第57回 オンブズ・カンテレ委員会 議事概要

2023年8月31日

日時

2023年8月31日(木) 15時

場所

関西テレビ放送

出席者

難波功士委員長、赤松純子委員、丸山敦裕委員、羽牟代表取締役社長、喜多専務取締役、伊東常務取締役、小杉取締役

1.BPO関連

(1)BPO放送倫理検証委員会「ニュースウオッチ9」審議入り

ワクチン接種後に亡くなった人の遺族の訴えを新型コロナウイルスに感染して亡くなったと受け取られるように伝え、BPO放送倫理検証委員会で審議入りしたNHKの「ニュースウオッチ9」について、当該VTRを視聴し、以下の通り意見交換を行った。

委員からの意見

  • ワクチンの副反応被害を隠ぺいした悪質な事案かと思っていたが、VTRを見ると、都合のいいコメントを探して張り合わせたモラルの低い事案だと思った。
  • 担当者が放送後に取材相手に感想を聞くまで、コロナ感染による死亡とワクチン接種後の死亡の区別をしなかったことは大変な過失。チェック機能が色々設けられていたのにスルーされたのは残念だ。
  • 記者経験の無い編集担当者が取材をするのにフォローが無かったのが不思議。カンテレでは未経験者が取材するケースはあるのか。

関西テレビからの意見

  • 編集マンが直接取材して企画VTRを作ることはカンテレでは基本的にはない。
  • 当該VTRに不自然さはなく、自分がチェックする立場だったとしても見逃してしまうかもしれない。生死に関わるようなデリケートな事案では尚更、現場の一人ひとりがコンプライアンス意識をしっかり持たなければならない。
(2)BPO放送倫理検証委員会「news23」審議入り

JA共済販売の“自爆営業”を取り上げた後、内部告発した職員が退職に追い込まれ、BPO放送倫理検証委員会で審議入りしたTBS「news23」について、以下の通り意見交換を行った。

委員からの意見

  • 公益通報に似た事案であり、通報者の身元が明るみに出ないよう最大限配慮されなければならなかったのに、報道番組において身元が判明したことは深刻だ。一方で、視聴者にしっかり伝えることも報道機関の使命なので、なるべく生々しく伝えようとしてバランスを取り損ねたということなのだろうか。
  • まさに公益通報事案なので、あえて映像にする必要はなかった。リスクの大きさを考えたら安全策をとるべきだった。
  • 関西テレビでモザイクが問題になった「グリ下」の特集では、取材承諾書でモザイクや音声加工について確認は取っていたのか。
  • 10年前に、カンテレでも大阪市の不祥事を取り上げた際、内部告発者と別人の映像を使い問題になった事案があったが、忘れないよう新人教育などで伝えてほしい。

関西テレビからの意見

  • バラエティ制作では、二次利用が多いこともあり、基本的には承諾書を取っているが、報道の取材では、承諾書を取らず、信頼関係の中で話し合い、モザイクや声を変換する合意を取り付ける場合が多い。
  • 承諾書にはモザイクや声の変換までの記載はないが、モザイクの要望があればメモを付けたりしている。相手が未成年の場合、民法の規定を参考にして、15歳以上なら単独で承諾できるが15歳未満は親の承諾を得ている。
  • TBSのケースは公益通報以前に、取材源の秘匿をしながら問題点を伝えるという報道姿勢が貫かれていたのか。記者とデスクでしっかりやり取りできればチェックできる。
  • モザイクをかけて匿名にするほうが取材は楽だが、モザイクなしでしっかり伝えることが基本。
  • 事案によってモザイクをかけるかかけないかは取材を積み重ねた記者には判断できる。しっかり教育を受けた人が取材とチェックを行う、ネットの記事とは違うニュースを作っていきたい。
  • 10年前の別人映像の事案は、内部通報者をインタビューする際、カメラ助手を撮影し、音声のみ本人の声を使った。あってはならないことだったが、TBSの件とは状況が異なる。
  • 継続取材の途中から顔出しOKになる場合もあるので、モザイクをつける約束で顔を撮影することもある。

委員からの意見

  • 実名で顔写真も出すことが原則だと思うので、モザイクでは見ている側にはモザイクと黒味の映像で感銘力に大差はないように思う。モザイクでは、本人を知らない視聴者には黒味の映像と変わらず、逆に、本人を知っている視聴者にはバレるという中途半端な状態になるように思う。公益通報的なものは、黒味にするか、顔を出せないものは使わないか、という2択になるのではないか。
  • 民法上の区切りである15歳は、遺言などの効力を認める権利行使側の基準である。映像承諾には不利益を被る要素があるので、権利行使と同じ扱いでいいのか。10代は意思が薄弱だし、人生の変動期でもあるので、15歳で区切るのは疑問だ。
  • TBSの対応は情報が取れればいいという印象なので、記者のきちんとした姿勢と信頼関係があれば、違う展開があったのではないか。

関西テレビからの意見

  • 15歳以上は単独で承諾としているが、インタビューの中身によって判断しており、承諾があっても放送しないこともある。
(3)BPO放送人権委員会 あいテレビ「鶴ツル」人権侵害認めず

深夜ローカルバラエティーに出演していた女性フリーアナウンサーが、下ネタや性的な言動によってイメージが損なわれた等として人権侵害などを申し立てていた問題で、BPO放送人権委員会は、人権侵害は認められず、放送倫理上の問題もあるとまでは言えないとの見解を公表した。その上で、制作現場における構造上の問題(立場の違いやジェンダーバランス)に触れ、あいテレビ側に職場環境等の改善を要望した。
上記事案について、以下の通り意見交換を行った。

委員からの意見

  • BPOの見解は妥当だと思うが、第三者機関とはいえ、番組にどこまで踏み込んでいくのか難しい。最近はストレートに下劣な番組は減っているが、こういった番組の制作には慎重にあたるべきだ。
  • 人権侵害の有無について「申立人の意に反した行為があったか」という論点から検討に入っているが、バラエティ制作上で起きた問題であり、一般のセクハラ事案とは異なるので、「社会通念上許容される範囲を超えているか」を先に検討するべきだったのではないか。
  • テレビ局側が読み取るべきは、客観的に見て、本人が番組に残ろうとしているのか辞めようとしているのか、であり、申立人の内心に気付けたか、過失があったかという議論は、テレビ局側には酷だ。
  • BPOの見解によると、テレビ局側が申立人の発言をほぼ否定しているが、公表される前提でいくと、局側は徹底的に争う姿勢を取らないほうがいいのではないか。
  • 大御所タレントと他の出演者全員への配慮のバランスの難しさは、どんな番組でも起こり得る問題だ。
  • BPOの見解で「出演者が降板するほどの覚悟が無くても自分の悩みを気軽に相談できる環境の整備」が要望されているが、どのような窓口を想定しているのだろうか。局側が聞いてしまえば「内心を知り得た」と文句を言われるし、窓口が何かしようと動いて万一降板になっても大変だし、対応が難しいと感じる。
  • 所属タレントなら事務所を通したら良いが、フリーランスだと局と直接関わるので、出演者の内部通報窓口のようなものを作れということかもしれない。

関西テレビからの意見

  • フジテレビのテラスハウスの事案を受け、来年4月に民放連の放送基準が改正され、出演者保護についての項目が盛り込まれる予定。新基準では、出演者の悩みに対応する仕組みについても言及されている。

2.視聴者からの意見と対応(6~8月対応分)

(1)「マルモのおきて」再放送中に「あなたがしてくれなくても」の番宣PR

「マルモのおきて」再放送中に「あなたがしてくれなくても」の番宣が入るのは非常に不快、という苦情が視聴者からあり、同時間帯から当該番宣を外す措置を取った。
上記事案について、以下の通り、委員から意見があった。

委員からの意見

  • 社内で議論し建設的な解決がなされているので、対策通り進めればよい。
  • 苦情は40代の母親からのものだが、意味のわかっている大人が勝手に気を回して過敏になっているだけではないか。
  • 局側にとってマイナスに受け取られてはいけないが、今の時点での視聴者への訴求を取るのか、5年後10年後の影響を考えるのかでも損得の捉え方が変わる。
(2)街頭インタビューで自分の意見ではないことを言わされたと苦情

小5女児の親から、娘が街頭インビューでスタジオにいる人に質問があるか聞かれ、「スタジオに口喧嘩が上手い人がいますよ」とアドバイスされて、「口喧嘩が上手になるにはどうすればいいですか?」と発言したが、本人の意見ではないのでカットしてほしい、という要望があった。番組では当該インタビューは使用しなかった。
上記事案について、事務局から、街頭インタビューの注意点も含め報告があった。

3.委員会直接通知について

この期間における社員等からの直接通知案件はなかった。

次回委員会日程について

2023年11月開催予定

以上