番組審議会 議事録概要
『報道ドキュメンタリー「希容の形」』について審議
- 放送日時
- 2021年8月26日(木)24:30~25:25
(関西ローカル放送) - 視聴率
- 個人全体
1.1% 占拠率(13.2%) - オブザーバー
- 報道局 プロデューサー
繁田 直紀
報道局 ディレクター兼カメラマン
樋口 耕平
参加者
委員 |
委員長上村洋行※(司馬遼太郎記念館 館長 司馬遼太郎記念財団 理事長) 委員長代行難波功士(関西学院大学 社会学部 教授) (敬称略50音順) |
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関西テレビ |
羽牟正一※ 代表取締役社長 |
※印…対面による出席、他はオンライン(zoom)出席
議題
- 2021年4月から9月までの番組種別・CM総量の結果報告、10月改編及び放送番組種別等の報告
- 局に寄せられた視聴者からの意見苦情等の概要(9月分)報告
- 審議番組 報道ドキュメンタリー「希容の形」
(8/26木24:30~25:25放送) - その他 番組全般、放送に対するご意見、質問等
第628回番組審議会は、新型コロナウイルス感染予防のためオンラインと一部対面による開催とした。審議番組は、「報道ドキュメンタリー希容の形」。審議のほか、2021年上期の番組種別・CM総量の報告及び10月改編の説明等を行い、委員会から承認いただいた。
番組概要
『報道ドキュメンタリー 希容の形』
「東京五輪の決勝に敗れた瞬間。清水希容は歓喜するライバルの横で正面を見据えたまま微動だにしなかった。空手形で世界選手権2連覇など輝かしい実績の影で、清水は“自分の演武”に自信を失っていた。「こんな自分が五輪の代表でいいのかな…」 彼女の演武に魅せられた1人のカメラマンが“8年間の取材映像”と共に描くドキュメンタリー。
空手の形とは
- 空手の形、演武というのは一体何なのか。形の優れた人は、組手をやれば強いのか。剣道とか合気道で形とか演武が競技として成り立つのか。採点競技であるなら、体操や新体操と何が違うのか。何となくモヤモヤした感じをずっと持ったまま見ていた。
- サンドラ・サンチェスさんと競技をして負けたということだが、どう負けたのかが曖昧。もうちょっとわかったほうが見ていて納得できた。テクニック的なことがわかってもよかったのではないか。
番組全体について
- 映像の力で、視聴者をすごく魅了するドキュメンタリー番組だった。最初の東京のシーンが流れる導入部はスタイリッシュな映像で、その東京の映像が流れた後にドンと演武をする清水さんが映し出され、とても迫力があり、つかみの部分だけでも続きが見たいと思わせる番組だった。
- 2回視聴した。1回目の印象は、ドキュメンタリー作品として、何か深く考えさせられたり、心を揺さぶられたりはなく不満が残った。希容という名前の由来、なぜ空手にのめり込んだのか、空手の人口、女性空手家は多いのか、形の意味や採点方法、さらには東京五輪決勝でのサンドラ・サンチェスさんとの演武の違いを並べた映像を見比べてみたり、そうしたことを知った上で、2回目の視聴では、清水さんの過去、現在を知り、未来を考えると、その心境を少しは感じとることができ、いい作品だと思い直した。
-
インタビューがところどころに挟み込まれているが、希容さんの心の変化が、時系列ではないことで、ちょっとわかりにくかった。
上記のご意見への返答
そこは非常に苦心したところで、8年インタビューしていると、彼女自身も思いが行ったり来たりすることがあったりして、うまく思いの流れを1時間の中で凝縮するのに、苦心したところです。これが正しい形だったかどうか、そういう苦悩がありました。
樋口ディレクター兼カメラマン
- 「東京オリンピックが終わり、やっと自分を取り戻した」とあったが、プレッシャーから解放され、ベストを尽くせば勝っても負けても仕方がないという以前の心境に戻ったということなのか、別の自分を発見したということなのか、そこは何かわかるようなことを描いてほしかった。
- 苦言を呈すと、なぜ深夜のこの時間帯の放送なのか。この時間設定はもったいない。土曜日の昼間、夕方にしてもよい良質な番組だった。
- 演武のすごさや清水選手の人間的な魅力を含めて伝えるということに照準していったのは正しかったと思う、そのことで視聴者の幅が狭くなるのもいいのではないか。この先好きな人は見続けるようなコンテンツだろうと思う。
- とても見応えのある内容だったが、希容さんは銀メダルになったのに全然喜んでいない。もっと喜んでもいいところなのに、完全に負けてしまったという苦い思いが残るような終わり方で、マイナスイメージの捉え方だなという気がしたのは少し残念。
- 清水選手は、負け続ける負け癖のようなものを感じ、それなら試合に出ないほうがいいというふうに決めてオリンピックを迎えていく。その最後の捉え方というのは、まさに大舞台に向かう孤独な選手の雰囲気が十分に伝わって終わった。最後の持っていき方が大変よかった。
映像で伝えるということ
- テロップがあまりなく、空手について理解してもらうために説明があったほうがいいのではないかとも思ったが、今回はこういった形のドキュメンタリーとしてある程度完成されていると感じた。少し説明不足な点は否めないが、このような番組もありなのかと、納得した。
- 講堂が映り、彼女が講堂の中へ入ってくる。講堂の中にスモークをたいていた。これは、ただ形を記録にとどめる映像づくりじゃない、それを超えた映像の美しさを狙っているんだというふうに受け止めた。
- 清水選手のかっこよさ、選手としての態度、重圧の中での苦悩のようなものも出ていたが説明不足で、物足りなさに通じたように思う。ドキュメンタリーというのは映像中心のほうがいいと思うが、これはオリンピックという競技であるわけで、どう勝ち負けにつながっているのかという説明をいかにするかということを、考えてつくるべきではないか。
- 今回、8年も追っていたということで、相当映像があったと思うが、映像の切り取り方はすごくよかった。演武をしている清水さんを見れば、気持ちや葛藤、苦悩もわかるはずと、あえて説明せず演武をしているシーンを流すという思い切りのよさを感じた。
委員のご意見を受けて
- 報道局 プロデューサー
繁田直紀 - 映像にこだわった番組である一方で「説明不足が物足りなさに通じた」というご指摘を受けました。空手・形という特殊な採点競技で、優劣を描く以上に清水選手の心の変化を感じてもらうことに注力した結果だと思います。
視聴者の競技への理解を深めてこそ、人間ドラマも感じてもらえる…スポーツドキュメンタリーの神髄を改めて心に刻みたいと思います。貴重なご意見、誠にありがとうございました。
- 報道局 ディレクター兼カメラマン
樋口耕平 - 8年にわたる取材や映像表現など概ね前向きなご評価をいただけたと感じる一方で、競技自体のルール、特に採点基準の説明について不足がある、というご指摘も複数頂戴しました。情報の取捨選択、限られた時間内での配分はドキュメンタリー制作のひとつの根幹だと思いますので、各委員のお話は大変ありがたく拝聴いたしました。過多な説明を省き、映像で伝える番組を作りたいという今作の狙いの中で、その方向性やバランスについて今一度省みたいと思います。今回の貴重なご意見を今後の制作に活かしていけるよう努めてまいります。