番組審議会 議事録概要

No.642 2023.3.9

「罠の戦争 第6話」について審議

放送日時
2023年2月20日(月)22:00~22:54
視聴率
個人全体
関西地区6.6%(占拠率24.8%)
関東地区4.7%(占拠率19.8%)
オブザーバー
クリエイティブ本部 制作局
演出・プロデューサー 三宅喜重

参加者

委員

委員長

上村洋行(司馬遼太郎記念館 館長 司馬遼太郎記念財団 理事長)

委員長代行

難波功士(関西学院大学 社会学部 教授)

井上章一※(国際日本文化研究センター 所長)
上野信子(ジャトー株式会社 顧問  関西国際交流団体協議会 理事)
黒川博行(作家)
高江洲ひとみ(弁護士)
通崎睦美(木琴奏者)
早嶋 茂(株式会社旭屋書店 取締役会長)
堀  洋(産経新聞社大阪本社 大阪代表補佐兼編集局長兼写真報道局長)

※レポート出席(敬称略50音順)

関西テレビ

羽牟正一 代表取締役社長
宮川慶一 専務取締役
小杉太二 報道局長
小寺健太 制作局長
高島公美 コーポレート局長
西澤宏隆 スポーツ局長
横山和明 制作技術統括局長
乾 正志 コンテンツデザイン局総合編成部長 (代理出席・オンライン)

議題

  • 局に寄せられた視聴者からの意見苦情等の概要(2月分)報告
  • 審議番組「罠の戦争 第6話」(22:00~22:54放送)
  • その他 番組全般、放送に対するご意見、質問等

第642回番組審議会は全員対面にて開催。
2月の視聴者対応報告のほか、審議番組は、復讐劇・戦争シリーズの第3弾、ドラマ「罠の戦争 第6話」。

 「罠の戦争」
番組概要

息子を瀕死(ひんし)の重体に追いやった事件の犯人とそれを隠蔽(いんぺい)しようとする政治家への復讐に燃える鷲津亨(草彅剛)。
激しい選挙戦を制し、晴れて代議士となった鷲津(草彅剛)は、泰生(白鳥晴都)の事件の隠ぺいを指示した人物が鶴巻(岸部一徳)だと知り、がく然とする。それでも、強敵相手にひるむどころか何とかして本人から真実を聞き出したい鷲津は、鶴巻のある秘密を突き止めるため、梨恵(小野花梨)と眞人(杉野遥亮)に協力をあおぐ。実は永田町では、鶴巻に関するある噂が、まことしやかにささやかれていた——。

委員からのご意見

「フィクション」と「リアリティ」

  • フィクションで風刺的にカリカチュアするにしても、世の中の仕組みと離れすぎると厳しい。
  • ドラマはあくまでもフィクションだが、ドラマにのめり込めばのめり込むほどフィクションとノンフィクションが一体化して錯覚してしまう難しさを感じた。
  • とてもわかりやすいプロットで、ドラマに向いている。リアリティを無視すれば、楽しく見られる典型的なドラマだ。
  • リアリティという点で引っかかるところはあった。昔だと、こんな政界の黒幕がいてこんなことをやっているという絵空事だと思っただろうが、最近の幾つかの事例を見ると、逆に現実のほうがフィクションに近寄ってきている中でリアリティの問題を考えていかなくてはならないと思った。

    上記のご意見への返答

    今回、重要視したのは、このシリーズの特徴でもある、演技の熱量とストーリーのドライブ感というのを優先しました。だから、それを面白いと思ってもらえる方と、逆にリアリティがないという意見も当然出てくるだろうということを覚悟した上で話をつくっております。といって割り切るわけでもなく、それがちゃんと両立できるように今後努力していきたいと思っております。

    演出・プロデューサー 三宅喜重

「ドラマ全般について」

  • この戦争シリーズ、今度は罠の仕掛け合いで、ドラマとしてわかりやすく、罠が1話ごとに設定されているという、視聴者の興味を引くような展開だった。
  • わかりやすいストーリーで、登場人物は全て漫画的なステレオタイプで、突っ込みどころ満載。エンターテインメントだから、ドラマとしてはいいのかと思う。面白かった。
  • 陳情は政治家の仕事の一つと認められている。ただ、陳情が一線を越えると処罰の対象になり、利益を得ればあっせん利得処罰法が適用され、さらに、公務員に不正行為をさせるとあっせん収賄になる。フィクションにしても、知らない人が見ている前提でルールや原則の説明は必要だろう。
  • 純粋に楽しく視聴し、面白かった。最後に、えっと思わせる展開を作っていて、次が見たいと思わせる仕掛け、視聴者の気持ちをつかむいろいろな工夫がされていた。
  • 荒唐無稽に目くじらを立てずに見れば、興味が引かれた。ドラマとしては良いものだった。ドラマはある種、様式美なので、視聴者もそう意識して見ていると思う。
  • 「罠の戦争」という名前どおりに、いろんな人が罠を仕掛け合って、誰が敵で誰が味方かわからない複雑な状況というのはとても面白いし、先が読めない展開で引っ張る力をものすごく感じた。
  • 一番気になったのは、DVの母子シェルターのところ。DVの夫が乗り込んできて危機一髪で食い止めるが、ああいう場面は本当にあってはいけないこと。現実には厳重にバリアして守る状態になっている。そういう状態にいる人が見たら、またそこに関わって真剣に取り組んでいる人にとっても、あそこだけは考えてほしかった。
  • 普通に楽しいと思って見た。登場人物の名前が鷲津、鷹野、鶴巻、鴨井って鳥の名前ばかり出てきて、ほかも動物の名前が多いので、サザエさんのように、漫画的で、これはそんな真面目に見るもんじゃないんだな、というのが、自分の基本スタンスになった。
  • 復讐のために国会議員になると言うのは、いかがなものか。ただ、今は国会議員全員が高い志を持っているとは残念ながら言えない状況もある。このドラマの展開がさほど違和感がないように受け止められる時代になったのか。
  • 権力の隠蔽体質に穴をあける。そこをドラマの軸にするなら、もっとちがう密事(かくしごと)を設定したほうが、よかったと思う。
  • 昏睡した息子と鷲津夫婦の関わり方、家族の苦しみみたいなものを、もう少し丁寧に描かれていたら、復讐心がもっと視聴者に伝わって面白くなったのでは。
  • 政治の世界のドラマをやるときに、強大な権力者に、抗い、討ち倒す目的で展開するのは単純すぎる。権力者と権力は違う。権力が濫用されることに、歯止めも監視も必要だが、権力は仕組みであって、その存在そのものを否定すると、大きな力で世の中を動かすことすべてが「悪」となってしまい、より良いものを目指すことも難しくなる。

委員のご意見を受けて

クリエイティブ本部 制作局 演出・プロデューサー
三宅喜重
貴重なご意見、ご感想有難うございました。
フィクションとリアリティ、ドラマ制作者にとっていつも直面する問題ですが、改めてその難しさ・重要性を考えさせられました。個人によってリアリティは違ってくるのですが、少しでも多くの人に共感していただき、楽しんでいただけるよう、フィクションにリアリティを持たせる努力を続けていきたいと思います。また他にも参考になるご意見・ご感想を多くいただきました。今後のドラマ制作に活用できればと思います。本当に有難うございました。