番組審議会 議事録概要

No.645 2023.6.8

「ザ・ドキュメント 泉と房穂 やさしい明石の暴言王」について審議

放送日時
2023年5月19日(金)25:25~26:25
視聴率
個人全体
関西地区0.7%(占拠率17.5%)
オブザーバー
クリエイティブ本部 報道局 報道センター ディレクター
宮田輝美

参加者

委員

委員長

上村洋行(司馬遼太郎記念館 館長 司馬遼太郎記念財団 理事長)

委員長代行

難波功士(関西学院大学 社会学部 教授)

井上章一※(国際日本文化研究センター 所長)
上野信子(ジャトー株式会社 顧問  関西国際交流団体協議会 理事)
黒川博行(作家)
高江洲ひとみ※(弁護士)
通崎睦美(木琴奏者)
早嶋 茂(株式会社旭屋書店 取締役会長)
堀  洋(産経新聞社大阪本社 大阪代表補佐兼編集局長兼写真報道局長)

※レポート出席(敬称略50音順)

関西テレビ

羽牟正一 代表取締役社長
宮川慶一 専務取締役
和田由美 コーポレート局長
島本元信 コンテンツデザイン局長
江口 茂 報道局長
西澤宏隆 スポーツ局長
横山和明 制作技術統括局長
乾 充貴 制作局 制作部長(代理出席)

議題

  • 関西テレビ決算ならびに役員人事、局長人事について報告
  • 局に寄せられた視聴者からの意見苦情等の概要(5月分)報告
  • 審議番組「ザ・ドキュメント 泉と房穂 やさしい明石の暴言王」
    (5/19金 25:25~26:25放送)
  • その他 番組全般、放送に対するご意見、質問等

第645回番組審議会は、5月19日に行った当社の決算発表・役員人事等についての報告、5月の視聴者対応報告のほか、今回の審議番組「ザ・ドキュメント 泉と房穂 やさしい明石の暴言王」について、委員から意見が出された。

 「ザ・ドキュメント 泉と房穂 やさしい明石の暴言王」
番組概要

2019年、職員への暴言が明らかになり辞職、その後の出直し市長選で圧勝した泉房穂明石市長。辞職から圧勝までの日々を4年前、「舌禍『暴言』市長は圧勝した」で伝えた。去年10月、今度は議員と元議員3人に暴言を放ち、翌週、問責決議が可決された議会で任期満了での政治家引退を口にした。
しかしその後も、自らが立ち上げた政治団体「明石市民の会」から議員の候補予定者を発表するなど、活発な政治活動を展開し、去就についても注目を集めた。
子どもの頃、「冷たい社会」への復讐を誓ったという泉市長。「市民のため」と叫び続けた政治家は、「民主主義」を体現することはできたのか。12年間の明石市政を振り返る。

委員からのご意見

  • この人の難しさは、特別。この人自身の人生を、自分で意図的に演出しているようなところがあり、一方で、ものすごく破滅的でもある。裸の「泉房穂」なんてそもそも見えない人なのだ。こういう人のドキュメンタリーを作るのは難しい。ものすごいチャレンジだったのだろう。
  • 番組を見て、改めて“民主主義”とは、“市民”とは、“何が正しい”のかと考えさせられた。
    泉さんも最後の場面で弱気、謙虚になられて、犬に向かって「正しさがわからない」とおっしゃっていたところ、最後まで、これは素なのか?ということを疑いながら見た。
  • 炎のようなと言われる人がいる。泉房穂さんも、そのひとりなんだろう。炎はとりまく人びとを、あかるくてらし、あたためもするだろう。だが、すぐそばにいる人は火傷をおいかねない。選挙民からは共感をいだかれる。そのいっぽうで、市会議員や公務員の多数からは、そっぽをむかれてきた。そんな泉さんの人と態が、この番組でよくわかった。
  • 最後に奥様と犬を演出し、「友達おらん。友達なんかほしいと思ったことない」と言った泉氏が、犬に「友達やからな」と呼びかけるという、落語のような落ちにしたのは見事。
    でも実は、これしかなかった。そういう意味では、作り手は、手だれだなと思った。
  • 最後に「友達な」という言葉があるが、結局うわべだけ付き合う友達しかいなくて、本当の友達は離れざるを得ない。彼によく「わっ」と上から言われたりする部下とか、友達とか、言われた人は想像以上に傷つくし、それを回避しようと思うと離れていかざるを得ないので友達はできないのではないか。
  • 職員さんと市長の泉さんが信頼関係を築けなかった理由がわかったような気がした。
    時間の感覚が全く異なっている。スピード感が異なるので泉さんはいつもいらついてる職員はなぜいらつくのかわからない。どちらが正しいのかはわからない。
  • 明石市の市長選の投票率というのは40%台で、そこで圧勝したからといって本当に市民を代表しているとまで言っていいのか。議会とは大きくけんかをしているわけだから、余計にそこが浮き彫りになった番組だった。
  • 番組はタイトルに優しさというのを入れている。しかし、泉市長がしゃべりまくるシーンだけではその優しさというのは感じられない。最後に団らんを入れたのはよかったが、奥さんの発言や愛犬との戯れのようなものが出てきて、それを優しさに結びつけるのはどうなのか。つまり、その是非論というのはよくわからないけども、それだけで優しさというタイトルにしたことは、ちょっとしんどいのでは。
  • 夫人との会話のシーンがあって、この泉という人の「まとめ」をつける。この演出は冴えた。
    ここで、そういうことであったのかなというふうにして、離婚云々と、ひょっとしたら本当に離婚するのではないかという感じはしたが、それは演出のさえであった。
  • 「人のアイディアをいいなと思ったら自分のアイディアと思ってしまうから人の意見を聞かないと思っている」との奥様の意見に対して、「人のこと信用していないし。友達ほしいと思ったことないもん」と泉さんが返したこの会話は、泉さんの性格や行動をよく表しているものだと思った。そういう上司やトップとは、下の人が働きづらく組織としては崩れてしまうとも納得させられた。
  • ドキュメンタリーの形は何がベターなのか。最近の潮流では、全編ナレーションを入れず、インタビューでつないでいく。そのためには深く長尺のインタビューをしなければならない。時間も、相手の協力も必要で、素材も限られる。
    ドキュメンタリーは、演出を排除することが、あるべき姿なのではないかと思う。
  • 筋立てを講談風にし、ナレーションに講談師を立てる演出に違和感があった。人生をエンタメにして表現するというのは、ありだと思うが、ドキュメンタリーとしてはどうなのか。
  • ドキュメンタリーで大事なのは、素材。進行中で、ニュースにもなる政治家を素材にするのは非常に難しい。どっちに転ぶかわからないような話だし、政治家はこれまでの経緯があるので背景も含めていろんな説明をしないといけない。非常に慎重にやったとしても、ひとつの演出になってしまう。
  • 一般の議員に対する風潮として、政治家は誰のための政治をしているのか、議員は何もせず自己保身のみだというような意見をよく聞く。そういう旧態依然としたイメージのバイアスみたいなものが、市民の目線の中にかかってしまって、その上に泉市長は、医療の18歳の無料化や、市民に5,000円券配布、中学生給食の無償化みたいなものを訴えていく。施策という背景があるわけで、こうなってくると、暴言が何か実行力の表れのようなものに、バイアスと重なるようにして市民に映ったのではないのかと勝手な推測をした。
  • (泉氏は)これで引退されるということだが、本当にするのか、追いかけて今後の動向を見るのも面白いし、各地方の政治の場で政党政治が行き詰ってるみたいなことも割と一つの現れみたいに思えるので、明石の特殊な事例というより、もっと普遍性のある事例として、今後も追いかけてほしいテーマだ。

委員のご意見を受けて

クリエイティブ本部 報道局 報道センター
ディレクター 宮田輝美
映像に込めた意味にまで及ぶ深いご感想をいただきました。取材中、民主主義について思うことが多かったのですが、「民主主義とは何かについて考えさせられた」と言っていただき、制作者冥利に尽きます。
講談師の語りについては、ドキュメンタリーとしてはいかがなものかというご指摘もいただきました。和らげる為にあえてしたことではありますが、もっと様々な表現方法を探求していきたいと思います。貴重なご指摘をありがとうございました。