番組審議会 議事録概要
『報道ランナー防災SP 揺れる災害医療~コロナ×巨大地震~』について審議
- 放送日時
- 2021年3月8日(月)
(※報道ランナー 15:45~16:45/[特集部分]16:11~17:15の審議) - 視聴率
- 個人全体
[関西]1.5% 占拠率(10.0%) - オブザーバー
- 報道局 防災特番プロデューサー
豊島 学恵
防災特番ディレクター
押川 真理
参加者
委員 |
委員長※上村洋行(司馬遼太郎記念館 館長 司馬遼太郎記念財団 理事長) 委員長代行難波功士(関西学院大学 社会学部 教授) (敬称略50音順) |
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関西テレビ |
※羽牟正一 代表取締役社長 |
※印は対面出席、以外はオンライン(zoom)出席
議題
- 2020年10月から2021年3月までの番組種別・CM総量の結果報告、4月改編及び放送番組種別等の報告
- 局に寄せられた視聴者からの意見苦情等の概要(3月分)報告
- 審議番組「報道ランナー防災SP 揺れる災害医療~コロナ×巨大地震~」
(※3/8(月)報道ランナー内 16:11~17:15 放送部分) - その他 番組全般、放送に対するご意見、ご質問等
第623回番組審議会は、新型コロナウイルス感染防止対策のため、オンラインと一部対面による開催とした。2020年度下期の番組種別等の結果及び 4月改編について報告し、委員会から承認をいただいた。審議番組は、「報道ランナー防災SP揺れる災害医療~コロナ×巨大地震~」。
コロナ禍での災害、医師の言葉の重み
- 石巻赤十字病院の石井正医師が「コロナと地震、津波が複合的に起きたら?」との質問に対し、「どうにもならない。しょうがない」と答えられていたが、その一言を諦めの言葉とはとらず、「どうにもならない」からこそ一人一人が今、何ができるのか、きちんと考えておかなければならないという警鐘のように聞こえた。
- 震災当時の混沌とした状況を指揮されていた医師の「文化レベルが一気に下がる、江戸時代に戻る」という言葉が一番印象に残っている。コロナの状況で災害が起きたときに、この医師が言っていた「PCR検査なんかできますか」というのはすごく心に残った。
- 医師の、災害のときに感染防御なんかできないという言葉がすごく重く聞こえた。本当にそうだなと。やっぱり現場にいる人の言葉というのは非常に強いなと。
- コロナと巨大地震にどういう解決策があるのかという点では、残念ながら答えは見いだせなかったということだと思うが、地震の被災者だけだったら被害者だが、コロナ感染が加わると、被害者であると同時に、表現は適切ではないかもしれないが、加害者にもなり得るということになる。あらためて考えさせられた。
- コロナ禍で災害が起きたらどうなるのかを、かねがねこの番組で取り上げてもらったらと考えていたが、よくできていた。自分の身を守るということをこれほど強くアピールした番組を今まで見ていない。医者側の発言もここまではっきり聞いたのはこれまでなかったので、怖さとともに、今の時代に対応し、新しい提言になったような気がした。
ドラマ再現部分について
- コロナ禍で災害が起こった場合にどんな状況に立たされるのかというシミュレーションのドラマ仕立てが非常によかった。(避難所に)派遣される人が2人しかいないという現実もよく分かったし、「検温なんてできますか」、「物資も速やかに届かない状況でどうなりますか」ということも、いつもの報道では見落としてしまいがちなことをドラマ仕立てにすることで、より実感できた。
- 南海トラフの地震と未治療死をシミュレーションしてテーマにした話もよかったし、この再現ドラマもリアリティがあった。いつもならもっと大げさに騒ぎ立てるが、ドラマ仕立てであるということをあまり意識させないように抑えた演出だった。
特集全体について
- 現実を知るということで、自分の身は自分で守るということが大変よく分かったが、その守り方が具体的でない。「江戸時代に戻る」というのがすごくインパクトのある言葉だったので、江戸時代に戻った感覚で、サバイバル的に自分の身を守るやり方を身につけたらいいんじゃないか、と具体的に指南してもらえたら、未来予想するだけじゃなくて、ためになるようなことがあったかなと思う。
- 治療されない未治療死のシミュレーション、市町村等が濃厚接触者の情報を把握できないことなど、視聴者の多くが知らないであろう事実、情報を世の中に発信したことも報道機関として意義のあることだと評価している。
- 絵になる構図をもとめて、テレビ局が被災地へむらがることは、どう考えたらいいのか。救災でつとめる人びとへマイクを向ける振舞に、問題はないのか。各局で取材調整をする手だては、さぐれないか。以上のような問題なら、この番組でも語りあえたのではないか。
- ワイプは必要ではないのでは。ワイプの出演者の不安そうな顔、しかめっ面が視聴者に不安をあおることになってはいないか。
- ひっかかったのは、先生が取材者に「あなたは津波見たことないんだ」ということを問い返したシーン、ものすごく重たいシーンのように思った。そういう意味では見応えもあったし、持つべき危機感を抱かせてもらったという意味では非常にいい番組だったと思うが、感想でいうと、しんどいというのが多くあり過ぎたかなという気がした。
- 防災スペシャルということで、コーナーが3部構成でなされていて、この構成がとても効果的だった。まず10年前の東日本大震災での医療現場という視聴者からば少し距離のある情報から始まり、徐々に視聴者にも関係のある被災者になった場合の病院での治療のこと、最終的には個人の在り方。コロナが蔓延する中で避難所に駆け込むことがどういうことなのか自分事として捉えようというところに着地させたこの構成がとてもよかった。
- 東日本大震災発生から丸10年ということで、何度見ても衝撃を感じる映像。見るのがつらい映像だが、防災という観点では、これからも防災スペシャルなどの制作を続けてもらうことが、関西テレビの大きな使命だと思う。
- 最後の結論が気になった。コロナと災害に備えるため、私たちがとるべき行動として「自分の身は自分で守る」「分散避難」を掲げたが、確かにその通りだとは思う。ただ、良質な番組を作り上げたのだから、もう少し深い提言ができたのではないか。視聴者に行動を促すようなまとめを作ることができたのでは。
- 次の番組で、近畿エリアの現状を把握して、自治体あるいは病院の現状、実態について、できれば我々への提言、行政のほうに対しても提言できるような番組を、つくってもらいたい。
委員のご意見を受けて
- 報道局 防災特番プロデューサー
豊島学恵 - 番組の内容は、気楽に見られるようなものではなく、視聴率1.5%という結果で臨んだ審議会でした。ご評価を頂けた部分もありましたが、防災をテーマとする中での「危機感疲れ」「しんどさ」をどう克服するのか、もうひと展開がなかったか、とのご指摘もいただきました。「暗い」「まじめ」「深刻」と言われるテーマを、多くの人に届ける特効薬は見つかりませんが、それでも努力を続けなければと、改めて感じました。ありがとうございました。
- 報道局 防災特番ディレクター
押川真理 - ご意見を頂き、改めてひとつひとつの取材・撮影の大切さを感じました。10年前の東日本大震災の映像が、大災害の恐ろしさを語り、多くの教訓を伝えてくれているように、今私が取材していることは10年後にも通じる課題かもしれません。また、番組内では「自助が大切」ということに重きを置きましたが、コロナの影響が長くなるにつれて、やはり公助・共助の力が必要になってくると思います。その点を意識しながら引き続き防災報道に取り組んで参ります。