番組審議会報告 議事録概要
「報道ランナー 防災SP」について審議
- 放送日時
- 2023年1月9日(月・祝)15:45~17:48
- 視聴率
- 個人全体
15:45~16:45 2.4%(占拠率13.9%)
16:45~17:48 2.7% (占拠率12.4%) - オブザーバー
- クリエイティブ本部 報道局 報道センター
プロデューサー 江南敦之
ディレクター 宇都宮雄太郎
参加者
委員 |
委員長上村洋行(司馬遼太郎記念館 館長 司馬遼太郎記念財団 理事長) 委員長代行難波功士(関西学院大学 社会学部 教授) ※レポート出席(敬称略50音順) |
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関西テレビ |
羽牟正一 代表取締役社長 |
議題
- 局に寄せられた視聴者からの意見苦情等の概要(1月分)報告
- 審議番組「報道ランナー 防災SP」(15:45~17:48放送)
- その他 番組全般、放送に対するご意見、質問等
第641回番組審議会は全員対面にて開催。
1月の視聴者対応報告のほか、審議番組は毎年放送を継続している「報道ランナー 防災SP」。
番組概要
毎年継続して放送している防災企画番組。今回は、「複合災害 その時“決断”できますか?」として、「複合災害」への備え、そしてその時身を守る「決断」のポイントは何なのかを検討した。
委員からのご意見
「決断」というテーマについて
- 興味深く見たが、「決断」という言葉が妥当なのか。決断を迫られるときは、その裏には択一して捨てるものがあるということ。今回は「初期消火しましょう」とか当たり前のことで、「決断」とわざわざ言わなければならないのか釈然としなかった。
-
決断というキーワードが内容と一致していないのではないか。むしろ内容は、知っておくと被害やダメージも一定程度抑えることができるという知識だった。決断という仰々しい言葉を使わなくても、もっとシンプルな、カジュアルな言葉を選択してもよかったのではないか。
上記のご意見への返答
「決断」という言葉がマッチしているのかは、当たり前のことをもう一度促すことも大事だとして、決断ポイントについて少し身近なところを再確認しましょうというところに落とし込んで考えました。そこがなかなか伝わりづらかったというところは反省点だと考えております。
プロデューサー・江南敦之
-
どう決断しますかという問いと、それに対する答えが用意されていない印象を受けた。
情報は見応えがあり、興味はあるものだったが、流れとしてどうなのかというところが今回引っかかったところ。
「地震×大雨」対策について
- 屋根が壊れたときの雨漏り対策で、「瓦の中に砂や土が入っている」とあったが、この表現はおかしい。瓦というのは、屋根板の上に粘土質の土を団子に盛って、そこに瓦を乗せて瓦を固定するという説明がない。説明がないと誤解を与えてしまう。
- 部屋の中にシートを張るよりも、屋根にブルーシートを張るのが一番大事なこと。「業者に早く元に戻すように依頼してください」といっていたが、業者は来ないだろう。
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部屋の中にシートを張るよりは、まず、屋根にあがるときにどういう注意をするか、どこに土のうを置くか、ブロックを置いたら駄目なのか、これは風で飛ぶのかと、もっと深い取材、深い決断というのが必要ではないか。
上記のご意見への返答
備えを提示するということ一つにとっても、すごく責任をともなうんだと非常に感じました。この決断ポイントはこうですといったとき、そこから派生する疑問点とか、そのことに関する裏づけはこうだという説明が、もう少し説得力も含めて足りなかったかと感じております。
ディレクター・宇都宮雄太郎
- 意義のある役立ちそうな情報がたくさんあった。雨漏りをブルーシートでふせげるやり方では、「でも、これは応急処置で一刻もはやく、プロに修理をしてもらえ。放置しておくと、修繕代は非常に高くなる」そんなアドバイスもあった。でも、地震や台風にさいしては、雨漏りの家が急増する。プロのところへ、注文が殺到する。解決の妙案はないだろう。しかし、「すぐなおしてもらえ」と言われ、やや暗い気持ちになった。
「全般について」
- 毎年この時期にこういう番組をやり続けること、こういう特集をやり続けることの意義はものすごくあって、今年もあってよかったと思っている。
- 3.11以降に生まれた人が人口の1割になっているとかで、その世代に震災経験の継承や危機意識を持たせるのであれば、「すずめの戸締まり」みたいな映画の、ああいうフィクションの力であのとき何があったのかを知りたいと思わせる、フィクションの力のほうが大きいと思うところがあったりするので、何かそういうものが時々出てきてほしいと思う。
- 車から電源を取るとか、自販機をWi-Fiとして使えるとか、そうかという情報はあったが、結局まとまって何かよくわからないという印象。今の時代は通信障害が一番怖いのであれば、通信障害にまとめて、それだけを詳しくやったほうがよかった。
- トルコで発生した地震の状況を見ていると、あらためて地震の威力のすさまじさに驚く。なので、なおさらこういう番組は絶対必要だ。ただ、毎年同じパターンではなく、その時々でどういう切り口で作っていくかは大きな課題になるのだろう。
- スマホがないと、災害時、災害後に何にもできないのかというと、そうではない。スマホがないときに阪神大震災があった。いろんな流れの中でスマホが今、大きなところを占め始めていますという説明も要る。スマホの無い人はどうするのかも含めて考えなければならないことは沢山ある。
- ある種の啓蒙的な役割を果たしたのではないか。人間というのは物事に対して安心感を求めようとするところがあり、たかをくくるというか、自分のところには火災や地震は関係ないだろうとか、よそで起こっている対岸の火事というふうなイメージで捉えかねない。その意味で、火災旋風という燃焼実験は、端的な表現でよかった。
- 防災ニュースというのは報道機関にとって非常に難しい。ニュースとしては非常に伝統的で、古くて、しかも、どんどん更新されていく新しいことでもある。ある意味では、知っていることを繰り返して聞かされるので面白くない。ではどうすればいいのか。新しい要素を加えて、どう角度をつけるか、ということが腕の見せどころ。もう少し踏み込んで考え、取材も、もう少し深くできればよかった。
委員のご意見を受けて
- クリエイティブ本部 報道局報道センター プロデューサー
江南敦之 - 視聴者が防災の準備をしなければいけない「決断ポイント」を明確にしたいと思っていました。しかし、決断ポイントを提示することで、流れが悪くなったり期待感を裏切ったり、裏目に出ていたというご意見を賜りました。制作者として視聴者が見やすい”仕掛け”を作ったつもりが、策に溺れてしまったようです。本当に視聴者が求める防災番組は何か。反省とともに、あらためてきめの細かい番組作りを心がけます。
ありがとうございました。
- クリエイティブ本部 報道局報道センター ディレクター
宇都宮雄太郎 - 3回目となる防災特番。
「生活に身近な備えをわかりやすく提示したい」その一心で制作しました。
視聴者の納得感をどこまで得ることができるのか。
とりあげる内容や伝え方に最後まで悩みました。
南海トラフ地震などに備えて、知識として知っておいてほしいことは、繰り返し何度も伝えていくことが大切です。
特番に限らず様々な手法で、防災意識を高める報道を続けていく必要があるとあらためて強く感じます。