番組審議会 議事録概要

No.673 2026.4.9

ザ・ドキュメント「氷の上で、生きていく—ミラノへの11年—」 (3/22放送)について審議

放送日時
2026年3月22日(日)
16:00~17:00
視聴率
個人全体 0.7%(占拠率4.0%)
オブザーバー
報道センター
ディレクター
縄田 丈典

参加者

委員

委員長

上村洋行(司馬遼太郎記念館 館長 司馬遼太郎記念財団 理事長)

委員長代行

難波功士(関西学院大学 社会学部 教授)

*井上章一(国際日本文化研究センター 所長)
上野信子(ジャトー株式会社 執行役員 関西国際交流団体協議会 理事)
黒川博行(作家)
高江洲ひとみ(弁護士)
通崎睦美(木琴奏者)
*中村 将(産経新聞社 東京本社 正論調査室室長)
早嶋 茂 (株式会社旭屋出版 代表取締役社長)

(敬称略50音順)*はオンライン出席

関西テレビ

岡 宏幸 代表取締役社長
西澤宏隆取締役
柴谷真理子 報道情報局長
乾 充貴総合編成局長
油野邦彦総合技術局長
南 知宏制作局長
小川悦司スポーツ局長
青龍博文コンプライアンス推進局長

議題

  • 2025年10月から2026年3月までの番組種別及び放送時間、CM総量、4月改編及び放送番組種別などの報告
  • 局に寄せられた視聴者からの意見・苦情等の概要(3月分)報告
  • 審議番組「ザ・ドキュメント 氷の上で、生きていく—ミラノへの11年—」(3/22放送)
  • その他(番組全般、放送に対するご意見・質問等)

第673回番組審議会では、議題1、2の報告の後、「ザ・ドキュメント 氷の上で、生きていく—ミラノへの11年—」(3/22放送)について審議された。委員からの意見は下記のとおり。

 「ザ・ドキュメント 氷の上で、生きていく—ミラノへの11年—」(3/22放送)
番組概要

「ザ・ドキュメント 氷の上で、生きていく—ミラノへの11年—」(3/22放送)

「人生終わったと思ったところから俺の人生が始まった」ミラノ・コルティナパラリンピック・パラアイスホッケー日本代表エース伊藤樹選手の11年 希望と奇跡の物語
ナレーション:松坂桃李
パラリンピック日本代表・伊藤樹(20)。

8歳の時、母・紅子さんが運転する車でアイスホッケーの練習に向かう途中、交通事故に巻き込まれ脊髄を損傷。車いすでの生活を余儀なくされた。
「足じゃなくて手だったら良かったのに」事故の後にこぼした言葉だ。
そんな樹が9歳の時出会ったのがパラアイスホッケー。
「パラリンピックに出場する」という夢ができた。
紅子さんも事故で足に大けがをしたが、どんな時間でも車の送迎を欠かさなかった。「運転は怖いけど、やりたいというからやらせたい」
樹の夢は紅子さんの夢になった。
中学生になると日本代表合宿に参加するなど着実に成長し、日本のエースになる。しかし4年前の北京パラリンピックでは年齢制限で予選大会にさえ出られず、チームも敗れた。
北京で金メダルのアメリカ代表との合同練習では一点も返せず、世界の壁の高さを知った。高校卒業後、樹は母の元を離れ、単身でアメリカのチームに移籍。
異国の地で一人修行する道を選んだのはミラノパラリンピックに挑むためだ。
そしてミラノパラ出場権をかけたノルウェーでの最終予選。
6カ国総当たりで上位2カ国が出場権を獲得できるが、初戦の韓国戦で敗れ、後がなくなる。2試合目も試合終了間際までリードを許し、敗退が頭をよぎった時、ドラマが…。試合の後、樹はつぶやいた。「ホッケーの神様がまだ俺らにホッケーしてもいいって言ってくれた」
コーチからも本音がこぼれる。「伊藤樹にチームの命運をかけた」
取材班は下半身不随になってから夢をかなえるまでの11年間の歩みを克明に記録した。これは夢に向かって突き進む一人の青年とそれを支える家族の愛を描く、「希望と奇跡の物語」だ。

委員からのご意見

  • 幼少期からの映像を重ねて成長を描く導入が秀逸。開始直後から引き込み、歩みを追体験できた。冒頭設計の巧さが際立つ。終始見応え十分。
  • 素材の取捨選択が巧みで、知りたい情報が適切な順で出る。過不足が少なくテンポ良く見られ、視聴の負担が軽い。情報の出し方が上手い。
  • 取材開始の動機や作り手の視点が画面から見えにくい。主人公選定の理由や狙いを示すと、説得力と理解が高まる。
  • 車の運転方法を言葉でなく映像で示し、疑問を自然に解消。説明を押し付けない“見せる”工夫が親切で、理解の導線が滑らか。
  • 放送がパラリンピック後だった点に疑問。事前放送なら認知・機運を高められた可能性があり、タイミングの検討には余地がある。
  • 母子中心の描写が共感を呼び、距離感の変化や見送りの所作が丁寧。母の視点が感情移入を助け、余韻が深まる。
  • 感動を強制しない抑制的トーンで、弱みや迷いも描写。過剰なドラマ化を避けたバランスが良く、安心して見られる。
  • 松坂桃李の落ち着いたナレーションが多弁にならず、映像を支えた。語り口が品位を保ち、視聴後の余韻を整えている。
  • 4年前の前作と重なる映像・構成が多く、既視感や“かぶり”がある。初見には親切でも新味が薄く、続編の見せ方に課題が残る。
  • 私生活と競技場面の切替が鮮やかで、氷を削る音から試合へ入るなど映画的手法が効いた。メリハリが強く飽きさせない構成である。
  • 海外レジェンド選手との交流の掘り下げ不足か。国際レベルの厳しさや評価の根拠を深めれば、競技性がより際立つ。
  • 渡米資金のめどを契約内容など具体情報で補い、『どうした?』を回収して納得感を強化していた。
  • 過去から現在へ時系列で進めた構成が最善かは疑問。現在起点や交差構成なら重複を減らし深掘りできた可能性がある。
  • パラアイスホッケーへの関心を喚起し、視聴者に勇気や元気を届ける狙いが自然に伝わった。見終えた後も注目したくなる。
  • ブランド露出や権利処理(映り込み等)が気になる。誤解を避けるため、支援関係や扱いの透明性補足があっても良かった。
  • 8年以上の長期密着で築いた信頼関係が、試合前の葛藤や試合後の素直な言葉、母子の表情を引き出したのではないか。カメラ前でも自然体で、緊張の瞬間が撮れている。短期取材では得にくい記録性が放送局の強みとして出ていた。

    上記のご意見への返答

    ●前任担当者が新聞記事で樹さんを知り、事故後の時期に「取材してみよう」と判断して密着が始まりました。夕方ニュース内の約10分特集で、樹さんと母・紅子さんを計6回ほど放送しており、その積み重ねが継続取材の土台になっています。
    ●パラアイスホッケーは足に障害があれば大小を問わず参加でき、車いすバスケのような障害点数で均衡を取る仕組みは現状ないため、樹さんは大きなハンデで同じ土俵で戦っています。
    ●パラリンピック前に、事前放送でのブームアップも検討した一方で、11年追った夢の舞台に「立つ瞬間」まで撮り切って伝えたい思いが勝り、大会後放送を選びました。
    ●現在起点で過去を振り返る構成も検討しましたが、初見の視聴者には分かりにくいと判断し、分かりやすさを優先して時系列に整理しました。

委員のご意見を受けて

報道センター
ディレクター 縄田 丈典
今回約11年分の取材をまとめるにあたり、樹さんや紅子さんの魅力をきちんと伝えるにはどのシーンを使うのが良いかどのような構成にするのか大変悩みました。そんな中で委員の皆様からご意見を頂戴し、これまでの取材が報われるような気がしました。取材を続けてきてよかったと改めて感じることができました。頂いたご意見を今後の番組制作に活かしてまいります。この度は貴重な機会を頂きありがとうございました。