関西テレビ放送株式会社


番組審議会
No.534 2012.4.12
関西テレビ
イチからわかる放射能
出席の委員
森下俊三・西日本電信電話相談役(委員長)/井上章一・国際日本文化研究センター教授/上村洋行・司馬遼太郎記念館 館長/大久保育子・消費生活専門相談員/片山雅文・産経新聞大阪本社 編集局長/後藤正治・作家/瀧藤尊照・四天王寺大学教授/難波功士・関西学院大学社会学部教授/平野鷹子・弁護士(50音順)
関西テレビ
福井澄郎 代表取締役社長/下室二郎 専務取締役/安河内茂 常務取締役/宮前周司 取締役/堤田泰夫 取締役/谷口泰規 編成局長/菅沼満寛 制作局長/大道一郎 報道局長/毛利八郎 スポーツ局長/尾谷牧夫 制作技術局長/濱 星彦 東京コンテンツセンター長

4月の番組審議会では、冒頭で平成23年10月から平成24年3月までの6か月間に放送した番組について、種別分類の結果とそれぞれの放送時間を報告した。
続いて、健康情報を科学的に正確にかつわかりやすく伝える試みとして続けられてきた『S-コンセプト』の最終作、『みんなの大疑問!イチからわかる放射能』について審議が行われた。

今われわれが一番知りたいことを正確に、親しみやすい形で伝えている。これはテレビの大切な役割の一つだ。
復興に向けて農業、漁業の分野でどのような取り組みがされているのかきちんと報告されていて、放送のタイミングも良かった。
まじめな内容にバラエティー的要素を交える場合、ともすれば誇張や虚偽が紛れ込みがちになるが、この番組ではそのあたりがバランスよく処理されていた。
大げさに伝えられがちな放射能の問題について、本当はどのような心配をすべきなのかわかりやすく説明されていた。
福島での取材から食物の安全のために力を尽くす研究者の気概が伝わってきて頭が下がる思いだ。
チェルノブイリ、ウクライナの取材を通して、不安の解消には厳しい検査が非常に大切だということがよくわかった。
福島の生産者や研究者が食品の安全のために懸命に努力しているということが伝えられていた。消費者にとって重要な情報だと思う。
非常に勉強になる番組だったと思うが、取材VTRを流してその合間にパネラーがコメントして、という情報バラエティーのフォーマット通りだったことに不満を感じる。番組のスタイルについてもっと冒険をしてほしい。
放射能は目に見えないということが不安を増大させる要因なので、それを目に見える形にする工夫がもう少しあればよかった。
街頭インタビューの対象が中年以上の女性ばかりだったのは、このような女性が知識に欠けていて、理解力も劣るという偏見の表れではないか。
広島、長崎の被爆者について全く触れられていなかったのは何らかの配慮があった結果なのか。だとしたら、そのような配慮が被爆体験の風化を進めてしまう側面もある。
今後は被災地が悩んでいる風評被害について、正しい情報を伝えてほしい。
サイエンスの世界を世の中にわかりやすく伝える翻訳作業としての科学番組に今後も取り組んでいってほしい。
原発事故発生直後の報道についての自己検証番組の制作を望みたい。

放射能の危険性についての判断に関し、さまざまな感想、評価が寄せられた。

食品の安全基準は社会的な合意に基づいた数字で、消費者の安心とは別の問題だということがよくわかった。
低線量の放射線について安全か危険かを決めつけず、影響はまだわからないとしたのは、誠実な態度で評価できる。
放射能のリスクに対する考え方は年齢、性別、生活環境などによって大きく異なるので、街頭インタビューの対象は中年女性だけではなくもっと幅を広げるべきだ。
番組を通じてのテーマになっている「放射能を正しく怖がる」という言葉は情報を提供する側の司会者よりも、生活者を代表する立場であるスタジオ出演のタレントから語られたほうが納得できたと思う。
「正しく怖がる」ことを説く仙台の研究者が、自分は安全だと考えているものの、家族が心配するので孫は遠くに避難させていると語っていたのが印象深い。この言葉をカットせず伝えたことを評価したい。
チェルノブイリの住人が口にした「放射能を気にしないほうが長生きできる」という言葉が心に残った。ときにはこのような諦観も必要なのかもしれない。

番組審議会に出席して

プロデューサー:安東忍
「科学記事を書くことは、翻訳作業である」という委員の発言に深く共感しました。私たちは、安易に「シロか?クロか?」と答えを求めてしまいますが、科学の世界には様々な濃さの「灰色」が存在しています。今回の番組では、科学者と一般人の間をつなぐ「翻訳家」としてのマスコミの役割について深く考えさせられました。


ディレクター:豊島学恵
東北大学教授が語った「嫁が孫を連れて仙台から避難し、そこまでしなくていいと言うのに、今も孫にペットボトルの水を飲ませている」という話の印象深さを、複数の委員から指摘いただきました。「専門家の横にいる人さえ正しく怖がるということは難しい」ということを暗に示す(「正しく怖がろう」と連呼するこの番組の中ではやや浮いた)一言を編集段階でカットしなかったことについておほめいただき、科学をテレビで扱うことの難しさを改めて感じました。危険か?安全か?それを決めるのは社会であって、科学は判断の材料を提供するだけ---分かりやすさを優先してしまいがちなテレビ番組の中で科学をどう扱うのか、改めて問われた審議会でした。



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