関西テレビ放送株式会社


番組審議会
No.600 2018.11.8
関西テレビ
「僕らは奇跡でできている」について審議
出席の委員

上村洋行 司馬遼太郎記念館 館長 司馬遼太郎記念財団 理事長(委員長) / 難波功士 関西学院大学 社会学部長 教授(委員長代行) / 安東義隆 産経新聞社大阪本社 編集局長 / 金山順子 適格消費者団体 ひょうご消費者ネット 専務理事 消費生活アドバイザー / 黒川博行 作家 /
高江洲ひとみ 弁護士 / 早嶋茂 株式会社旭屋書店 代表取締役会長(敬称略50音順)

レポート参加

井上章一 国際日本文化研究センター教授 / 通崎睦美 音楽家 文筆家

関西テレビ

福井澄郎 代表取締役社長 / 宮川慶一 専務取締役 / 前田ひとみ CSR推進局長 /
妻屋健 編成局長 / 安藤和久 制作局長 /兼井孝之 報道局長 /安渕修 スポーツ局長 / 松田茂 制作技術局長

10月9日に放送された火曜9時ドラマ「僕らは奇跡でできている」第1話について審議されました。高橋一生演じる動物行動学講師の常識や固定概念に捉われない言動に、周りの人々が振り回されながらも、純粋無垢な気持ちを思い出させる連続ドラマに、委員の皆様から貴重なご意見をいただきました。

ドラマを見た感想

1回見ただけではドラマの良さがわかりづらい。回を重ねてようやく「あっ、こういうことなんだ」と分かるドラマでしょうか。
私はこの役目柄、ディスクを頂戴しているので見ますが、普通の視聴者として1回目を見た時に、じゃ、2回目を見るかと言われると、多分見ないやろうなというのが正直な感想です。
今、職場や学校で、何となく生きづらさ、しんどい思いをしている人が大勢いらっしゃる。そういう人や、その周囲の人たちの共感を呼ぶドラマになっていると思った。
第1話を見終わった時に、何とも言えないモヤモヤ感が残った。登場人物の多くが、私自身の価値観からはみ出ているせいか。従来のドラマ展開とは違うスピードだったせいか。
「ウサギはカメを見下ろすために走るんだ。」あの一言で、この先生も人間的な偏見に毒されていると受けとめました。無垢な人には見えませんでした。もし、彼を自然愛好の人として描くつもりなら、あの一言で失敗したと思います。
主人公とその周りの人の何気ない会話に小さな気づきが散りばめられていて、ハッとする瞬間が何度もあった。
BGM、ピアノやクラリネットの音色が、すごく番組の雰囲気、温度、質感に合っていて、聴いていて心地良いなと思いました。あまりにもしっくり合っているので、オープニングで雰囲気と合った音楽が流れているのに、いきなりタイトルのところで歌が流れてきた時には、ちょっと違和感があった。

出演者について

アリばっかり見ているアンジャッシュの児嶋は、非常にアクセントとしても効果的だったと思う。
高橋一生さんの演技もすごく芸達者だなと思いましたし、やっぱり若い俳優さんたちも多く出演されてるので、見ている分には楽しいなと。あと、動物の知識がいっぱい詰め込まれているので、子供に見せてもいい番組かなと思いました。
主人公の日常生活がゆっくり流れていくスローテンポな作り方というのは、私はこのドラマに関しては違和感が全く無くて、むしろ効果になっていると思いました。こういう作り方ですから、演技人が希薄だと、どうしようもないドラマになるんですが、幸いにしてキャスティングが良く、田中泯、戸田恵子、小林薫というベテラン陣が脇を固めたことも、ファンタジードラマとしては私は面白く楽しく続けて見ています。

ドラマのリアリティーについて

台所の古いタイルやドア等の作り込みも非常に丁寧にやっておられるなと思いましたし、大学の状況も、家庭教師のバイトなんか入らへんレベルの大学やというような台詞もあったように思いますし、教授と事務長の関係もさもありなんと思わせるような形で、非常に丁寧に作ってあるなと思いました。
小林薫は研究室で何を観察して研究しているか?あと、こんな事務長、大学にいませんよ。なおかつ、研究室でアリばっかり見ているようなこんな人間もおらんし、大学の研究室の中で何々先生という呼び方はしません。何々さんです。教授ぐらいは何々教授とか言うかもしれませんけれども、こういった意味でのリアリティが本当にないんです。
監修もつけて動物生態学、動物行動学等いろいろ勉強はされたと思うんですが、教育や研究の現場や、開業の歯科医の実態等にどこまで迫れているのかということを私もちょっと感じました。
相河講師が自転車で軽やかに走っている時にセミの声が聞こえるけれども、あのパーカーではどうしようもないだろうなと。夏の暑さの中で、あれは耐えられないだろうなと思いますが、極めて爽やかな顔をされていた。そういうことも含めてリアリティの無さというのは所々にあるんですけれども、「グッド・ドクター」のファンでありましたから、その辺を枠の中で捉えて、このドラマも一緒に楽しんでいます。

番組に対する疑問点

相河がマウンティンパーカーとハンティングブーツをずっと履いています。マウンティンパーカーは雨合羽の代わりですから、あれを年中着ていると蒸れて仕方ないです。あと、ハンティングブーツというのは、湿地で鳥を撃つためのブーツです。長靴みたいなものですから、あれも年中履いていると水虫になります。動物学者がなぜ鳥を撃つハンティングブーツを常用しているのか、そこが分からんです。鳥を殺すための靴です。なぜああいう服装になったのか知りたい。
主人公は、とりあえず動物をあるがままに見ようとする人ですよね。そのすばらしさを描くドラマだと私は受けとめました。それなのに、「ウサギはカメを見下すために走っている。」この人間的な嫌みに溢れた言葉を、主人公はいつか反省するのかもしれません。ウサギは走りたくて走り、寝たくて寝る。ウサギを、そうあるがままに受け入れる。それまでの伏線として、この台詞は挿入されたのでしょうか。

チェインストーリーについて

今回のチェインストーリーは、本編では影の薄い沼袋氏が主役を張って、登場人物の妄想検証をする企画で、これまでにない構成になっているのがユニークだと思う。短編ドラマのようで面白い。
チェインストーリーは、私はちょっとネガティブなんです。「明日の約束」の時は一生懸命見ましたけど、今回、児嶋さんの視点から色々なものが見えていて面白いかもしれないけれど、よく作ってあるけど毎回同じパターンだなというのがあって、見ても感動も発見も無いという感じがします。

「発達障害」について

専門的なことは分かりませんが、相河一輝は一般的に「発達障害」といわれる人、あるいはそれに近い人物だと思います。音楽家仲間や編集者、学者さん等、このタイプの人は珍しくありませんが、彼らはその個性を活かした、ある種の成功者だと思います。一輝も大学での職を持っている時点で、その一人といえるでしょう。ただ、このようなタイプの人の中には、その個性を活かしきれない人が多数いるのも現実です。
ドラマのベースにある発達障害については、あえてこの言葉を出さないことで、普通であること、普通じゃないことの境界線など無いということを暗に示しているのだと理解できた。
時間守れないとかこだわりが強いとか、発達障害の人々の特徴だと言われることが多いと思います。このドラマを当事者やその家族等が見た時に、こういうことでも世の中でちゃんと居場所を得て周囲に影響を与えられる、嬉しいなと取る人もいるかもしれないけど、割と多くの当事者やその家族等は、こんなうまくいく話ばっかりじゃないし、こんなきれいごとを見せられても、余計辛くなるだけという反応もあるかもしれません。

番組に対する提言

タイトルが番組の視聴選択にとってはすごく重要だと私は感じています。ホームページに載っていた、「ついつい自分を他人と比べてしまうすべての人に贈るコミカル・ハートフルドラマ」と書いてあると、「僕らは奇跡でできている」というタイトル自体がある意味答えなんだなと、次に見たいと思うひっかかりがないんです。今期のドラマですごくおもしろいタイトルだし、エピソードも登場人物たちはどこに向かっていくんだろうと一番気になったのは「結婚相手は抽選で」という東海テレビさんのドラマです。結婚相手は抽選でって、タイトルだけで見たいと思えるドラマだなと思いました。
昨日、小学校の音楽教諭らとの会食の場でこのドラマが話題になり「こういうのを放送されると現場は困るよねぇ」と嘆いておられました。このドラマが、個性を認め合い、時には許し、助け合うという、人類愛的美談に終わらないことを希望します。顔をしかめる側が、単なる悪者や意識の低い人に見られないようにも配慮していただきたいです。
歯科医が出てきます。動物学者との触れ合いがあり、虫歯になったのは歯の磨き過ぎで、エナメル質が削れたからでしょうと。そこで動物学者から、なぜ人間はサメのように歯が生えかわず、乳歯から永久歯に一回だけ生えかわるのか。他の哺乳類はどのように生えかわっているのか。そのような会話があれば、この二人の関係性において動物の成り立ち等をもう少し深めていくと、話にもっと広がりと深みが出てくるように僕は思います
HPでは「ピリ辛きゅうり」のレシピが紹介されています。それに限らず、ドラマ内のとても美味しそうなお弁当等、「料理」が一つのスパイスとなっているので、それらのレシピについてもさらに充実させられると、話題の一つになるのではないでしょうか。ドラマのノベライズのように、レシピ本が発売されても楽しいでしょう。
僕がこういうドラマを作るのであれば、相河を本当のド変人にします。ド変人なのに、動物学者として人間としてすごく光ったものがどこかにあって、視聴者を驚かせるような意見を言う。飛び抜けた変人と、自分探しの歯科医とのこれからの人間模様とか恋愛模様があれば、ファンタジーとして成立するのではないかなと思いました。

ドラマの今後への期待感

大学講師は家政婦と20年来2人で暮らしています。講師の父母がまだ登場していません。これも障害が何か関係しているのだろうかと思ったりします。謎がまだ多くあって、今後の展開に注目しています。
自分は、美談とか美談でないとかということではなくて、世の中の枠からはみ出した人に対して、鮫島教授が面白がる名人なんだと言ってみたり、あるいは主人公が子どもの時、授業中に先生に叱られたという話で、祖父にカエルの足が何本かと尋ねられて6本だと答える。祖父はそれを大発見だと励ましたり、あるいは家政婦の家庭の中のシーンをあわせていくと、主人公を支えている人たちの優しさを余り強調せずに、冒頭で豊福さんが、押しつけがましいことはしないとおっしゃっていましたけど、そういう感じは出ていたと思います。だから印象として、大変自分はいい感じでこのドラマを見ているので、この特異な講師が、これからどのように周りに影響を与えていくのか、最後まで見届けたいと思ってます。

番組審議会に出席して

制作局 東京制作部 プロデューサー 豊福陽子
物語が平坦だと思われたり、面白いと感じてもらえない人々がいる可能性は予想しておりましたが、今回様々なご意見をお聞きして、おそらく視聴者の中でも、このドラマに否定的批判的な感想を抱く人がどのようなことを思われるのか、その一端をお聞きできた気がしており、非常に貴重な経験をさせて頂いたと思いました。また、まず番組に興味をもってもらうためのタイトルの在り方など、気づかされる点も多くありました。頂いたご意見・感想を大切にして、今後の番組作りに生かしたいと思います。ありがとうございました。

〒530-8408 大阪市北区扇町2丁目1-7 関西テレビ放送 番組審議会事務局

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