第51回 オンブズ・カンテレ委員会 議事概要
2022年2月14日
日時 |
2022年2月14日(月) 午後1時 |
---|---|
場所 |
第6会議室 |
出席者 |
難波功士 委員長、赤松純子 委員、丸山敦裕 委員、羽牟 代表取締役社長、宮川 専務取締役、喜多 常務取締役、伊東 取締役 |
大阪北新地の放火事件を受け、実名報道を主なテーマとして、関西テレビとオンブズ・カンテレ委員との間で意見交換が行われた。概要は以下の通り。
1.実名匿名報道について
(1)北新地放火事件の報道対応
昨年12月に大阪北新地の心療内科で発生した放火事件で、関西テレビは死亡した被害者25人全員の実名を報じた。事件を記録に残すためには実名が原則であること、命の重みを伝えるためにも実名が必要であり、心療内科の通院歴を匿名の理由にすれば却って偏見を生むのではないかと考えたため。
但し実名報道は第一報のみに留め、ネット配信のニュースでは、院長のみ実名で他の被害者は匿名で掲載した。視聴者からは「遺族が匿名を求めているのに被害者を晒しものにした」等、苦情が相次いだ。
実名か匿名かは各社で判断が分かれ、クリニック関係者のみ実名で患者は匿名にした社もあった。
委員からの意見
- ネットのみ匿名にすることについて、どの媒体で出しても最終的にはネットに出てしまうので実効性はあまりないのではないか。
- 記録を残すために実名報道すると言いながら、デジタルタトゥーで残るといけないのでネットには載せない、というのは一貫性が無い。
- 命の重みを伝えるために実名を出すというのは説得力が無く違和感がある。
- すでに存在している偏見を認識していながら、助長してはいけないという理由で名前をオープンにするという理屈は通らないのではないか。
- 匿名報道ばかりになれば国が情報を出さず国民に真実が伝わらない恐れがあるので、遺族感情に反してでも、実名報道は止むを得ない。
- 自分が当事者だったらどう思うか考えろ、という批判がよくあるが、当事者になったら実名どころか報道自体してほしくない人が多数だろう。当事者感情と報道の自由を秤にかけて判断するしかない。
- 初報だけ実名にして後は匿名にするのは中途半端。一度名前が出てしまえば終わりなのだから、実名を出すなら覚悟を持って出してほしい。
- 公共性を担う報道機関だからという理由で許される範囲が狭まっており、一般人の感情は当事者に近い。世間は民放局を報道機関として見ているかというと、そういう見方をする人は少なくなっていると思う。
- 京都アニメーション事件では、安否確認を含め実名報道に公共性があったが、今回は、被害者の通院歴は周囲に知られておらず、遺族の心情を思うと公表する必要があったか疑問。
- 東日本大震災では遺体の写真や映像が報じられなかったことを鑑みると、報道は歴史に残すために全てを記録する、という理由付けは弱い。
関西テレビからの意見
- 過去に、ネット配信で実名を掲載し当事者から削除の要望が寄せられたが、対応不可能だったケースがあった。一旦拡散すると制御できないので、現状では放送とは分けているが、ネットへの対応は今後の課題だと考えている。
(2)「改正少年法の」施行に向けて
2022年4月に施行される「改正少年法」では、18、19歳を「特定少年」として、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた犯罪、強盗罪、強制性交罪等を対象に、実名報道が解禁となる。少年の更生の機会を奪うなどとして日弁連は実名報道に反対している。
関西テレビは、現在、報道センター内で議論しているが、事件の重大性や報道の必要性、またインターネット記事での対応について検討しながら、実名報道をするか、個別の事案ごとに判断していく方向。
委員からの意見
- 未成年だから更生の機会が多く可塑性に富んでいるというのは幻想であり、法改正されたのだから大人と同じ扱いで実名報道するのは当然。
- 実名報道する正当な理由があれば報道すべきだし、更生の余地があるということなら匿名で、個別に判断するしかないだろう。
- 加害者として実名で報道された後、起訴されなかった知人が身近におり、逮捕されたからといってオートマチックに実名で報じるのは疑問を感じる。
- デジタルタトゥーの危険も認識した上で、批判を受けても、こういうポリシーで実名を出していると説明し尽くすことが信頼を獲得する上で最も大切。
関西テレビからの意見
- 報道局内では、デスク間で、改正少年法への対応についてアンケートを取るなどして議論を進めている。当社としての判断基準は作らなければならないが、今後、個々の事案ごとに系列局とも協議して決めていくことになるだろう。
2.視聴者からの意見と対応
(1)「千原ジュニアの座王」(11/5放送)
大喜利で出された「赤ちゃんできたみたい、へのマイナス200点の返事とは?」というお題に対し、視聴者から不快だという苦情があった。
制作側では、放送前に懸念はあったが、番組の構成上カットできなかった、としている。事前にチェック可能であったこと、また不安を感じながら対策を講じず放送したことも社内で問題視された。
委員からの意見
- 放送前に気付いたのは良かったが、コンプライアンスより番組構成を優先してしまったのは今後の課題。優先順位を変えた上で、どう工夫ができるか知恵を絞ってほしい。
- ホモソーシャルの世界で馴れあっているように映ったのではないか。「男同士の絆」のようなコミュニケーションが社会的に嫌悪される時代になっていることを意識しなければならない。
(2)「アバランチ」(10月~12月)
主人公が喫煙するシーンについて、悪影響があるからやめてほしい、という意見が複数の視聴者からあった。
制作側としては、当該ドラマでは喫煙が外すことの出来ない演出表現であった。喫煙シーンへの視聴者の反発が強くなっていることから、なるべく屋外で吸う、近くに副流煙を浴びるような人がいない環境にするなど、配慮をしながら撮影している。
委員からの意見
- 喫煙自体は違法行為ではなくマナー違反もしていないので、気にする必要はない。
- 煙草によって表現できるものがあるなら堂々と表現してもらいたい。
関西テレビより補足
- 2020年の健康増進法改正により、多数の者が利用する施設で原則屋内禁煙となった。スタジオ内で喫煙シーンを撮影するときは、「偽タバコ」を使用している。
3.その他、関西テレビからの報告
■「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」ガイドライン
BPO青少年委員会で審議されている「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について、関西テレビは社としての考え方をまとめたガイドラインを作成、社内に周知した。クリエイティブな演出に必要以上に制限をかけるのではなく、視聴者がどのような印象を受けるのか、一度立ち止まって考えるための指標と捉えている。
委員からの意見
- とても良い内容に仕上がっている。
- いろんなミッションを与えて乗り越える姿をテレビは描く場合が多く、それがイジメととられることがよくあるが、イジメかイジメでないかの境目は、出演者に対する愛情、リスペクトを作り手側が持っているかにある。見る人には伝わる。
- ガイドラインにはまるように小さくなるのではなく、時々少しはみ出して怒られるくらいの感覚で番組を作ってほしい。
■「eラーニング」の実施について
12月~1月に「eラーニング」による「コンプライアンス研修」「情報セキュリティ研修」を実施した。受講完了率は役員・社員が100%、その他スタッフは98.3%となり、過去最高となった。役員・社員の全員が受講完了したのは今回が初。
■オンライン人権研修の実施について
2月3日に「AI(人工知能)時代のメディアと人権~激変する社会情勢とIT革命をふまえて~」と題するオンライン研修を実施した。講師は、近畿大学人権問題研究所主任教授の北口末広氏。社員及び社内で働く外部スタッフ、グループ会社のスタッフなど60名が参加した。
4.オンブズ・カンテレ委員会特選賞の実施予定について
オンブズカンテレ委員会特選賞の募集を1月から実施しており、全社員による第一次投票を経た上で、次回の委員会で、番組部門、活動部門の最優秀賞を決定する。
5.委員会直接通知について
この期間における社員等からの直接通知案件は無かった。
次回委員会日程について
次回のオンブズカンテレ委員会は2022年5月に開催予定。
以上