第52回 オンブズ・カンテレ委員会 議事概要
2022年5月25日
日時 |
2022年5月25日(水) 10時 |
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出席者 |
難波功士 委員長、赤松純子 委員、丸山敦裕 委員、羽牟正一 代表取締役社長、宮川慶一 専務取締役、喜多隆 常務取締役、伊東亮 取締役 |
参院選挙を前に、番組における政治的公平性などのテーマについて、関西テレビとオンブズ・カンテレ委員との間で意見交換が行われた。概要は以下の通り。
1.放送法第4条 政治的公平性について
(1)維新関係者が同時出演した在阪局のバラエティー関連
橋下徹氏、吉村大阪府知事、松井大阪市長の3氏が出演し、政治的なトークを繰り広げた在阪局のバラエティー特番(1/1放送)に関して、当該局は調査報告を公表し、「3氏の同時出演は高視聴率を意識したもので、政治的公平性に対しての認識の甘さがあり、バランスの取り方が不十分だった」と認めた。この番組についてBPO放送倫理検証委員会は討議の結果、審議入りとはせず委員長談話を公表することを決めた。(※6/2にweb上で公表済)
関西テレビの放送倫理会議では、2月以降毎月この問題を取り上げ、同一政党の関係者が出演する際の注意点や対応、当該局の調査報告に対する考え方などを議論した。関西テレビでも2月に橋下氏と松井市長が出演するバラエティーを放送しており、政治的な話題は一切なかったが、視聴者からは「維新を持ち上げすぎ」等、多数の苦情が寄せられた。
(2)参院選挙に向けて
民放連放送基準では、「選挙事前運動の疑いにあたるものは取り扱わない」と定めており、立候補予定者の出演は少なくとも公示の一カ月前までには取り止めることが望ましいとされている。
委員からの意見
- 当該局の調査報告によると、他部署に口出しするのを躊躇うセクショナリズムが一因のようだが、関西テレビではそのようなことが無いように、戒めとなればよいと思う。
- 全ての番組を通してトータルで公平であればよいというのが法的な解釈だが、一つの番組内でも政治的な偏りが無いような配慮は必要だろう。
- 全ての政党を出しても、各政党に対する番組内の扱い方によって公平でなくなることもあるので、公平性に囚われすぎたり、政府の外圧によって萎縮したりしないようには願いたい。
- こういうポリシーでこういう枠内でやっていると示すことができれば視聴者もついてくるし支持されると思う。
関西テレビからの意見
- 昔は候補者の扱いを秒単位で同じ放送時間にしていた時期もあった。自民党ばかり出演させた「BS11」の番組が2011年にBPOで放送倫理違反と判断されたが、今回の当該局の番組はそれに近い部分もあったと思う。何をもって公平とするか難しいが、できる限り、自分たちで考えた公平性を番組の中で出していくことが大事だと考えている。
2.視聴者からの意見と対応
(1)差別語への訂正、謝罪について
フジテレビ「ポップUP!」で出演者が「びっこを引く」と発言し番組内で謝罪したことについて、視聴者から苦情があった。
関西テレビでは、生番組で不適切な言葉が放送された場合は、「できる限り速やかに具体的に訂正し謝罪」、「発言の直後に訂正できる場合は言い換えなどによって訂正し、必ずしも不適切な言葉をそのまま繰り返す必要はない」、という対応を基本とする。
委員からの意見
- 「不適切な発言」だけでは何について謝罪するのか分からないので、例示のように、「○○のコーナーで障害のある方に対する(不適切な発言)」という風に言うとするのは、良いと思う。
- 話者は差別的意図を持っていない場合が多いので、「差別的な発言」というより「不適切な表現」「不適切な発言」のほうが良いだろう。
(2)タレントの自殺報道について
ダチョウ倶楽部の上島竜兵さんの自殺に関して、フジテレビ「めざまし8」が、自宅前から生中継で「首を吊っているのを家族が見つけて通報した」と詳細に伝え、視聴者から苦情があった。
これに対し厚生労働省は、WHOのガイドラインを示し、自殺の手段を報じたり、自宅前から中継を行ったりしないようメディアに注意を呼び掛けた。
「報道ランナー」では、「意識を失っている所を家族に発見され」と報道した。ガイドラインをただ守るということより、自殺を誘発するリスクについて想像力を働かせることが大切だと考えている。
委員からの意見
- 厚労省が要請したガイドラインは制作側に認識されていたのか。自殺報道の末尾に一律に相談窓口を紹介しているが、かえって形式的で冷たさを感じるので、工夫する必要があるのではないか。
- 進行中の立てこもりなら分かるが、自殺を伝えるのになぜ自宅で中継する必要があるのか、意味が分からない。
関西テレビからの意見
- 制作現場と編成、法務・コンプライアンス部などが常にアンテナを張り、その時々の最善のガイドラインを作って、時代、状況、事案によって上書きしていかねばならないことを心にとめて取り組んでいく。
3.その他報告/BPO関連
(1)BPO放送倫理検証委員会「大下容子ワイド!スクランブル」に放送倫理違反
テレビ朝日の情報番組で視聴者からの質問をスタッフが自作していた問題について、BPO放送倫理検証委員会は「放送倫理違反があった」とする意見を公表した。意見の中で内部通報制度が機能しなかったことが指摘された。
関西テレビの内部通報制度「コンプライアンスライン」には、社内窓口と外部弁護士の二つの相談窓口がある。通報者に不利益が生じないこと、プライバシーに配慮し秘密を守ること、を対象となる社員やスタッフに毎年周知している。
委員からの意見
- 公益通報の窓口では、相談者から「絶対ばれませんか」と聞かれて「絶対にばれないことは無い」と答えると大体の人は引いてしまうが、「絶対ばれない」とは言えないので難しい。この制度では、社内で顔が割れるかもしれない中でそこにも配慮し、慎重に諸手続きを踏みつつ、制度を実効化しようと工夫しているのは凄いと思う。
(2)BPO青少年委員会「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」見解
BPO青少年委員会は4月、「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について見解を出した。脳機能の研究などを引き合いに、「痛みを笑う演出」は青少年に好ましくない影響を与える可能性があり、マネしていじめに発展する危険性や、いじめの傍観を許容するモデルになる懸念もある、などとしてテレビ制作者に配慮を求めている。
関西テレビは「視聴者が危険や不快を感じないか」「ハラスメントやいじめの構図になっていないか」などの注意点を盛り込んだ独自のガイドラインをすでに作成している。
委員からの意見
- 作り手側は、精神的肉体的に痛みを与えるような表現をみんなが実は楽しんでいると考えているかもしれないが、特に若い世代は本当に嫌がって見ない。ドキュメンタリーにしろフィクションにしろ、皆が救われて幸せになるようなものを求めている。エビデンスより視聴者の感覚を信じたほうが間違わないように思う。
- 作り手側が、今は受けないから止めるというならいいが、外側(BPO)から言われるのは疑問。悪影響の可能性があるというが、「可能性」などと言えばあらゆることに可能性がある。その可能性がどれほどの具体的な可能性なのか極めて疑問。BPOの見解は結論ありきのようで違和感がある。
関西テレビからの意見
- 女性お笑いトリオの「3時のヒロイン」が容姿ネタを止めると宣言した後、メンバーの一人が体調不良で休養したと聞く。体を張って命を懸けてエンターテイメントに邁進している方々に、間違ったメッセージを発してしまうかもしれないので、タレントさんの意見も聞きながら真剣に考えていきたい。
4.オンブズ・カンテレ委員会特選賞の決定について
番組部門…「防災SP揺れる災害医療~コロナ×巨大地震~」
活動部門…「第1回全国招待大学対校男女混合駅伝」
5.委員会直接通知について
この期間における社員等からの直接通知案件は無かった。
次回委員会日程について
2022年8月開催予定
以上