関西テレビ放送株式会社


番組審議会
No.590 2017.11.9
関西テレビ
「明日の約束」について審議
出席の委員

上村洋行 司馬遼太郎記念館 館長 司馬遼太郎記念財団 理事長(委員長) / 井口文彦 産経新聞社大阪本社 執行役員 編集局長 / 井上章一 国際日本文化研究センター教授 / 金山順子 適格消費者団体 ひょうご消費者ネット 専務理事 消費生活アドバイザー / 高江洲ひとみ 弁護士 / 通崎睦美 音楽家 文筆家 / 難波功士 関西学院大学 社会学部長 教授(委員長代行) / 早嶋茂 株式会社旭屋書店 代表取締役社長(敬称略50音順)

関西テレビ

福井澄郎 代表取締役社長 / 宮川慶一 専務取締役 / 喜多隆 取締役編成局長 / 伊東亮 取締役報道局長 / 安藤和久 制作局長 / 田中士郎 制作技術局長 / 田中昌樹 スポーツ部次長

11月に開催された第590回番組審議会では、10月17日放送の火曜ドラマ「明日の約束」第1話が審議されました。ドラマの主題の重さ、深刻さが異口同音に語られ、その「挑戦」を意義ある試みと評価しながらも、視聴率面の課題や、「オンデマンド視聴」についても言及されました。

重いテーマをよくぞ描いたなという感じ。学校で現実に起きた問題を考え直す契機になれば…、ドラマでなにか提案したいという意図を感じた。解決の糸口、そのヒントで最終回を結べるなら、このドラマは評価されるべきだと思う。
「学校が殺した」という思い込みで母親は、教師を拒否する。第2話の記者会見では週刊誌記者が「学校に原因がある」という思い込みの詰問。第3話ではこれに悪意が加わる。現実社会の病理をドラマ化して「いいところを突いてるな」と思う。
このドラマは現代的な人間関係の闇、個人、個々が抱える闇、そういったものと向き合いながら、それを克服していく人間の知恵みたいなものがテーマになっていくのかなと予測する。テーマ性は大変いい。良質な、クオリティの高いドラマを期待する。
1時間20分の長さは感じなかった。怖い仲間由紀恵と不気味な手塚理美が圧倒的だった。若い俳優との力量差を感じたが、「重たいテーマ」なので、途中で多少軽いものを入れようという意図もあるのだろう。そのあたりも、仕掛けとしての「ギャップ」か。

社会病理をドラマに創る。「媚びない」制作姿勢はいい、と。

予想以上に見応えがあるドラマだ。笑いも一切なく、ストーリーも重いが、魅力的なドラマだった。媚びない姿勢でつくっている。派手な演出でもなく、人気アイドルや俳優で話題づくりすることもなく、出演者の演技とか脚本、演出で勝負している。
媚びないドラマをつくるということ、こういったドラマあってもいい。よくある入浴シーンを入れて話題づくりとか、アイドルを入れて視聴者獲得というような姿勢が見えないところは、好感を持った。視聴者の獲得というところは若干気にはなる。
いじめ、家族の過干渉、モンスターペアレント…、今の時代のキーワードが散りばめられている。自死した被害者とされる生徒と母の複雑な母子関係、これにスクールカウンセラーである主人公の母子関係と絡めて、重層的な構成、ストーリーになっている。

リアルな社会派ドラマとミステリー・サスペンスのバランス。

第1話、社会派からサスペンス寄りに展開する予感がいい。親子問題とか学校問題から逃げずに、またサスペンスに寄り過ぎずに進行してほしい。
知人の「情報モラル教育コンサルタント」は当番組を知っていて、「登場人物の状況や気持ちがよく描かれていて、考えさせられる」というREメール。『動画でピンチになり、動画で救われた』というくだりが、ネット社会を象徴していて印象的だった、とのこと。
いじめ、ネグレクト、性犯罪、ホラーは苦手だ。できれば見たくない。審議題なので見たが、マスコミ=悪者として描かれていてツラい。1時間我慢して、やっぱりクドカン脚本の「監獄のお姫さま」の贅沢なハッチャケ感に行く。

媚びない硬派な作品だが、それだけに視聴率対策には工夫がいるだろう。

媚びない作品でおもしろかった。しかしテーマの「暗さ」で食わず嫌いする視聴者もいるので、視聴率は心配。重い内容だけに、番宣・プロモーションも難しいだろうが、いろいろ工夫して視聴する人がふえればいいなと願う。
時間ズレで共存できてる他局競合ドラマを、リレー見して両番組を楽しむ身としては、初回拡大は恨めしい。延長部分が邪魔で、どちらかを捨てなければいけない。初回を見逃せば、その後入りにくい性格のドラマ、初回から1クール動員するのに、「枠拡大」は万能ではない。
ホームページの人物紹介、相関図。ミステリー要素にもかかわらず、人物欄に「ネタばれ」を書き過ぎている。主人公日向の恋人の家庭事情は、まだドラマには出ていないのに、先の見える情報が…。ドキドキ感が薄れるので、あまり書き過ぎないで。

出演者への感想では「毒親」2女優の「怪演」に焦点が…。

井上真央さんは「花より男子」「キッズ・ウォー」で、子役時代から活躍。今回の役はそれらとは全く逆の演技で、抑えたシリアスな演技も上手だ。重いストーリーだけに、真っすぐな役どころを演じさせる、若い先生のフレッシュな配役もいい。
キャストの演技。キーマンである日向の母親役の手塚理美は、非常に鬼気せまる圧迫感、常軌を逸したような子供に対する支配欲、ヒステリックさ、これは出色の演技だ。手塚理美が事実上の主役かなというぐらいの存在感が感じられ、怪演で引っ張っていかれてる印象。
生徒役の子たちも知らない子たちばっかりだったが、思春期の役どころというか繊細な役を上手に演じていて、今後この若者たちがドラマでどういうふうに活躍していくのかな、役者としての成長を想像しながら見るのも楽しみ。
親子関係にスポットを当てたドラマ。手塚理美演じる母親に現在進行形で悩まされ縛られてるカウンセラーと、過干渉の母親から「死」という形で逃げ出した生徒。毒親の2女優の演技は、「すごい」。ゾッとする怖さがある。
母の子育てが問題になる、母子のドラマ。父親にも育児休暇をとらせようかというご時世に父親の影は至って薄い。そういう時代にあえて背を向けるドラマか、(「毒親」とは)何といっても母親なんだという意味合いのメッセージなのか。
母親は我知らず「毒親」になりかねないということを気づかせてくれる。「毒親」の要素は、「そういえばここまで干渉したよな」「もしかしたらあのときに子供を苦しめていたかもしれないな」そういうことが学べる、親が見るにはいいドラマだ。
母子家庭のマネージャーの、子育て放棄の「毒母」。その母親から脱出する過程を、第1話内ほぼ一話完結で描く。印象的で見応えがあった。主人公がしたくてもできない「母親からの脱出」を、カウンセラーとして手助けすることで投影させた。上手い。

「チェインストーリー」に注目され、「オンデマンド視聴」への誘導に注文あり。

「チェインストーリー」は、本編のドラマだけでは描きにくい要素を、きちんと補足できるのは、すごくいいと思う。最後の詞はマザーテレサ、この試みは本当にいい。チェインストーリーも本編の脚本家が「力を入れて書いてる」のはすごい。
ミステリーもので「スピンオフ」をつくるのは存外難しい。本作では、ネタばれでもなく、出演者の内面とか、このときどう思っていたとかが主だった。謎解きのヒントがスピンオフで晒されてるというわけではなかったのは、いい按配だった。
GYAO配信では、スピンオフの「チェインストーリー」という試みまであり、おもしろい。1.5話の「吉岡君の最後の一日」というわずか7分ほどのドラマに、単に死んでいっただけじゃなくて、裏でこんな思いをしていたんだという心の動きが凝縮されていた。
「チェインストーリー」もおもしろい。ネットと地上波で違うことをやって、同時進行するのも試みとしておもしろい。ただ、ネットでの人物紹介が詳し過ぎて、「先き出し過ぎ」。日向の恋人は「兄の家庭内暴力を、目の当たりにした」などはまさにそれ。
常々思うのは、視聴者はこういうドラマを、リアルタイムで見てるのか、録画をして見ているのか、それで多分見方はかなり変わってくるんだろうと思う。そのあたりも今後、テレビ局はどのように考え対処されるか、大きな問題になるだろう、と感じた。

「難」をいえば…

教員で中学生の親なので、身につまされ過ぎて「見るのが辛いドラマ」。「謎解きの興味」でこの先見続けるかなと躊躇するが、自殺した吉岡君が何者かという興味はまだ残ってるので、それに引っ張られて見るかな…と、そういう今状態だ。
スクールカウンセラーの描写。特に「職業倫理としての守秘義務」の配慮がない。それは教会の神父が信者の懺悔を他言できないのと同じ。でなければ生徒の目から、「職員室の犬」に見える。職員室に乗り込むスクールカウンセラーにこそ救いがあるという物語だが…。
教師が類型的過ぎるかなというのが気になる。「坊っちゃん」以来の善玉、悪玉が対峙して…、という今のところパターンだ。善と悪、日向の味方・日向の敵とはっきりし過ぎてて、この先どんなどんでん返しが用意されているのか、リアリティの兼ね合いを含め、それが注目点か。
「インテリア、部屋のしつらえ一つ一つに意味を持たせたドラマ」という視聴者への訴求に期待感。レトロなつくりの家に文房具、伏線ありあり。被害者の家は真っ白な大きいモダン、何を狙う?。死の部屋のお化け屋敷ライティングは、安っぽいな。

宣伝コピーやキャッチフレーズにも言及いただいた

キーワードとして、「私は母が好きではない」。共通のテーマをイメージさせる、絡みつく言葉だ。「色彩心理学」もメッセージ。自死に向かう生徒は、心境を聞かれて黒だと答える。「黒」は不安や恐怖…。ミステリーの手法として手堅い。
宣伝コピーに「この世でいちばん謎が残る死」と。視聴者が振り向くような言葉が必要だと思うが、これはどう?。「自殺」は往々にしていろんな複雑な要因が絡む。「この世でいちばん」とつけた意図は、どの自殺もほぼほぼ謎は多いという暗喩か。

「重いテーマ」をよくテレビでドラマ化したものだ、としみじみ…。

軽いテーマが最近好まれるようだが、かくも重いテーマをあえて選んだものか、と思う。しかし、絵空事ではない現実感があって、いじめ問題、そして母子問題、思春期の子供たちの取り巻く問題点が、浮かびあがる予感を感じさせた。
主人公のスクールカウンセラーみずから、母子確執の複雑な家庭環境。確執を背負いながら、高校生自殺の原因を探る探偵役となる。この設定、ミステリーファンとして興味をいだく。第一話イントロとして、いじめ問題とともに他の母子も含めて3つのケースを取りあげており、冗長とは感じなかった。
テーマは大変いい。社会派ドラマで且つ奥行きのあるミステリー・サスペンスを提供したいのであれば、箸休め的中途半端を廃し、手塚理美の狂気をもっと散りばめてほしい。つぶれていく子供の精神をもっとシビアに描く、真逆の方向に突っ走ってもいい。
「家族団らん」というテレビメディアの役割。良質でおもしろいドラマというのは家族団らんの求心力・核になり得る生命線だ。若者離れが指摘されるテレビメディアにだが、ネットでは得られない良質なドラマを各局切磋琢磨して欲しい。

番組審議会に出席して

制作局 東京制作部 プロデューサー・河西秀幸
主人公が過干渉の母親で悩みながら、生徒の死の原因を追う同時進行の物語序盤のため、ヒューマンとミステリー、切り分けられたご意見を頂きました。毒親描写についての言及が多く、「気付かぬうちに、自分も毒親に陥っていないか考えさせられる」など、制作の意図としては嬉しい限りです。一方でミステリーの不十分さなどもご指摘頂きました。
狙いとして、死の真相に近づくミステリー部分と母子問題などをうまくリンクさせ、視聴者に問いかける結末にしたいと思っており、それこそがヒューマンミステリーの醍醐味だと思っています。親子関係、自殺、学校問題、ネットの功罪など、社会問題を多重的に描いているため、賛否溢れるご意見は大変貴重でした。正解が分からない時代だからこそ、強いメッセージをドラマで発信します。最終回の約束として。

〒530-8408 大阪市北区扇町2丁目1-7 関西テレビ放送 番組審議会事務局

関西テレビ ページトップへ戻る