番組審議会 議事録概要
『8SPORTS』について審議
- 放送日時
- 2022年8月22日(日)24:25~25:25
- 視聴率
- 個人全体
1.0% 占拠率(12.5%) - オブザーバー
- スポーツ局スポーツ部
プロデューサー
宮下育雄
参加者
委員 |
委員長上村洋行※(司馬遼太郎記念館 館長 司馬遼太郎記念財団 理事長) 委員長代行難波功士(関西学院大学 社会学部 教授) (敬称略50音順) |
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関西テレビ |
羽牟正一※ 代表取締役社長 |
※印…対面による出席、他はオンライン(zoom)出席
議題
- 局に寄せられた視聴者からの意見苦情等の概要(7月・8月分)報告
- 審議番組
「8SPORTS」
(8/22月 24:25~25:25 毎月第4週放送) - その他 番組全般、放送に対するご意見、質問等
第637回番組審議会は、新型コロナウイルス感染防止のため、オンラインと一部対面による開催形態とした。7月・8月の視聴者対応状況報告、また「8SPORTS」について審議された。
番組概要
『8SPORTS』
世界に誇るNIPPONのスポーツ・アスリートを通し「心震わす感動」「行動を起こさせるような衝動」を伝えるスポーツ番組。「ドキュメンタリー」「対談」「トーク座談会」などあらゆる手段を用い「無限大」に広がる可能性を秘めたスポーツの魅力を伝える。
8月22日放送回では、伊藤美誠(卓球)、杉原愛子(体操)、玉井陸斗(水泳 飛び込み)、丸山城志郎(柔道)を追う。
アスリートに問う「五輪とは?」選手4人を描くオムニバス・ドキュメンタリー。
委員からのご意見
「番組構成について」
- 伊藤さんのコーナーが完結せずにもう一回後に出てくるというのは意図的だったということだが、「凝り過ぎ」というか、狙いが当たりとは言えなかったのではないか。
- 伊藤美誠選手のところで、途中のギャップを感じた。ただ、不安定なままで終わってしまったので何だろうというところもあったが、最後の場面で、東京五輪を目指すんだという力強い笑顔のようなものが出てきた。ドラマ的だが、うまい演出だなと逆に思った。
- 全体の構成について、4名の選手が今どういう状況で、これからどうしようとしているのかと最後にちょっと質問して、何となくまとめるというのもストレスなく見れた。
「各選手のVTR部分について」
伊藤美誠選手
- 伊藤美誠が、オリンピックの後、負け続けていることは知らなかった。ということは、いかにオリンピックの話題が大きくて、それ以降のことがニュースにも話題にもなっていないかということを実感した。
- 伊藤美誠が、オリンピック後に勝てなくなったことも印象的だった。あれだけトレーニングをつんだ選手もモチベーションが見えなければ、負けがこむ。そういう世界なのだなと、改めて思った。丸山選手が、オリンピックの3年前から練習をはじめている意気ごみもよくわかる。
- 伊藤美誠を五輪で取材したから知っているのだが、彼女は東京五輪後、引退情報が駆け巡っていた。シングルスで負けて以来、目標を見失っている感じがあった。取材やインタビューに答えない時期も長かった。せっかくやるなら、それを含めてドキュメンタリーをやる方法がなかったか。そういう状況をすくい上げられれば、伊藤美誠がどういうプレッシャーの中で、どういう人生を送っているかの厚みが出ると思う。1今後、彼女はものすごいプレッシャーと共に行くのだが、それを選択した覚悟を浮き彫りにできるチャンスだったと思う。
丸山城志郎選手
- 丸山城志郎の、阿部一二三が出る階級のときの映像、ランニングしている映像。あれを撮るのは、なかなかできることではない。ちゃんと意図があって、五輪の取材をやる一方で丸山を押さえているのは感心した。ただ、丸山城志郎は、やっぱり五輪に出ていないので、「五輪とは」と聞いてしまうと答えが出ない。それなら彼は別枠でやったほうがよかった。
- 丸山城志郎選手が一番面白かった。敗者の魅力的なものもあるし、阿部選手がオリンピックに出ているときにその番組を見ないとか、そういった密着型のドキュメンタリーとしてはとてもよくできていた。
- 丸山選手のVTRは、すごくもったいない。映像の時点がコロコロ変わる。今の映像、代表選手の最終決定戦の映像、東京オリンピックの映像があって、また今までの歩んできた道のりの説明と場面設定が転々と変わる。どういう流れでこの選手がこの道のりを歩んできたのか、今どういった状況に置かれているのか、時系列を整理して考えながら見ないといけないVTRだったので、視聴していてすごく疲れた。
杉原愛子選手
- 杉原選手はもう引退をされたようなので吹っ切れていて、ほかの3人と明らかに違う。ほかの3人も、話し方とか表情に年齢や選手生命の残りの期間がそのまま表れていると感じた。
- 父が送り迎えする。母が弁当を作る。杉原さんはもう引退したんだろうが、特にお父さん、お母さんから杉原さんにどういうふうな思いを持っているのか、そこをインタビューで入れてもらえると、もっと深い感覚が得られた。
- 杉原選手の燃え尽き症候群という表現で、競技の存在の大きさとや重さみたいなものを選手がどう受け止めていたのかがわかり、最後に競技の後で杉原選手が見せた笑顔をというのもうまく捉えていたが、杉原さん側のご両親の感想があったらもう少し見応えがあった。
玉井陸斗選手
- 1時間だから、浅くなるのは仕方がない。特に玉井選手はまだ15歳だから、ほかにファクトがない。何を放送して、何を視聴者に見てもらうというところをつかむのが難しかったと思う。
- 玉井陸斗選手のところで、高飛び込みと板飛び込みの二刀流で挑むんだと言っていた。いかにこの2つを両立させることが難しいというのはわかるが、どういう難しさでどう違うのか、説明してもらえればよくわかった。
- 若いからまだ人生経験が少ないということなんだろうし、天才的な人って言語化できない部分はあると思うが、玉井さんの発言で「楽しい、楽しんでやる」という言葉があまりにも何回も繰り返されていた。よく言えば天才、若さが強調され過ぎていたので、同じ発言は2回ぐらいでいいのではないか。
「全般について」
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気になったのは、最初に「アスリートに聞きたいことがある、あなたにとって五輪とは」と前振りをして、それぞれの答えが最後に出る構成。
伊藤美誠は、「もう一度子どもに戻っても五輪に挑戦しますか」と聞かれた感じで、「もちろん挑戦します」と言っていた。杉原愛子は、「もう一回五輪に挑戦できると言えますか」と聞かれたようだし、丸山城志郎は、「あなたにとって五輪とは」と聞くけど、五輪に出ていない丸山は他と状況が違う。質問や状況が揃わないまま答えが並べられることにフラストレーションを感じた。制作側が共通した言葉を導き出したい意図が見えて、引っかかった。 - (制作者は)苦労したと思う。対象が若い、若いということは人生経験が少ない。そして、そのスポーツしかしていないということで、派生する面白い部分が少ない。そういう意味で、スポーツの密着ドキュメンタリーというのは難しいなと以前から思っていた。良質な番組だ。
- 玉井選手が屈託がないのに対し、丸山選手は年齢のこともあるのか、それこそ重たい荷物を背負い込んで自分をどんどん追い詰めているのが伝わってきた。一旦燃え尽き症候群になったと杉原選手は言っていたが、緊張の糸が切れると、モチベーションを上げるのは並大抵のことではないというのは、素人の私でもわかるが、伊藤選手がパリの準備に出遅れたと言いながら、最近の試合でも勝ち、順位を上げて今2位のところまで来ているのは並大抵の精神力ではない。こういう人でないとオリンピックに出られない、またオリンピックで優秀な成績を上げられないというのに、余計に迫力を感じた。
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この4人を選んだのはなぜか、4人詰め込まないといけないのかを疑問に思うが、1時間全体としてもバランスよく配分されていたのではないかと思う。
上記のご意見への返答
一人を通して描くというより、置かれている立場が違う人たちがオリンピックについてどう考えるのかというところが聞きたいところであり、オムニバスドキュメンタリーに決めました。立場が違うところを混ぜ合わせることにより描けるものが出てくるのではないかと思いました。
プロデューサー・宮下育雄
- オリンピックの重みというものについて。オリンピックのこれからの在り方等々いろいろ議論があるが、選手からの重み、そしてそれぞれの種目、世代における重みというものを考えさせられた。今まであまり見なかった分野に対して、視野の広がりがあった。よい番組であった。
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東京五輪から1年、アスリートたちとオリンピックという柱でVTRをつくっているが、どういったメッセージやストーリーを視聴者に伝えたいのか伝わらなかった。
上記のご意見への返答
大きくは、目標がある人間とそうでない人間で、ここまで、色んなところが変わるのだろうか。それはアスリートでなくても我々も一緒だというところが、この4人のオムニバスで伝えられたらと思いました。「8SPORTS」は、何を伝えていく番組なのかというのは今後も考えて描いていけたらと思います。
プロデューサー・宮下育雄
- 子どもの頃からの映像を持っていることの強さはいつも感じていたから、そこもよかった。長く地道に関係をつくって取材しているからこそ、丸山選手の自家用車の助手席から撮れるというのはものすごいことで、積み重ねの強みみたいなことを感じた。
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スポーツ観戦マニアとして、私はアスリートを追うドキュメンタリーに結論は要らないと考えている。「五輪とは」みたいな感じの結論や、誘導は全く要らない。
彼らの置かれている場所と、あがく姿を、ただそこに置けばいいのではないか。彼らがスポットライトを浴びた結果や、浴びられなかったことの裏側で、何があったかが描ければ、それで十分すばらしいドキュメンタリーになると思う。結果がドラマチックであるかどうかは関係ない。それはドラマじゃなくてドキュメンタリーの宿命。
逆に言えば、ドキュメンタリーを撮るときには、ドラマにしない勇気が、物語に負けない勇気が、要るのではないか。
委員のご意見を受けて
- スポーツ局スポーツ部 プロデューサー
宮下育雄 - 委員の皆さまから率直なご意見・ご感想を伺えるこのような機会を与えて頂きましてありがとうございました。審議会を終えて1番感じたことは委員の皆さまの番組に対するご意見・ご感想が「面白い」「面白くない」偏らず多様だったことでした。
「もっと視聴者の皆様が共感できるものが良かったのか。はたまた、演出を極力加えずにありのままをお伝えする方が良かったのか。」まだ答えは出ておりませんが、ドキュメンタリーをお送りする上で重要な課題かと思いますので都度考えながら、今後の番組制作に活かしていけたらと思います。