番組審議会 議事録概要

No.668 2025.10.9

「ザ・ドキュメント 私はナニモノ?~中国残留邦人の80年~」 (8/29放送)について審議

放送日時
2025年8月29日(金)
25:15~26:20
視聴率
個人全体 0.5%(占拠率11.7%)
オブザーバー
報道情報局 報道センター
プロデューサー
宮田 輝美

ディレクター
司紫瑶

参加者

委員

委員長

上村洋行(司馬遼太郎記念館 館長 司馬遼太郎記念財団 理事長)

委員長代行

難波功士(関西学院大学 社会学部 教授)

井上章一(国際日本文化研究センター 所長)※
上野信子(ジャトー株式会社 執行役員 関西国際交流団体協議会 理事)
黒川博行(作家)
高江洲ひとみ(弁護士)
通崎睦美(木琴奏者)
中村 将(産経新聞社大阪本社 大阪代表補佐兼編集局長兼写真報道局長)
早嶋 茂 (株式会社旭屋出版 代表取締役社長)

(敬称略50音順) ※オンライン出席

関西テレビ

岡 宏幸 代表取締役社長
西澤宏隆 取締役
乾 充貴 総合編成局長
南 知宏 制作局長
柴谷真理子 報道情報局長
小川悦司 スポーツ局長
油野邦彦 総合技術局長

議題

  • 2025年4月から9月までの番組種別・種別毎の放送時間、CM総量の結果報告、10月改編及び放送番組種別などの報告
  • 局に寄せられた視聴者からの意見苦情等の概要(9月分)報告
  • 審議番組「ザ・ドキュメント 私はナニモノ?~中国残留邦人の80年~」
    (8/29放送)
  • その他 番組全般、放送に対するご意見、質問等

第668回番組審議会では、2025年4月から9月までの番組種別・種別毎の放送時間、CM総量の結果報告、10月改編及び放送番組種別などの報告のあと、9月分の視聴者対応報告、そして、「ザ・ドキュメント 私はナニモノ?~中国残留邦人の80年~」(8/29放送)について審議された。委員からの意見は下記に記載。

 画像中央  中国から永住帰国した頃の重光孝昭さん(当時45歳)
画像中央  中国から永住帰国した頃の重光孝昭さん(当時45歳)
番組概要

「ザ・ドキュメント 私はナニモノ?~中国残留邦人の80年~」(8/29放送)

1945年8月15日。終戦の日から闘いが 始まった人々がいる。
第二次世界大戦中、中国東北地方(旧満州)に渡った約27万人以上の日本人は、終戦とともに敵地に置き去りにされ、祖国を目指す過酷な逃避行が始まった。厳しい寒さと飢えの中、命だけでもと預けられた子供たちは「中国残留孤児」と呼ばれた。
1972年に日中の国交が回復。大人になった「孤児」たちは続々と日本へ「帰国」した。日本の言葉も、生活習慣も、生みの親も知らぬままー。
中国残留邦人1世、重光孝昭さん(86)は6歳の時、満州で終戦を迎えた。実の母の記憶も、戦争の記憶もおぼろげだ。中国人の養父母に育てられ、中国語を話す。それでも学校や会社では「日本人」「小日本鬼子」と罵られ続けた。1984年に帰国するも、日本社会は普通に日本語を話すことができない重光さんを「普通の日本人」とは認めてくれない。
でも、普通の日本人ってなんだろう。自分はナニモノなのだろう。
その問いは80年の時を超えて連鎖する。
東京の大学に通う中村小晴さん(18)は中国残留婦人4世。曾祖母が戦時中満州の病院で働いていた。小晴さんは日本で生まれ育ったけれども、心の中には確かに「中国」がある。
自分は戦争がないと生まれてこなかった。自分はここにいて良いのだろうか。
小晴さんは曾祖母の足跡をたどるため中国・大連に渡り、自分自身を見つめ直す。
2つの国の狭間で揺れる人々の80年を見つめた。

委員からのご意見

  • 戦後80年という節目に、中国残留邦人とその子孫に焦点を当てたことは非常に意義深く、歴史の継承と記録として価値がある。
  • 重光さんの人生を通じて、戦争が個人の人生に与える影響の深さが伝わった。
  • 重光さんと中村小晴さんという異なる世代を取り上げたことで、戦争の影響が世代を超えて連鎖していることが視覚的に伝わった。
  • 重光さんの「日中国交正常化がうれしかった」という言葉にはリアリティがあり、視聴者の心に残ったであろう。
  • 入社2年目の若手ディレクターが、自身のルーツやアイデンティティの悩みを出発点にして番組を企画・制作したことに対して、挑戦的で真摯な姿勢が感じられた。
  • 2人の主人公を同時に扱ったことで、情報が過多になり、どちらの物語も深掘りが不十分だった。
  • 重光さんの家族の背景や中村さんの内面の変化など、もっと掘り下げてほしかった。
  • 「私はナニモノ?」というタイトルの片仮名表記や、最後のナレーション「選択を強いられる人がいる」に対して、意味が曖昧で伝わりづらい、あるいは誤解を招く可能性がある。
  • 登場人物の関係性や背景が十分に説明されておらず、視聴者が混乱する場面があった。特に中村さんの家族構成や中国語の習得経緯など、視聴者が感情移入しやすくなる情報が不足していた。
  • 中村さんが中国を訪れる場面で、村人の視線を「意味ありげ」に描いたことや、番組側が彼女の行動を誘導しているように見える点に違和感を覚えた。
  • 番組中にディレクターが映り込む場面がありながら、その役割や立場が明示されておらず、不自然に感じられた。
  • YouTubeでの公開により、外国人視聴者にも届いている点が評価され、ドキュメンタリーが国籍や世代を超えて共感を呼ぶ可能性がある。

    上記のご意見への返答

    ●『私はナニモノ?』というタイトルは当初「私は誰 我是誰」というタイトルを提案していたのですが、NHKに同名のドキュメンタリーがあることが判明し、混同を避けるために変更しました。「ナニモノ」を片仮名にしたのは、アイデンティティの曖昧さや国境を越えた感覚を表現するためで、片仮名にしたほうが表現できるのではないかというふうな感覚的なもので、深い意味はそれほど正直ございません。
    ●当初は4組+司ディレクター本人の構成でしたが、複雑すぎて崩壊の恐れがあり、最終的に2組に絞りました。
    ●「選択を強いられる人がいる」というコメントは、戦争になれば、実際にはいろんなルーツの人がその国にはいるであろうに、日本人なら日本人、ウクライナ人ならウクライナ人ということを選ばなければいけないという意味での選択を強いられる人がいるというコメントだったのです。しかし、十分に伝わらず、誤解を招いたことを反省しています。

    報道情報局報道センター
    プロデューサー 宮田 輝美

委員のご意見を受けて

報道情報局 報道センター
ディレクター 司 紫瑶
戦争経験者の声を残すこと、それに加えて現代に生きる誰もが実感を持って不戦の誓いを立てること。これらがテーマではありましたが、ナレーションの運びや構成で、きちんと初見の視聴者に伝わるようにできているか、確認し取捨選択していくことの大切さを痛感しました。メディアとしてなぜ戦争を伝え続けなければならないのか、その意義にも考えを巡らせる大変貴重な機会となりました。今後の番組制作に活かして参ります。ありがとうございました。