関西テレビ放送株式会社


番組審議会
No.607 2019.7.11
関西テレビ
「僕が笑うと」について審議
出席の委員

上村洋行 司馬遼太郎記念館 館長 司馬遼太郎記念財団 理事長(委員長) / 安東義隆 産経新聞社大阪本社 編集局長 / 井上章一 国際日本文化研究センター教授 / 金山順子 適格消費者団体 ひょうご消費者ネット 専務理事 消費生活アドバイザー / 黒川博行 作家 / 高江洲ひとみ 弁護士

レポート参加

通崎睦美 音楽家 文筆家 / 難波功士 関西学院大学 社会学部長 教授(委員長代行) / 早嶋茂 株式会社旭屋書店 取締役会長

関西テレビ

羽牟正一 代表取締役社長 / 谷口泰規 常務取締役 / 大場英幸 取締役 / 前田ひとみ CSR推進局長 /妻屋健 編成局長 / 安藤和久 制作局長 / 兼井孝之 報道局長 / 安渕修 スポーツ局長 / 松田茂 制作技術局長

審議の最初に「胸いっぱいサミット」で岩井志麻子さんの発言を放送したことにについて審議され、委員の皆様から様々なご意見を頂きました。

今の時代がいろんな意味で寛容さがない時代に入ってきて、昔は言っても良かったことが今の時代は言ってはいけないハードルが高くなっている時代であることを、つくり手側がどれだけ認識しているかが問題だろうと思う。
テレビ放送というのはやっぱりパブリック放送であり影響力は大きい。バラエティ番組について、おもしろくしたらいいんだというような感覚で制作していくと、どうしても社会常識の枠みたいなものが緩くなってしまうということがあり、慎重に考えなくてはいけない。
局として、番組や記者会見などで謝罪をしたけれど、これで終わったという風に考えないでほしい。やはり現場でこのことに関しての議論をしてもらうのは当然であり、同時に局全体としても、今後も継続的に機会を設けて何度もやるということが大事だと思う。
今月の審議番組は5月16日に放送された「ザ・ドキュメント 舌禍 『暴言』市長は圧勝した」。部下の幹部職員への暴言を理由に辞職した明石市の泉房穂市長の出直し市長選挙に密着したドキュメンタリー番組に、委員の皆様から様々なご意見をいただきました。

番組を見た感想

見方や切り取り方によっては印象の操作や誘導に繋がるだけに、メディアの責任が重要である事を再認識した。
問題となった「暴言」に関しては、たとえそれが前後の文脈抜きに「切り取られた」ものであったとしても、あの物言いは「人の上に立つ者として、許されるものではない」と、改めて思いました。
若いお母さん方も最初はネットで署名を集めはるんですよ。だけど思ったほど集まらない。そうだ、街頭活動をやろう。どうして。街頭活動をやったらテレビが捉えてくれる。ネットとテレビの力関係ってよく話題になるけれども、まだまだテレビには力があるんだということをこのテレビ番組は示そうとしてらっしゃるんでしょうね。なかなかおもしろいところだと思いました。
弁護士でもある市長が火をつけてこいというのは、これはちょっとまずいなと思って、それは失言というか、相当ひどい失言やと思うんですけれども、それがまた再選されたというのはSNSの力なのでしょうが、SNSというのは本当に怖いなと思いました。
この市長は本当に感激屋さんなんですな。泣いてばっかりしていましたね。それがだから激昂につながるんだろうというふうに、よくその感じが出ていたし、家族を撮られたことは大変よかったと思いますよね。その映像で出てきて、泉市長という人の公式発言というもの以外の何かが視聴者に伝わったような感じがしました。

番組に対する評価

最後の家族との団らんや、アンガーマネジメントの本を読むシーンもよかった。人間って多面的なものです。家族に見せる優しさと、職員に対する厳しさ。市長の人格には両面あります。そこも描かれていたのでバランスがとれていた。よかったと思います。
選挙に出る方、あるいは政治家って、普通は若づくりをしはるんですよ。例えば髪の毛を黒々と染めたりされるわけです。でも、この泉さんは判断されたんですね。白髪にしたほうが今回はさわやかな印象をもたらすだろうとどこかで思ってらっしゃったような気がします。辞職会見から2週間後には頭の両脇が白くなり、当選発表されるころにはてっぺんも随分白くなってました。そこもテレビは捉えてらっしゃったと思います。これこそテレビの力だと思います。活字にはなかなか、できひんことではないのかな。
取材の立ち位置、相手との距離感、そこをしっかりと保ちながらバランスに配慮しているのがわかりました。よく取材されていたと思います。
最終的に全体として見たときには、泉市長だけではなく対立候補者や橋下元市長、元明石市役所の方々のインタビューをさまざま取り上げていて、一方的な意見に寄り過ぎないように相当配慮してつくっていらっしゃるんだろうなということも感じました。
泉氏が暴言問題から辞任に追い込まれて、その後再選されるまでの顛末と、泉氏の人物像がよくわかる構成になっていた。マスコミの第一報にあった暴言の背景が丁寧に取材することで理解できた。
この暴言問題がよく理解できたという意味でよかったし、この暴言問題を取り上げたのはカンテレだけで、その意味でもよくやられたと思う。

番組を見ての疑問点

番組中、度々流される「ラソラソレー」で始まる、パーカッション系の音楽が耳障りでした。ナレーションとの音量バランスが悪かったのかもしれません。
あの暴言には、ナレーションにもあったように、単に市民活動家時代の習性というだけでは説明のつかない、何かがあるように思われるのですが、そこにもう少し迫りようはなかったのかとの不満は消えませんでした。
そもそも録音物が何故あるのかなどの説明がなく、2年前の音声が最近になって世に出てきた経緯が今一つ分かりにくかった。
番組全体として何かダラダラと続いてる感じがしました。例えば文章だったら改行であるとか段落とかという間というものができるんですけれども、そういう映像の全体の番組の中でのちょっとした余裕というものがあったほうがわかりやすかったと思います。
一番最後、泉さんが出てきて、自分の弟が身障者であると。それの怒りでこういうふうになりましたというのは、ここはちょっとくさいなと思いました。そこを最後に出すその編集の仕方はちょっといかがなものかなと思いましたけれども、基本的によい番組であると思いました。

構成・演出について

なぜ圧勝したかを知りたかったわけですが、そこについては「若い母親の圧倒的支持を受けた」という点だけで、終わったような気がします。他の市町村と比べ、何がどのように評価されているから、高い支持を得ているのか、具体的な例が欲しかった。
ざっと観たときの印象では、選挙の圧勝をうけて泉市長の禊が済んだ、というのが番組の基本的な主張のように思えましたが、再度丁寧に見直してみると、再開発ビルの元理事長や橋下徹氏の発言などもあって、単純に泉市長バンザイという内容ではなく、それなりにバランスが取れていることはわかった。
泉氏の暴言とされる発言は、精神科の医師、アンガーマネジメントの専門家なら、どのように分析されるのか。そのあたりのことも知りたかった。
子育てのお母さんに支えられたことは肯定的に描かれていました。その一方で、駅前ビルの担当者が、子育て対策のためにスペースをとられたことで不平を述べておられる、そこを見落としてらっしゃらないし、バランスがとれていたと思います。
どういうふうに編集するかで、こういう政治絡みの番組って必ずそうなんですけど、どっちに寄るかというのは非常に難しくて、この番組でもあっちに寄ったりこっちに寄ったりして。基本的に泉という市長の側に寄ってるような感じがしなくもなかったんですけれども、こういうふうな編集の仕方で終えるのがいいのかなというふうに最後は思いました。
泉氏の活動の原点が怒りであり、だからこその今回の暴言。番組ラストでのアンガーマネジメントの学習をしている泉氏の姿が暗示的で印象に残った。
橋下氏のコメント、元職員の証言で救われました。あのままなら「ええ人」で終わるところでした。苦労して東大に行って、世のため人のため、子育てで苦労するお母さんたちから喜ばれているのに、何でこんなええ人を引きずりおろすのかと。
切り取り方、見せ方によって受ける印象はすごく変わるし、暴言の一部だけ聞いた方と続きを聞いた方では印象変わった方が多くいたかと思う。橋下元市長も大変長くお話されただろうし、元明石市役所の職員の方のインタビュー全部を聞いてないので、やっぱり判断ができないし、逆に全部をテレビでは流すことはできないので、そういった面で大変編集の難しさというか番組の難しさが相当あるんだなというのも感じました。
橋下徹さんの発言、これは入れてよかった、取材をしてよかったと思います。この人の、「権力者の不祥事が選挙で許されてしまうあしき前例をつくった」というこの言葉ね。これはやっぱり入れたことで、市長寄りの言葉が多いなと思ってはいましたが、この発言によってバランスがとれたんではないかというふうに思います。

今後の番組への提言

泉市長が戻ってきて、一緒に働くこと自体、公務員の方々どう思われてるのか気にはなりました。それを公務員の方に聞いて答えてくれるとは到底思えないんですが、今後どううまくやっていこうと泉市長自身が思ってるのかなと。そういったコメントは泉市長からぜひお聞きしたかったなと思いました。
橋下氏の「こう思ったら他の意見を受け入れない」という趣旨の発言が、泉氏という人物を知る上で興味深い。ここを深掘りするだけでも、番組になるのではとも思った。
ここ数年、怒りをコントロールできない老人たち、といった記事をよく見かけますし、また私の職場においても、温和な若者たちに対し、「キレる中高年」をよく見かけます。今後、「アンガーマネジメント」をメインテーマとしたドキュメンタリー番組も期待してます。
これまでも国会議員とか優位な立場にある人たちの暴言が録音されて、それがある部分だけ切り取られて、センセーショナルな出来事としてマスコミは取り上げてきたんですけれども、その部分だけをニュースで流すんじゃなくて、前後にある、だからこういうことを発言したんだというところまで、今回のドキュメンタリーのように、例えば報道ランナーみたいなニュースバラエティなどの枠でも同じような扱いを少しでもいいからしていただいたらいいなと思いました。

〔事業者側より返答〕

「ザ・ドキュメント」と「報道ランナー」は関西テレビ報道局の両輪の役割をしています。ニュースで取り上げて、それを少し長い企画ニュースにして、その中でドキュメンタリーになる可能性のあるものを「ザ・ドキュメント」にしていきます。このサイクルで取材力と表現力をつけていく。両輪をうまく回すということで、「地域で最も信頼できるニュース」を実現したいと思っています。

番組審議会に出席して

報道局 報道センター ディレクター 宮田輝美
同じ出来事でも見る側の立場や、相手をどの立場で見るかで全く違った見え方に映ります。取材中漠然と感じていたことではありましたが、今回改めて様々な見方や読み取り方を教えていただきました。一方で考える素材としても表現の足りていない部分についてのご指摘をいただき、番組について考え直すよい機会となりました。またテレビというメディアだからこそ伝えられる部分があるということについても新たな気付きをいただきました。これからも自分が取材する中で感じた思いを突き詰めると共に逆の見方でも問い直し、複眼的な視点でものづくりをしていきたいと思います。貴重なご指摘をありがとうございました。

〒530-8408 大阪市北区扇町2丁目1-7 関西テレビ放送 番組審議会事務局

関西テレビ ページトップへ戻る