回、心を動かされたドラマだったかと言われると、そうでもなかったなというのが感想です。
「満州」「支那」「非国民」「召集令状」当時の時代背景をわかっているのと、わかっていないのとで、ドラマに対する理解や受けとめ方が違ってくるはずです。今の視聴者を考えたら、いろいろ説明してあげないといけない部分も必要でしょう。その説明の仕方が難しい。どういうのがいいでしょうか?
戦争の悲惨さばかりを強調していないし、ある種のユーモアもあったし、それで、戦時下の一家族から戦争を描いたのがこの作品の一番の狙いであったと思います。それは成功したと僕は考えました。
スマホ全盛で、家族の誰が何処で何をしているかも判らなくなっている時代に、このドラマはそんな家族の在り方について、血縁の無い「寄せ集めの家」でも、一つ屋根の下で家族全員が強く結ばれている時代があった、と言う事を思い起こさせてくれました。

脚本・構成について

真面目につくったよいドラマであったと思いました。丁寧につくっています。これ、大きな起伏のないプロットであり、ストーリーなのですが、脚本をしっかり書いてて、監督もしっかり撮っているように思いました。
あまり感動しなかった理由としては、気づいたらお子さんが増えていて、みんなが仲よく暮らしているシーンが出てくるんですけど、家族になるまでとか、仲よくなるまでの過程があまり描かれていなかったのかなと思います。
注文としては、トメ子という吉行和子さんがやっている人だけが戦後出てくるんですけれども、ああいう夫婦自体やせっかくそれなりにキャラクターが描かれていた子供たちが、戦後どういう人生を送ったのか、私は見たかったかなと思います。

現代のシーンについて

現代のシーンが本当に必要だったのかどうか。末っ子が語り手として出てきてたんですけど、過去の話のときに、末っ子さんのエピソードがそんなになかったので、現代のシーンは必要だったのかなというふうに、単純に疑問に思ったところはあります。
おばあちゃんが孫たちに語るシーンで「非国民」など戦争というものを説明することも出来たかなと思います。
おばあちゃんに語らせるというこの構成が安っぽくて、これを見ただけでちょっと何か余り見る気がしなくなっちゃうぐらいよくないと思いました。
現代のベッドの病院の風景は、白い光にあふれていましたよね、ひょっとしたら、病院の明るい風景は戦時の様子を際立たせるための伏線だったのかなと思いました。

美術に関して

最後のシーンで、昔見つけた四つ葉のクローバーが出てきましたが、妙に青々として元気なクローバーなので、70年以上の前のクローバーには見えず、気になりました。
小道具の扱いにはもう少し配慮が必要。ストーリーの重要アイテムである四つ葉のクローバーが70数年経過しても青々としているのはいただけない。
美術と時代考証がしっかりされているように思いました。例えば、豊中あおば園の柵とか、校庭のベンチとか、いかにも古臭い、ペンキも剥げてる。そういうところはしっかり作っているなと思いました。

映像のトーン

お茶の間の風景が結構明るい、照明も明るくなっていて、本当の戦争中はこんなに明るいはずないよなと思ったけれども、家族の団らんの明るさを示すためのこれも演出の一つなのかなということで、表情が見えにくいほど暗い画面だと、反対に見ていて気分が重くなるというのもあるので、そうじゃないつくりにしているのかなという点はいいなと思った。
古い時代のドラマだということを示すためだと思います。淡い茶褐色とグリーンのまざったような色合いが画面の全体を覆ってたと思います。アースカラーとでもいうんでしょうか。写真だとセピア色という言い方がありますよね。そのセピアの色ではありません。だけれども、光の演出で時代がかった古色を醸し出すことに努めておられたと思います。
映像がきれいです。色がやわらかいのは、多分時代づけのためにああいうふうに色を全体に落としている、彩度を落としているように思うんですけども、あれも成功しているかなと思います。CGも含めて、その映像処理を映画的なソフトフォーカスに傾けていない。だからテレビのドラマと映画の映像との中間ぐらいな感じがしました。

大阪を舞台にしたこと

あえて大阪を舞台にする必要があったのかなという気がしました。東京を舞台設定にして標準語で会話させてもよかったのかなと。井ノ原さんと上戸さんのイメージから、お二人の関西弁にちょっと違和感を感じました。
消防訓練の折に、国民服を来たおやじさんが国防精神を振りかざすのに、長男は戦争への疑問をぶつける。このとき国民服のおやじは「口が裂けても憲兵の前ではそういうことを言うなよ」と言う。これは戦時に人々はあおられ、国民精神は総動員されたと普通語られます。だけど、とりわけ京都や大阪ではあおられなかった大人が結構多かったと聞いています。その側面も捉えてくださってよかったと思います。その意味で、関西を舞台としたことに意味があったように感じました。
戦争の怖さみたいなことがこのドラマのテーマの一つとしてあるんだとすると、軍国少年化していく浩太のほうがもっと前面に出ているほうがよかったかなとちょっと思いました。大阪の子であっても、当時のイデオロギーを割と素直に信じて、憲兵に言うなと大人が言ったとしても、割とこの子はそれを軍国少年としてそれを素直に信じていてというほうがよかったんじゃないかなと思いました。
戦前の大阪の地方都市、豊中を舞台にしたのがやっぱりうれしかったですね。大阪を舞台にして,大阪弁も使ってほしかった。子供たちのキャラが各自立っているのもよかったなと思います。長男の心理を描いて、なおかつ末っ子がかわいかった。
主役の井ノ原さんや上戸彩さんの奥さん役も違和感なく、この人たちは東京の生まれなんですね。それなのに、大阪弁がそんなに違和感なく聞こえました。私はなかなか大阪弁のイントネーションにうるさいんですけれども、感じなかったです。

番組に対する評価

関テレの60周年記念ドラマ、ほかに「なめとんか」と「BRIDGE」とあって、「なめとんか」も物すごく頑張っているとは思ったんですけれども、その2本と比べてもよかったなと思ったのと、さらに他局の話をすべきじゃないと思うんですけれども、やっぱりフジテレビ60周年記念「砂の器」と比べても、こういう素直な企画を素直につくるというのがよかったなと思っています。
「僕が笑うと」というタイトル自体、感動物が苦手な私にとっては、感動物ですよというふうに宣伝されてる気がして、ちょっと私個人的にはひっかからないタイトルだったのかなと思います。
戦時ものではなくホームドラマとしての視点で描かれている点が良かった。見ている側も穏やかな気分でいられる。春休み中の子供たちにも見てもらいたい番組だった。
「楽しかったら頑張れる」と言うセリフがこの番組を象徴している言葉で、笑顔が家族をつないでいるのはその通りだと思いますが、カンテレ開局60周年特別ドラマと言われると、ちょっと軽いかなと感じます。
いろんな取材に感心しました。児童保護施設、屋内でははだしでした。スリッパがないんですよね。ああ、そういう施設も、当時ならあったなと思いますし戦前の横書きはみんな右から左です。画面でも右から左にほとんどしていらっしゃいました。ただ、大学の生物の授業は、横書きを左から右にしていました。これも大学ではそうだったんですよ。だから、細かいところまで取材ができているなと思いました。
カンテレの新しい社歌ができて、カンテレのテーマは「超えろ」ということだと何か前に聞いたことがありまして、そういう意味では60周年なのに超えてないなみたいな気がして、もうちょっと優等生的じゃなくて、超えてくれという思いがあって見ました。
私は若い人たちがこれをどんなふうに見たのかなというのを知りたいなと思いました。みんなでご飯を食べる、笑顔で暮らすということの大事さのようなもの、そういうものを一緒にいるという時間の共有が今、薄れていっている社会にあるわけですね。何かそういう大切さ、そのことを改めて考えさせるようなドラマになったのではということで、このドラマを評価いたしました。

番組審議会に出席して

制作局 東京制作部 プロデューサー河西秀幸
周年ドラマは、連続ドラマなどでは実現しにくい王道のテーマ、さらには時代モノをやりたい想いで制作に臨みました。目指したドラマは、細部までリアルな時代描写にこだわる戦争ものというよりは、家族の心の触れ合いを主眼に置いたヒューマンドラマ。そのため、当時の表現に関しては賛否両論のご意見を頂きました。戦時中を描く上で、ストーリー作りを追及するだけではなく「戦争を知らない方に、何を、どう伝えるか?」。この目線も必要だと感じました。テレビが後世に伝えていて行く使命と呼んでも良いかもしれません。今回のご意見を参考にして、物語性と情報性のバランスは今後の課題にしたいと思います

〒530-8408 大阪市北区扇町2丁目1-7 関西テレビ放送 番組審議会事務局

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