第59回 オンブズ・カンテレ委員会 議事概要

2024年2月9日

日時

2024年2月9日(金) 10時30分

場所

関西テレビ放送

出席者

難波功士委員長、赤松純子委員、丸山敦裕委員

関西テレビ出席者

羽牟正一代表取締役社長、喜多隆専務取締役、伊東亮常務取締役、小杉太二取締役、事務局

冒頭、羽牟社長から「『ちまたのジョーシキちゃん』の問題についてはオンブズ・カンテレ委員会の指摘や番組審議会の審議内容を踏まえ、再発防止の取り組みを進めている。放送局として大切なことを見失わないよう襟を正して参りたい」と挨拶があった。

1.「ちまたのジョーシキちゃん」問題の経過報告について

「ぎょうざがおいしいチェーン店ベスト10」特集(11/3放送)で、番組が実施したアンケートの結果と異なる内容を放送した件について、関西テレビから改めて再発防止策や、BPO放送倫理検証委員会への追加報告を行ったこと等が説明され、以下の意見交換が行われた。

委員からの意見

  • 「カンテレ通信」のような番組で、タイミングを見て、社内外に対して会社としての考え方を発信したほうが良いのではないか。
  • 放送倫理について学ぶインターネットでの講習を取り入れてはどうか。
  • BPO放送倫理検証委員会への追加報告を読み、若いスタッフが違和感を覚えていたことを知ってホッとした。誰も気付かず原因が分からないのならどうしようもないが、気付いても言えない雰囲気があったとすれば改善の余地がある。
  • 形ばかりの研修は過重な負荷がかかるので、現場に負荷がかかりすぎないように行ってほしい。

関西テレビからの意見

  • 当社には「発掘!あるある大事典II」の問題があるので、制作マニュアルを作って周知する等の取り組みは行ってきたが、今回の問題が起きてしまった。数年に一度ではなく、人事異動やシフト替えのタイミングに合わせて効果的に研修を実施していきたい。
  • ハラスメントに気を遣い過ぎて教えるべきことを教えられていないという部分もあるが、「言いやすい雰囲気作り」に心掛けながら、勉強会や研修を工夫していきたい。
  • ジェンダーや「痛みを伴う笑い」、旧ジャニーズの問題など、時代に沿ったテーマで他社と議論するような研修も取り入れていきたい。
  • 制作者である前に関西テレビの人間として、一人の人として、どんな価値観が大切なのかということを認識しなければならない。研修をマニュアルと捉えられないように、優先すべき価値観をきちんと考えられる制作者を作っていくべきだ。
  • 「カンテレ通信」で本件を取り上げることを検討している。
  • 「あるある問題」以降、色んな仕組みを作ってきたが、きちんと運用ができておらず、社員に浸透していなかった。チェックにも限界があり、どうしたら一人一人の心に落とし込めるのか、良い解決策が見当たらない。
  • 仕組みがあったにもかかわらず生かされなかった。きちんと対応できていれば問題が大きくならずに済んだかもしれないので、発生後の対応に関しては更に検証を進めたい。
  • 再発防止策として、制作部長が部員に一対一で面談してメモを渡す等、これまでにない啓発活動に取り組んでいる。座学ではないディスカッションも検討している。再発防止策をしっかり進めていきたい。
  • 制作者が自分の番組を愛せるようなマインドと姿勢を現場で持ち続けられるような環境を、どう作っていけるか考えたい。

委員からの意見

  • 今回の事案は、悪いことだと知らなかったからやったのではないと思う。倫理観を高めても、手を出さざるを得ないような外部環境によって問題が起きてしまう可能性があるので、取り除くべき外部要因があれば取り除くよう検討してほしい。
  • 過ちを起こさないということと、過ちを犯し始めていることに気付いて引き返すこととでは異なるので、それぞれに対して異なる対策が必要かもしれない。チームワークは大切だが、チームワークを大切にするほど場の流れに抗いにくくなり、過ちから引き返すことが難しくなる面もあるため、そういった観点からの対策も検討されたい。
  • 収益や経営の問題と放送倫理は時に対立するが、目先の収益や経営よりも、将来的な収益や経営に放送倫理は大きく関わるという価値観を共有できれば、判断も変わるのでは。放送局にとっては、放送倫理が一番ど真ん中の柱であり、そこが崩れたら最終的に経営も危うくなるという理解を共有することが、改革の第一歩になるかもしれない。
  • 倫理観を高めることと同時に、踏み留まらなければ会社の社会的な評価を下げかねないと伝えることも一つの歯止めになる。

2.視聴者からの意見と対応

(1)能登半島地震報道について

地震の緊急特別番組によりバラエティー番組が放送されなかったことに対しての苦情や、逆に「バラエティーを止めて報道番組を放送すべきだ」など、様々な意見があった。この他、被災地の取材に関して、被災者への配慮が足りないという意見が複数あった。
上記視聴者意見について以下の意見交換が行われた。

委員からの意見

  • 地震の翌日に羽田空港の事故があったので、地震報道が一旦途絶えたが、重大さで言えば地震のほうが大きかった。
  • 報道用ヘリコプターへの苦情については、「日本ファクトチェックセンター」が検証し事実を確認して発信していた。

関西テレビからの意見

  • ネット上の指摘は把握している。事実をしっかり取材すると同時に、取材する側が見られているということを意識し、しっかり取材に当たるよう注意している。
  • ヘリコプター取材に関しては、各局が分担した地域で順番に行うような取り組みも始まっている。空撮映像は被災地の全貌を伝えられる大きな武器なので、被災地に迷惑をかけずにどう取材を成立させるか、関西エリアの我々にとっても宿題だと考えている。

委員からの意見

  • 放送局としての1丁目1番地とは何なのか。スクープをとるということも一方の価値だが、取材方法も守らなければならない。複数の価値をどう考慮していくのかというところに着地する。
  • 取材に行ったこと自体は間違っておらず、視聴者意見については必要に応じて良い教訓をくみ取るという姿勢で十分なのではないか。
  • 現場に迷惑をかけないようにしっかり取材をするというのは平時では成り立つが、非常時には、誰も傷つけないというようなきれい事は成り立たない。取材はときには誰かを傷つけるものだということを肝に銘じて、それでも伝える意義があるなら、覚悟をもってやっていくしかない。
(2)松本人志氏の疑惑報道について

週刊誌報道を受けて視聴者から松本氏を出演させないでほしいという意見が多数寄せられた。情報番組での取り扱いについても批判が多かった。一方で、松本氏の出演を望む声もあった。
上記視聴者意見について委員から以下の意見があった。

委員からの意見

  • 波及する形で別のタレントの扱いをどう判断するかが焦点になってくる。素早く色んな対応をして炎上するのが最近の傾向なので、じっくり検討してから調査すると表明しておくほうが良いのではないか。

3.BPO放送倫理検証委員会関連

BPO放送倫理検証委員会が、NHK「ニュースウオッチ9」コロナワクチン接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送と、TBS「news23」JA自爆営業調査報道について、放送倫理に反するという判断を示した。
上記について委員から以下の意見があった。

委員からの意見

  • 両件ともプロパーではない人が功を焦り、自分ができると言いたいために報告できなかったという側面がある。加えてTBSの件は一人だけ外部制作会社のスタッフなので、余計にコミュニケーションをとりにくく、弱みを見せられなかったのかもしれない。外部スタッフが加わるのは日常化しているから、風通し良く意見が言い合える環境なのかが気になった。
  • 内部通報者を特定しようとしたJAにメスが入らないのはおかしい。JAの体質がどう変わったのか、TBSは報道しなければならないのではないか。
  • NHKは、1分のエンドVTRをどう捉えているのか疑問だ。純粋にイメージを伝えるための素材として都合の良い発言で画が作れたらそれでよいという感覚に陥っていなかったのか。「画像はイメージです」くらいの感覚だったとすれば、放送倫理について一から考え直す必要がある。
  • TBSの件は、取材対象者から見れば防ぎようがない。プロが大丈夫だと言ったら信用する。これがTBS限りの話なのか、氷山の一角なのかわからないが、もし後者ならば大問題だ。

4.オンブズ・カンテレ委員会特選賞の実施予定について

オンブズ・カンテレ委員会特選賞の募集を1月から実施しており、全社員による第一次投票を経た上で、次回の委員会で、番組部門、活動部門の最優秀賞を決定する。

5.委員会直接通知について

この期間における社員等からの直接通知案件は無かった。

次回委員会日程について

2024年5月開催予定

以上