番組審議会 議事録概要
『ザ・ドキュメント カノジョと私の家族のカタチ』について審議
- 放送日時
- 2022年2月25日(金)25:25~26:25
- 視聴率
- 個人全体
1.2% 占拠率(20.5%) - オブザーバー
- 報道局 報道センター プロデューサー
柴谷 真理子
報道局 報道センター ディレクター
竹中 美穂
参加者
委員 |
委員長上村洋行※(司馬遼太郎記念館 館長 司馬遼太郎記念財団 理事長) 委員長代行難波功士(関西学院大学 社会学部 教授) (敬称略50音順) |
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関西テレビ |
羽牟正一※ 代表取締役社長 |
※印…対面による出席、他はオンライン(zoom)出席
議題
- 当社からの報告
・局に寄せられた視聴者からの意見苦情等の概要(2月分)報告 - 審議番組 「ザ・ドキュメント カノジョと私の家族のカタチ」
(2/25金25:25~26:25放送) - その他 番組全般、放送に対するご意見、質問等
第632回番組審議会は、新型コロナウイルス感染防止のためオンラインと一部対面による開催とした。
2月の視聴者対応状況報告のほか、審議番組の「ザ・ドキュメント カノジョと私の家族のカタチ」について、委員からさまざまな意見が出された。
番組概要
『ザ・ドキュメント カノジョと私の家族のカタチ』
子育てを希望し、実際に子育てをするLGBTQカップルは増えている。その一方でネット上では「親のエゴ」「子供がかわいそう」といったコメントが少なくない。
また、同性婚を認めてもらうべく裁判を起こすも、国は「結婚は子どもを産み育てる男女を保護するための制度で、同性同士は“想定”していない」と主張。
二組の同性同士カップルの、日々の生活や揺れ動く思いを綴ったドキュメント。
描き方はどうだったか
- 二組のタイプの違う同性カップルの日常が淡々と描かれながらも、日本の旧来の家族制度からはみ出した存在であることに苦悩している姿と思いもよく伝わってきた。当事者たちの心の揺らぎというものが丁寧にすくい取られていた。
- 大上段に振りかぶらずに淡々と真面目に捉えた姿勢がよかった。カップルの悩みや嬉しさも伝わってきたし、ここに登場したカップル二組はそれぞれの意見を持っておられてご自身のことを十分に理解されているためか、さわやかな好感印象を持った。
モザイク処理について
- 番組冒頭で、出演している大人も子どもも全員の顔がモザイクになっていて驚いた。このまま話が進むかと思ったが、これはゆいさんが顔出しをして発信を決心するまでの導入部分であったということがわかった。子どもが生まれて、その子の将来のために自身が前に進む必要があるとの思いがとても強く伝わってきた。
-
同性同士のカップルが最初は顔を隠して登場されたが、ゆいさんは、番組の途中で素顔になられた。このシーンを印象的に感じた一方で、あざといやり方だなとも思った。ゆいさんは、素顔でいいとおっしゃっていたわけで、初めから素顔で登場していただいても構わなかったんだと思う。
上記のご意見への返答
モザイクの表現に関しては、表情でも訴えかけてくるところが大きかった。初めからモザイクをかけずに表現する方法もあると思いますが、この方たちが、モザイクを外す、外さないというところにすごく最後まで考えてくださって、最後の最後で外すという決断をされたという背景がありましたので、その覚悟や怖いという揺らぎという部分を段階を経てみせたいというのがありました。
ディレクター・竹中美穂
- ゆいさんは教師で、そういう立場にある人がモザイクを外されたということについて敬意を表する。当然、そこに至るまではいろいろなことを考えた上での決断だとは思うが、一時の感情というか激情でモザイクを取ってもいいわというのではないということを切に念じる。
番組全般について
- 多様性の時代と表向きには言われているが、受け入れない人たちが一定数いて、それが多数派であるということがこの番組を通じて明らかになった。世の中は変わっているが、人の意識は簡単に変われないのだということも思い知らされた。特に自分の親にありのままの姿を受け入れてもらえないという悲しさというのが、想像できないぐらい、つらいことなのだというのが、ゆいさんの涙を通じてよくわかった。
- 同性愛という言い方は、多分、1910年代、20年代ぐらいだろう。これが認識され始めるのは、医者たちの中だと1920年代頃からだが、一般的には20世紀の中頃からではないかと思う。つまり、これはようやく最近受け入れられるようになったという愛の形では必ずしもない。
- 子どもをどう考えるのかというのが大きなテーマ。今後、20年なり30年なりにわたって問題を抱えているということを、ゆいさん、ゆりさんは覚悟を決めておられるのかどうか。それは、関西テレビも言ってみれば顔をさらしてしまったわけだから、そこに責任を取るのかどうかという、そういう問題にもつながるぐらいのテーマだと思う。
- 番組では、語らせるのがうまいと思った。特に飲食店のお母さんが「人間性の魅力から理解が進んだ」とおっしゃっていたところや、主人公達が語っている場面を撮っているのもうまいなと思った。
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同性愛の人を否定するつもりは全くないことを大前提として述べる。同性愛者のこうした話は以前から取り上げられてきた凡庸なテーマで、非常にバランスを欠いた番組構成という印象を受けた。ここ数年論じられているポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ、政治的妥当性)の問題に触れなかったのは、メディアとして、少し無責任な感じがする。多様性、ジェンダー平等の最大の問題点は、これらが絶対に正しいとされているために反論しにくく、いびつな社会になっていく。そこに触れなかったのが気になった。
上記のご意見への返答
今の日本の社会は、この委員のようなお考えの方のほうが多い。今回描きたかったのはイデオロギーの問題ではなく、彼女たちの生活や幸せのことを描きたかった。こういうテーマは今タイムリーになってきているが、それまでは抑えられてきた部分が強い。そこに声を上げている番組と理解いただければと思う。
プロデューサー・柴谷真理子
- 印象に残ったのが、「左利きで生まれた」というふうな、あの言葉がすごく印象に残った。だから、その言葉を最後の締めにしてもう少し強調したらよかったのではないか。
- こういう二組のカップルを見せていって、知らしめていくということの意義は感じるが、そういうことに対して最初から嫌悪感を持っている人たちに対してなかなか届かないもどかしさみたいなものがあって、ニュース番組や情報番組の中でも継続的にこのカップルたちのことを取り上げたり、訴訟で何かあれば報道していけばいいと思う。
- 淡々と進行させたために少し説明不足を感じた。外国の精子バンクからの提供について、説明を加えた方がよい。また、この子どもの将来を考えて、二人の親の考え方をもう少し番組に反映したらよかった。
- 見ごたえのある番組だった。同性婚を認めるにあたっては、家族法、戸籍法等の見直し、法整備が必要となる。同性婚を認めるために整備しなければならない項目はたくさんあり大変な作業になることだろう。だが、法律や制度は国民のために存在しているもの。この番組を視聴して、希望する同性カップルには法律上の婚姻を選択でき、暮らしやすい社会が訪れたらよいとあらためて感じた。
- LGBTと言われる人たちというのは、それぞれに独りで悩む時期、あるいは肉親との葛藤、あるいは世間との関係、何段階もの壁があるのだろう。それをクリアしていくわけだが、この二組のカップルによって、生身の言動を通じてその姿がよく理解できた。親に「病気のようなものだ」と言われてカッときたが、「左利きで生まれたようなものだ」と冷静に受け止められている言葉に、カップルたちの前向きな力強い姿勢を感じた。
委員のご意見を受けて
- 報道局報道センター ディレクター
竹中美穂 - 好きな人と暮らしたい、一緒にいたいという願いを持っていても、相手が同性という理由で苦しい思いをしている人がいることを知れたと評価していただいた一方で、同性カップルの生活や子育てにはどのような壁があるのか、具体的な説明が不足しているという意見を頂戴しました。過多な説明を省いて、日常生活や思いを伝える狙いがありましたが、必要な情報や説明について今一度考えたいと思います。貴重なご意見を今後の取材・制作に生かしていけるよう精進します。