関西テレビ放送株式会社


番組審議会
No.597 2018.7.12
関西テレビ
「ザ・ドキュメント ふたつの正義 〜検証・揺さぶられっ子症候群〜」について審議
出席の委員

上村洋行 司馬遼太郎記念館 館長 司馬遼太郎記念財団 理事長(委員長) / 安東義隆 産経新聞社大阪本社 編集局長 / 井上章一 国際日本文化研究センター教授 / 金山順子 適格消費者団体 ひょうご消費者ネット 専務理事 消費生活アドバイザー / 黒川博行 作家 /
高江洲ひとみ 弁護士 / 通崎睦美 音楽家・文筆家(敬称略50音順)

レポート参加

難波功士 関西学院大学 社会学部長 教授(委員長代行) /
早嶋茂 株式会社旭屋書店 代表取締役会長

関西テレビ

福井澄郎 代表取締役社長 / 宮川慶一 専務取締役 / 前田ひとみ CSR推進局長 /
妻屋健 編成局長 / 安藤和久 制作局長 /兼井孝之 報道局長 / 松田茂 制作技術局長 /
田中昌樹 スポーツ部長

7月12日に開催された第597回番組審議会では、制作局制作で6月18日放送「ドラマスペシャル 68歳の新入社員」が審議されて、委員の皆様から貴重なご意見をいただきました。また、平成30年7月豪雨の報道・放送体制についても議論されました。

番組を見た感想

人生100年時代といわれるようになり、定年延長や再雇用が当たり前になってきました。また番組の中の台詞にもありましたが、「良い物を普通にちゃんと作ってさえいれば商売が成り立つ」時代ではないと言われています。頭では分かっていても心と体はついてこない。 「従来の仕事のやり方では駄目だ。やり方を変えろ。」と言われると「俺の今までは何だったんだ?」と自分の人生を否定されたような気になるのが人間です。時宜を得た番組で、2時間飽きずに見ました。
番組中盤ではCMの多さに食傷した。番組本編に没入できず、少々イラッとした。
番組最後の「このドラマはフィクションです」のテロップを、「このドラマはファンタジーです」のほうが適切なのではと感じてしまいました。会社勤め、ないしリタイアした中高年男性たちのファンタジー。こんなチャーミングな上司のために力になれ、感謝され、すばらしい妻にも恵まれて…という夢物語に、同世代がうっとりしているとするならば、「お前は草刈正雄ではない」と言って回りたい気分になります。
幸せな世界観、ハッピーエンドで悪役をつくらない、見ていて心地よいドラマを目指されたということで、確かに、そんな狙い通りに仕上がっていたと思います。こちらも気持ちよく拝見しました。ただ、見終わって何か物足りなさを感じました。
感想を言うと、おもしろかったです。好みの問題はあるとは思うのですけれども、結構ハッピーエンドが好きなので、最近見たドラマの中では、気持ちよくエンディングを迎えたドラマという意味で、上位には入るのかなと思いました。
お話全体は老人の力というのか、高齢化社会における老人の可能性を問うてらっしゃると思います。そして、長年の勤めで培った調整能力は尊いんだという持っていきようだったんだと思います。逆に言うと、年寄りの可能性はそんなところにしか求められていないのかもしれません。そんな能力しか求められないのなら、私は働きたくないと感じます。老兵は去りゆくのみだと改めてかみしめたドラマでした。この読み方は間違ってるでしょうか。
主人公が難題に悩みながらもシリアスに偏らず、全体を通して温かなトーンのドラマに仕上がっている。ダブル主人公の高畑充希、草刈正雄に加え、脇役の原田美枝子、笹野高史など出演陣が実力派ぞろいなのが功を奏した。

番組の脚本・構成について

番組終盤はハッピーエンドにするために展開を急ぎすぎた感がある。ご都合主義的な面が見えたのが残念。
退職後の生き方、定年後の夫婦のありよう、老舗企業の生き残りなど、我々の世代にとっての深刻な問題をどのように描いてくれるか期待しながら見ました。深刻ぶったり、理屈っぽかったりする必要はないと思いますが、それでも老舗企業の葛藤や経営のヒント、定年後の夫婦について強く共感できるシーンなど期待したたけに、ちょっとがっかりしました。
最初から最後までリアリティーがない。それならば、コメディーに振ったらドライではじけるような楽しさがドラマに出てくると思うんですけれども、つまりコメディーというのは別にシリアスを求められていないので、どんなことをしてもいいわけであって、要するにおもしろければいいというふうなところなんですが、この脚本に関してはどっちつかずなんですね。コメディーにもなってないし、シリアスなドラマにもなってない。定年後の生活というのはシリアスでもあります。それをコメディーとして笑い飛ばしてやろうというところも見えないんですね。
映画「マイ・インターン」定年後のデ・ニーロがアパレル会社の社長のところに入るような映画なんですけれども、よく似てます。起承転結があって、僕はおもしろく見ました。アパレル会社の若社長、アン・ハサウェイが間違って送ったメールをどうしても削除しないといけないというので空き巣に入って、それを奪還する、削除するというアクションシーンがあったりするんですけれども、だから起承転結があったんですね。このドラマに関しては起承転結がない。ここが転であるというのは、多分脚本家の狙いとしては、どういう新プロジェクトを高畑充希が出すか、僕はそれを楽しみに見ましたが、ヒツジのついた孫の手とか、ヒツジのついたランドセルとか、幾ら何でもこれはないやろうと思いました。
私は脚本もとても好きです。いろいろ嫌な上司もいたんですけど、結局最後は彼らにも彼らのストーリーがあって、最後には気持ちよく終わることができたので、ドラマの終わり方としてもすっきりさわやかに終わったなと思いました。

番組に対する疑問点

工藤が戸田、向井の2人から追い込まれるシーンはセクハラに当たらないのでしょうか?当たるとすれば、番組の展開上の考慮かもしれませんが、“工藤に対する処分は無い”で解決した事になるのでしょうか?最初に時宜を得た番組であると言いましたが、セクハラやパワハラが番組の構成や展開の上で重要な要素になる事も考えられますから、取り扱いが難しいとは思いますが、この段階でお考えを一度整理されても良いのではないかと思います。
企画とかすごく興味があるほうなので、どんな企画が出てくるのかなというその1点に興味を持って観ていたというのですが、その点でいえば、企画書の体裁がしょぼ過ぎました。適当にワードとかでつくったのかなというくらいのレベルの低さ。まずプレゼン資料の出来が手抜きとしか思えなくて、そこに力が入ってないので、ドラマとしても見ていて拍子抜けしたという点があります。
両家の私生活にリアリティーがない。草刈正雄は普通の総務部長やと言ってましたけれども、定年後の総務部長が年金生活でこんなよい生活してますか?それはテレビのドラマです、はいはい、それでいいですというふうにも、コメディーであればいいんですけど、やっぱりそこもちょっとリアリティーがないんですね。
CM前に入るスーパーで、「追い詰められたとき大事件が」というのも、余り言わなくてもいいのかなと。基本的にほんわか進んでいくドラマなので、大事件は大事件なんですけれども、無事何事もなく解決していくので、そこまであおることなのかなと思いました。今回のこの文言には違和感がありました。
ホームページに出てる「68歳の新入社員」という字体が余りにも古めかし過ぎて、もうちょっとポップでもいいのかなと思いました。
社長が劇団員のおじいさんを社内の諜報係として雇いますよね。そのおかげでドラマはハッピーエンドを迎えることができます。だけど、あんな人事採用やっていいんでしょうか。社内に盗聴器を置いて社員のやりとりを盗み聞きしてるようなものじゃないですか。あんなのが明るみになったら、うちの職場なんか大問題です。カンテレでは大丈夫なんでしょうか。せっかくのハッピーエンドが私にはハッピーに感じられませんでした。ハッピーを成り立たせるためには、もうちょっとほかの筋立てを考えてほしかったなと思います。

番組への提言・要望

企業をリタイアした男性を描いたコンテンツということで言えば、ジャック・ニコルソン主演の映画「アバウト・シュミット」のほうが圧倒的に好きだし、リアリティも感じます。もちろん、オンエアされたその時により多くの視聴者を集めなければならないテレビドラマと、狭い人々に長く刺さり続ける道もある映画との違いはわかりますが、テレビドラマのリアルタイム視聴が減り、二次利用にも重きをおかれなければならない現在、この番組が「アバウト・シュミット」との比較において語られかねないことも、留意いただければと思います。
こういうスペシャルのドラマで、もしDVDも出るということなら、ドラマに出てくるサブレを買って食べてみたいとか、これだけひつじのショーンなどのヒツジグッズが売れて人気があるので、それを超えるものをつくるという心意気を持ってほしいと切に思いました。
二人の悪役のセクハラ、パワハラというようなことを、何か個人的にやってるというか、ただ感情的な問題だけでやってる。せめて、このセクションの社員が背景にいるんだということを映像で見せてくれたら、もう少しリアリティーがあったのではないか。これ徹底的にファンタジーにしてしまうか、リアリティーを持ったドラマなのかというのがもうひとつよくわからない、中途半端なものになりました。

出演者について

高畑さんがところどころで涙をためているシーンがあり、結構もらい泣きしました。「高畑さん、上手!」、それがすごく印象に残ったドラマでした。
主役の高畑充希の熱演、草刈正雄の好演、最近は役者としての評価も高いようですが、それプラス私たちの世代には格好いい男性モデルの印象が強い草刈正雄が68歳で再雇用されるというある種のギャップも効果を上げているでしょう。そこに笹野高史、宮川一朗太達が絡んで良く出来ている番組だと思いました。
高畑充希さんというのは大変うまい女優さんだというふうに思いました。企画案が思うようにいかない立場にありつつ、40歳年齢の違う新入社員をどう扱っていくか。お荷物だと思いながら、父親というような感覚を持つようになって打ち解けていく。そういう感情の複雑な表現というものができていたように思いました。この人はだんだんうまくなっていきますね。
仕事終わって、疲れてるから余計に高畑充希さん演じる工藤さんの気持ちも何かすごく共感できるというか、何度も、「ああ、わかる、わかる」と思いながら見ていました。視聴者対応のほうの感想を見ていても結構30代とか20代の方々のコメントが抜粋されてあって、この方たちと同じ感想を私も持っています。
いい点というのは圧倒的に俳優陣だと思いますね。草刈さんというのは大河ドラマの真田昌幸で存在感を見せてました。草刈さんは今ふうの高齢者というものをオーバーな演技ではなくて淡々としたセリフ回しで、年齢なりの頑固さやそれなりの仕事人間の感じというものを出しておられたように思います。

番組審議会に出席して

制作局 制作部プロデューサー・萩原崇
このたびは、ドラマ「68歳の新入社員」につきまして、さまざまなご意見を拝聴する機会をいただき、誠にありがとうございました。 このドラマは、年齢差40の2人が出会い、年下上司と年上部下となった中でどのような化学反応が生まれるか、この時代に起こりうる中でどう響くかを描いたドラマでしたが、理想の部下・理想の彼氏など、夢のある姿に映った一方、この世界観の現実性や仕事としての描き方など、より工夫がいるのではというご意見をいただき、自分自身とてもいい勉強になりました。どの層にもしっかりと響くドラマの制作を、今後も引き続きしっかりとやっていきたいと思います。

〒530-8408 大阪市北区扇町2丁目1-7 関西テレビ放送 番組審議会事務局

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