オンブズ・カンテレ委員会 特選賞の決定について

2023年5月31日

「オンブズ・カンテレ委員会特選賞」2部門の賞が次の通り決定いたしました。

※ 番組部門

特選賞

ザ・ドキュメント「カノジョと私の家族のカタチ」と「報道ランナー」におけるLGBTQ報道

委員の講評

  • さまざまな意見がある同性婚について、ふみこんだ議論をしている点を評価したい。
    取材対象を丁寧に描くことで、同性婚に否定的な立場をとる視聴者であっても、頭ごなしにこの二組のカップルを否定することはできなくなると思う。司法の判断、さらには法改正に関してはまだまだ結論・決着には至らないだろうが、粘り強く取材を続けていただきたい。
  • 同性であること以外はごく普通の幸せな家族の姿をみせていただきました。同性婚の問題では、「相続」や「手術の同意」などの法的な面での問題点がわりとよく挙げられているように思いますが、この番組では、丁寧な取材によって、取材対象者からの、ちゃんと存在を認めてほしい、「これ以上いないことにはしないでほしい」という、より深い心情につながる言葉が自然に引き出されていたのが、私には印象的でした。
  • LGBTQ+といった語は、近年、相当程度人口に膾炙しており、性的少数者への配慮と尊重は、社会において一定の広がりを見せているように思われます。しかし、人々の生活の基盤となっている「家族のあり方」については、法整備も十分ではなく、国内的議論は道半ばにとどまっている印象です。本作品は、この「家族のあり方」について性的少数者の目線から焦点を当てることにより、我々に多くの議論の素材を提供してくれています。その結果、多様な観点からの熟議を可能としうる内容に仕上がっており、この点は極めて高い社会的意義を有するように思います。また、本作品は、ドキュメンタリーのもつ映像の力、当事者の言葉の力により、十分な訴求力・説得力を備えるものにもなっています。当事者の「顔出し」には制作者側との信頼関係が不可欠であるところ、それが可能となった背景には、きっと表層的なファッション感覚にとどまらない、 LGBTQ+問題への制作者側の深い理解があったものと推察されます。こうした番組製作における真摯さや熱意には、敬意を表さずにはいられません。
    さらに、本作品は、この問題の細部における様々な「気づき」を視聴者に与え、多様性の促進に大いに寄与もするものでもありました。本作品が学校等の教材としても提供されれば、本作品の有する社会的効用はより一層高められると思われるので、そういった社会貢献の道も模索していただけると、個人的には嬉しく思います。
※ 活動部門

特選賞

「ドームシアターコンテンツ かぐや姫は未来の月からやって来た」

委員の講評

  • 将来を見据えた面白い試みであり、教育とエンターテインメントの融合、いわゆるエデュテインメントとしての可能性が感じられる。テレビ局が、テレビ画面だけをフィールドとしているわけにはいかない昨今、意欲的な攻めの姿勢を示すものとして評価します。
  • 宇宙開発や月面基地という近未来の科学技術をテーマにして、これを子供たち・青少年にも親しみやすいエンターテインメントにしているところが、広く親しみやすくてよいと思いました。さらに、エンターテインメントという面だけにとどまらず、JAXAの名誉教授の解説という科学的な裏付けもあることにより、科学の好きな子供たちが、宇宙や月面に対して、より強い関心を持つきっかけにもなりそうで、非常によいと思いました。
  • 近年は、YouTubeなどでも各種コンテンツの発信が行われ、放送局の存在意義が改めて問われる状況となっています。この点、放送局にとって、国民の知る権利に奉仕する情報提供が重要であることは言うまでもありませんが、他方で、放送技術や映像技術の高度化も、放送局の役割として従来より期待されてきた点でありました。
    本活動は、現実世界と仮想世界とを融合して新しい体験を作り出す技術としてXRを活用し、放送局でなければできないような高度の技術水準を示すものとなっています。
    また、それにとどまらず、番組制作においてテレビ局が培ってきた演出のノウハウを活かして、高いエンタテイメント性を伴ったコンテンツの製作を行っており、さらに、作品内では月面開発・宇宙探査についての科学的な解説も行われるなど、本活動においては、娯楽的価値だけではなく教養的価値を含んだ作品の提供がなされています。
    このような意味で、本活動は、関西テレビの技術面・内容面の両面における能力の高さを示すものとなっており、テレビ局の存在意義を改めて世間にアピールする内容となっている点で、非常に秀逸な活動だったように思われます。
表彰について

5/31(水)のオンブズ・カンテレ委員会後に行われた表彰式で、各部門の特選賞作品・活動の担当者に、賞状、副賞目録を授与しました。

以上