番組審議会 議事録概要

No.631 2022.2.10

『報道ランナー防災SP ぼうさいかぞく』について審議

放送日時
2022年1月10日(月)15:57~16:57
視聴率
個人全体(報道ランナー)
関西2.6% 占拠率(14.0%)
オブザーバー
報道局 報道センター プロデューサー
豊島 学恵
報道局 報道センター 記者
宇都宮 雄太郎

参加者

委員

委員長

上村洋行※(司馬遼太郎記念館 館長 司馬遼太郎記念財団 理事長)

委員長代行

難波功士(関西学院大学 社会学部 教授)

井上章一(国際日本文化研究センター 所長)
金山順子(適格消費者団体ひょうご消費者ネット 専務理事 消費生活アドバイザー)
黒川博行※(作家)
島田 耕(産経新聞社大阪本社 編集局長)
高江洲ひとみ(弁護士)
通崎睦美(音楽家 文筆家)
早嶋茂(株式会社旭屋書店取締役会長)

(敬称略50音順)

関西テレビ

羽牟正一※ 代表取締役社長
宮川慶一※ 専務取締役
大澤徹也※ 取締役
岡 宏幸※ コンテンツデザイン局長
小杉太二※ 報道局長
小寺健太 制作局長
西澤宏隆 スポーツ局長
松尾成泰※ コーポレート局長
横山和明 制作技術統括局長

※印…対面による出席、他はオンライン(zoom)出席

議題

  • 当社からの報告
    ・年末年始番組視聴率概要報告
    ・局に寄せられた視聴者からの意見苦情等の概要(1月分)報告
  • 審議番組 「報道ランナー防災SP ぼうさいかぞく」
    (1/10月15:57~16:57放送)
  • その他 番組全般、放送に対するご意見、質問等

第631回番組審議会は、新型コロナウイルス感染防止のためオンラインと一部対面による開催とした。前回の番組審議会にて委員から出された「ネット時代への向き合いや視聴者意見のデータ収集等」についての質問に対し、社長及びコンテンツデザイン局長より回答した。また、1月の視聴者対応報告も行った。ほか審議番組「報道ランナー防災SP ぼうさいかぞく」については、委員からさまざまな意見が出された。

 報道ランナー防災SP ぼうさいかぞく
番組概要

『報道ランナー防災SP ぼうさいかぞく』
災害時、行政やメディアの避難の呼びかけが、なかなか伝わらない。「逃げて」という呼びかけが、なぜ人を動かすことができないのか。災害に際し、人はどうしたら適切な行動ができるのか。今回は「防災教育」をキーワードにした防災特番で、全員が「防災士」の資格を持つ家族の活動を追ったドキュメント。

今回の防災企画はどうだったか

  • 今年の防災番組は例年とは少し切り口が違っていた。今までは危機感を持たせるための企画が主で、今回は全体的に比較的落ち着いたトーンで、教育で防災意識を変えていく取り組みを、一家全員が防災士の資格を持つ出水さん家族の活動を通して表現しているという点が新鮮に映った。
  • 防災意識というのは一般の人にはない。もっと防災意識を持てとか、そういうふうに番組の中で主導していくというのは、本当にこれは難しかっただろう。
  • ひとつのテーマに沿うことでぶつ切り感もなく、VTRを集中して見ることができ、今回のスタイルは非常によかった。
  • いつもの防災特番と空気感が違い、何か緩い雰囲気になっていた。伝えようとしている内容はすごくいいし、若い世代に防災意識をどう根づかせるかということを実践していくことは大切だが、全体を通じてインパクトが弱く見終わった後に印象がぼんやりしたものになってしまったのが残念。

    上記のご意見への返答

    派手な映像に頼ることなく、出水家の取り組み、その影響を受けた人たちの細かい表情とか、その後の影響を大切にしていこうという優しいつくりを心がけたというのが、インパクトが薄かった原因なのかと思います。

    報道局記者・宇都宮

  • 目先を変えたい、スタイルを変えたい、あるいはそういう意識を持って教育という問題に取り組んでいくという姿勢は評価する。ただ、この防災意識が高い家族の紹介に終わるのか、その家族の行動から防災意識を高める提言みたいなものを発信していくのか、その辺がぼやけて曖昧になっていた。
  • 教育というテーマは興味深く視聴した。大学、中学、小学校、幼稚園と、防災に関する教育現場をそれぞれ見ることができたのは非常によかった。小学校の話で、家庭と学校で防災教育を押しつけ合っているという発言があって、今後子どもにどう接していったらいいのかと考えさせられた。
  • この番組は「1カ月で作った」ということだが、新聞の連載企画ならば同じテーマで3~4カ月は要する。「防災教育」という重要なテーマを短期間で作ったため、画面から内容の薄さが滲み出てくるような感じがした。本来ならば、国や自治体の防災教育の現状を正確にまとめ、海外の事例を調べ、東日本大震災や阪神大震災以降、防災に対する考え方、教育はどう変わっていったのか、ということを紹介する必要があるのではないか。

防災は誰が伝えるべきか

  • 当事者性を持たない人間が防災教育にあたったときに、どれだけ人を動かせるのかというのは疑問。それが一番大きな印象としてある。
  • 被災体験のない人は、防災や災害について語れないのか、語っても説得力がないのかというところの問題意識があってこういう内容にしたということだが、伝える効率となると、人が興味を持つのはその人の当事者性や個人的な体験というところが一番大きい。そこが入り口になって防災に興味を持つというのが効果的では。

家族についての説明

  • 防災意識のあるなしは、どこでどういうふうに暮らしているかによって、人それぞれ違ってくる。この番組に登場する家族はどんなところで暮らしているのか気になったがラスト間際で種明かしがされ、この家族が食料備蓄にこだわるのは、マンションの高層階だからだと思った。ただ、こういう肝腎のところを最後に種明かしされるというのはどんなものか。
  • 出水さん一家にリアリティがない。お父さんの職業は何でしょうか。最低限でいいからこの人たちのリアリティをもう少し中に入れてもらったら、もっと番組が締まると思う。
  • 防災は重要であり、防災を学ぶこと(防災教育)は大切だということは大前提として、疑問符と違和感の多い内容だった。出水さん一家がなぜこのような活動を始めたのかの説明がないと、この家族に寄り添うことができず、彼らの行っていることも腹に落ちない。

    上記のご意見への返答

    お父さんの季治さんは、行政関係の団体で防災についての指導等をする仕事をされています。その辺がきっちりと出せていなかったと思います。

    報道局プロデューサー・豊島

防災教育は誰がするべきか?

  • 結局、学校と家庭が防災教育の責任を押しつけ合っているのではないかという現状を説明されていた。だから、社会で学ぶしかないという結論が導き出されたのかと思った。
  • コンセプトは理解できるものの、地域の人が学生に対して「いざとなったら頼れるのは小学校高学年から大学生」と述べる一方、両親は「自分の力で何とかしろ」というのは、共助なのか、自助なのか。それとも、多様な意見を言いたかったのか。
  • 番組の唯一の救いは、釜石で語り部として活動されている菊池のどかさんの存在。彼女の「(防災は)1人、2人でやるものではない、学校でやるものでもない、地域でやるものでもない、みんなで協力し合ったから助かった」という言葉は自然と心に伝わってきた。
  • 防災はどこで習うのかと親に聞いたら、学校だと答える、学校で聞いたら、それは親、家庭だと言っていた。ここに問題があるということならば、「報道ランナー」らしく、いろんな角度から検討を加えて、識者らの意見やデータも集めて、何でこんなことになっているのか、子どもへの防災教育がなぜ必要なのかということにまでも言及するような番組をあらためてつくってもらえたら。

番組全体について

  • これまで、「報道ランナー」の防災特集はほぼ評価が高かったと思う。被害を減する減災や、情報伝達ということをバトンに例えて伝えるとか、あるいはコロナ禍の状況を取材したとか、いろいろあった。確かにこの「報道ランナー」の防災番組はいい。そういう思いの中で、今回の「ぼうさいかぞく」を見た。
  • 釜石の取材にリアリティがあった。みんなが協力したから助かった命。これは全くそのとおりだと思った。
  • 東北の取材はすごくよかった。この語り部の、菊池のどかさんは実際体験しておられるのでやはり深みがあった。
  • 全体として難しい番組だった、取材が難しい番組であったということを強く思った。でも、真っ当な主題と編集でうまく番組がまとめられていた。
  • そもそも防災士というのはどういうものなのか。小学校4年生のときに最年少で合格したという長男というが、どんな内容のもので、どういうものを問いかけているのかとか。そういうものがはっきりわかれば、もっと伝わりやすくなったのではないか。
  • 気になったのが、大阪市立小学校のアンケート回収状況。134校の学校にアンケートを試みて、回答があったのが教員39名。回収率30%程度というのはどうなのか。どんな項目を提示して、どんな問いかけ方をしたのかも気になった。
  • 出水さんが気の毒だと思うのは、防災士として声を枯らして話をしても、自分たちが生きている間に必ず報われるという保証はないということ。むしろ大きな地震が来ずに、報われないで済めばそのほうがいいわけで、それを承知で続けているのは、考えようによってはしんどい仕事をしていると思う。
  • 高齢者にどうやって話を伝えるかというのは非常に大きな問題。今回のような若年層を対象にした防災教育というのはもちろん必要だが、毎年のように来る台風で、田んぼを見に行って用水路に落ちたとかは高齢者で、その人たちにどう防災意識を植え付けるかというのも併せて考えてもらう必要がある。
  • 始まりの映像はパントリーに収められた食料品をアップするところからだったが、パントリーの奥にカメラが仕掛けられていて、テレビ制作の小細工を見せられたように思った。
  • 映像を通しての静止画の迫力をすごく感じた。親子が震災後の町を歩く写真、中学生が小学生の手を引いて避難する写真、特にお子さんを引いて歩くお母さんの写真はグッとくるものがあり、それは私が考えを変えるきっかけになるような写真だった。それを感じたときに、テレビはすごいとあらためて思った。テレビは動画の迫力、映像や音で、臨場感を与えるが、一方で静止画も文字も発信することができる。テレビはすごいパワーを持ったコンテンツ。テレビの可能性はいろいろあるのではないか。
  • この防災特番というのは、たとえ視聴率が上がらなくてもやらなければいけない、必要な分野だと認識をしている。

委員のご意見を受けて

報道局報道センター プロデューサー
豊島学恵
「防災教育」に取り組む家族について、委員の皆様から「なぜ彼らが熱心に防災に取り組むのか分からない」と指摘を頂きました。私たちは阪神・淡路など大災害の記憶を共有しています。また、恐ろしい南海トラフ地震が、近く起きると言われています。それでも、「震災で家族を失った」といった分かりやすい動機なしに防災に熱中している人を見ると、なぜかモヤモヤするのです。その辺りを乗り越えるカギは「教育」かも…との思いもあっての番組テーマでしたが、うまく掘り下げられなかったことが悔やまれます。貴重なご意見を今後に活かします。ありがとうございました。
報道局報道センター 記者
宇都宮雄太郎
ことしのテーマは防災教育。大切なことであるにもかかわらず、ニュースで取り上げられることは、ほとんどありません。去年、制作に携わった災害医療の番組に比べ、今回は形式を大きく変えました。委員の方々からは賛否のご意見とともに「新しい試みを続けてほしい」との声をいただきました。取材・編集ともに難しいテーマでしたが、チャレンジしたことに悔いはありません。一人でも防災を我がごとにしてもらうため、精進するのみです。