番組審議会 議事録概要
『大豆田とわ子と三人の元夫 第1話』について審議
- 放送日時
- 2021年4月13日(火)
(第1話 21:00 ~ 22:09 放送) - 視聴率
- 個人全体
[関西]6.0% 占拠率(15.7%)
[関東]4.3% 占拠率(12.4%) - オブザーバー
- 制作局東京制作部 プロデューサー
佐野 亜裕美
参加者
委員 |
委員長※上村洋行(司馬遼太郎記念館 館長 司馬遼太郎記念財団 理事長) 委員長代行難波功士(関西学院大学 社会学部 教授) (敬称略50音順) |
---|---|
関西テレビ |
※羽牟正一 代表取締役社長 |
※印は対面出席、以外はオンライン(zoom)出席
議題
- 局に寄せられた視聴者からの意見苦情等の概要(4月分)報告
- 審議番組「大豆田とわ子と三人の元夫」第1話(4/13 火曜 21:00 ~ 22:09 放送)
- その他 番組全般、放送に対するご意見、ご質問等
第624回番組審議会は、新型コロナウイルス感染防止対策のため、オンラインと一部対面による開催とした。審議番組は、ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」の初回。
今、なぜこの企画なのか
- プロデューサーの「人が独りで生きていくこと、独りで死んでいくことに関するドラマをつくりたい」その上で「漠とした欠乏感、寂しさや不安は、この閉塞感漂う社会で生きる多くの人に通じるものだと思います」という考えを知り、作品に対する期待値が上がった。しかも、脚本家は坂元裕二さんで、退屈な作品にはならないだろうという先入観を持って見た。
ドラマ全般について
- 結論から言うと、とても面白い作品。まさにドラマであり、非日常を描いている。言葉遊びというか、セリフ遊びというか会話の妙が秀逸。例えば、松たか子さんの「悲しいといえば悲しいけど、言葉にしたら、言葉が気持ちを上書きしてしまうような」というセリフは、肉親を亡くした心情を見事に言い表しているが、日常会話では絶対に使わない。ドラマだからこそ使える言葉ではないだろうか。
- 第2話、第3話と続けて見るか、わざわざ時間を割くかと言われると、微妙なところという感想。ただ、よくできた、うまくできた番組だと思う。
- ドラマの初回は、拡大版にしてあおるようなことが多いが、今回は複雑な関係が丁寧に説明されていて、余裕を感じ、とても好感を持った。
- 全体の雰囲気が、ちょっと軽い感じで、コメディ色が強い作品になっているのが、今の時代に合っている。特に第1話はショートコントの連続のようなつくりで、ちょっとずつ笑えて、関西人としてはすごくそのショートコントというのがうけると思った。
- このドラマの一番いいところがセリフの応酬。これは脚本の坂元ワールドで、セリフをお互いに連発していくのは、それができる俳優でないと面白みがない。それに応えられている俳優たちがすごい。
- 非常に面白い作品で、すごく中毒性が出てくるドラマ。個性豊かな登場人物たちの日常ストーリーで、関係性の謎、登場人物たちの心情の謎が散りばめられ、テンポよく話が進むことも、このドラマにのめり込んでいってしまう理由なのか。
- 注文住宅の会社なのに、何で風呂の修理をする業者がすぐに見つからないのか、何で娘は最初の夫に直接コンタクトしないのかとか、突っ込みどころはあるが、四の五の言わずに理屈抜きに楽しめるかどうかというドラマだと思う。コロナで、閉塞感が強い状況なので、かえってこれぐらいはありなのかなと。
- ヒロインの家で、建具のトラブルで網戸がはずれたりしたが、彼女は三人の元夫に、なおしてもらおうとはせず、たよらず、自立して生きる。そんな心意気がドラマの肝になっていると受け止めたが、彼女が見栄を切るのは何か意味があるのか。その含みがわからなかった。
- どう評価したらいいのか大変戸惑うドラマ。「面白いようで退屈」で、会話と軽快なテンポで構成された新感覚のドラマであるという印象は受けた。ただ、しっかりとした起承転結があるわけではなく、日常的にあり得ない出会いとか会話で構成されているためか、それが延々と続いていくような感じを受けた。
- いいドラマなので、いろんな人に見てほしい。今回に限らずヒット作を出すことが関西テレビの火曜ドラマのファンをつける一番の近道だと思う。この枠をどうつくっていくかを、関西テレビでよく考えていただきたい。
- 視聴率がどんどん上がっていくような番組ではないと思うが、刺さる人には刺さるし、はまる人ははまると思う。今後も配信とかでみんなが見続けるドラマにはなっていくと思うので、このままぶれずに最終回まで走り切ってほしい。
ナレーションについて
- ナレーションがうるさいという評もあるかと思うが、こういうナレーションがなければ展開が遅い。ナレーションの視点がとわ子の視点なので、視点の混乱がない。だからそれはナレーションのあるべき姿であって、そのために展開が速くなったというのはよかった。
- ナレーションで、「食べれない」とか間違った言葉はやめてほしい。セリフで『ら抜き』言葉が入るのは仕方ないが、ナレーションで『ら抜き』言葉を入れるのはいかがなものか。
ディテールの設定はどうか
-
建築事務所の場面で、建築家であれば用途地域を間違うわけがない。大豆田とわ子がこの図面を製図台で書き直していたが、今どき製図台はない。コメディであるからこそ、ストーリー、プロットがしっかりしているからこそ、ディテールは間違っていてはいけないと思う。
ご意見への返答
ディテールに関しては、何度も取材をして今回の台本の監修をいただいています。ご指摘があった法規を読み違えたという設定は、実際に起きたエピソードをお聞きしました。製図台も実際に使っているもので、もちろん今はCADが主流と取材で言われましたが、大豆田とわ子という人物設計として手書きで製図をするのが好きということをやりたいので、取材した中でこのようなやり方をする人がいないわけではないということをお聞きしてつくったキャラクターです。
佐野プロデューサー
委員からの意見
リアルとリアリティは違う。法規制、用途地域を間違ったということを取材されたかもしれないが、これはリアル。そのリアルをそのままドラマに落としてしまうと、今度はリアリティがなくなる。僕は物を書いているので、リアルとリアリティはものすごく区別して書いている。だから、経験談をそのまま出して、小説としてのリアリティがあるかは、必ず考えている。
映像・音楽について
- 映像の妙があった。主人公である4人の大人がブランコに乗り、舞い散る桜に向けて口をあけるシーン、ありそうだけど、実際にはない。だが、とても印象に残ったシーンだった。映像の質感や音楽、ドラマの舞台となる街も素敵だった。お洒落でセンスの良い作品に仕上がっている。
- エンディング曲がミュージックビデオのようなつくりで、毎回ラップをする演者が変わり、ラップの歌詞の部分も違っていた。それはそれでつなげると楽しい作品になると思えるような内容だった。松さんのソロのパートが印象強い。
- 関西テレビ制作のドラマについて、かっこいいとかスタイリッシュとかおしゃれと思ったことは正直言って一度もなかったが、今回が初めて。思った一番の理由は音楽。エンディングのラップが日替わりで、もう一週見ようという大きな動機づけになっていたし、地上波のこの時間帯にこの人を見るのかというラッパーが次々出てきて、攻めていると思った。
委員のご意見を受けて
- 制作局 東京制作部 プロデューサー
佐野 亜裕美 - 委員の方から様々なご意見をいただき、一つのドラマの一つのお話で、これほどまでに色々な受け取り方をされるものなんだなと、改めてドラマの可能性の大きさを感じました。初めて審議会に参加させて頂いたので想像もしていなかったご指摘を受けた点もありましたが、それこそがこのドラマで描こうとしている人間の多様性や多面性であり、加えて言えばそこが人間の面白さでも怖さでも、強さでも弱さでもあると思いました。「神は細部に宿る」を念頭に、取材を怠らず、ディテールを大切に、誠実なドラマ作りをしていきたいと思います。