番組審議会 議事録概要

No.652 2024.3.14

「ザ・ドキュメント 生かされた理由 ~京アニ事件の深層~」(2/9放送分)について審議

放送日時
2024年2月9日(金)
25:25~26:25
視聴率
個人全体 関西地区0.9%(占拠率20.3%)
オブザーバー
報道局報道センター ディレクター
宇都宮雄太郎

参加者

委員

委員長

上村洋行(司馬遼太郎記念館 館長 司馬遼太郎記念財団 理事長)

委員長代行

難波功士(関西学院大学 社会学部 教授)

井上章一(国際日本文化研究センター 所長)
上野信子(ジャトー株式会社 顧問関西国際交流団体協議会 理事)
黒川博行(作家)
高江洲ひとみ(弁護士)
通崎睦美(木琴奏者)
中村 将(産経新聞社大阪本社 編集局長兼写真報道局長)
早嶋 茂 (株式会社旭屋書店 相談役)

(敬称略50音順)

関西テレビ

羽牟正一 代表取締役社長
喜多 隆 専務取締役
和田由美 コーポレート局長
小川悦司 制作局長
横山和明 制作技術統括局長
坂口隆晴 コンテンツデザイン局 総合編成部長
柴谷真理子 報道局報道センター 報道番組部長
野村 亙 スポーツ局スポーツ部長

議題

  • 局に寄せられた視聴者からの意見苦情等の概要(2月分)報告
  • 審議番組「ザ・ドキュメント 生かされた理由 ~京アニ事件の深層~」
    [2/9(金)25:25~26:25]
  • その他 番組全般、放送に対するご意見、質問等

第652回番組審議会では、2月の視聴者からの意見対応の報告と、2/9放送「ザ・ドキュメント 生かされた理由 ~京アニ事件の深層~」について審議され、委員からは概ね良い評価で、かつ様々な意見が出された。
また、「ちまたのジョーシキちゃん」の事案について、あらためて番組審議会から意見書が提出されたことに対し、当社としての改善に向けた取り組みを報告。
ほか、「関西テレビ放送人権方針」を策定したことについても報告した。

 「ザ・ドキュメント」
番組概要

「ザ・ドキュメント 生かされた理由 ~京アニ事件の深層~」(2/9放送)
2019年7月18日、社会を震撼させた京都アニメーション放火殺人事件。
ガソリンでスタジオが放火され、建物内にいた36人が死亡、32人が重軽傷を負った。平成以降、最も多くの犠牲者を出した事件は、たった一人の男による犯行だった。
自らも全身の9割以上にやけどを負い、一時は死の淵に立った青葉真司被告(45)の裁判員裁判が2023年9月から始まった。
犯行動機について逮捕当初の取り調べで「小説を盗まれた」と話していた青葉被告。公判の被告人質問で、謎に包まれていた自らの生い立ちや犯行に至るまでの経緯を徐々に語り始める。
複雑な家庭環境だった幼少期・人生の絶頂期・犯罪に手を染め深まる孤立。
孤独と絶望の淵で出会ったのが京アニ作品だった。
関係者への独自取材と裁判の証言から青葉被告の人物像が浮き彫りになっていく──。

委員からのご意見

  • 上田医師がベッドに横たわっている包帯を巻かれた青葉被告に、「少なくともあと4回手術しなくちゃ駄目だよね」と語りかけて、青葉被告が僅かにうなずく。
    あの映像は衝撃的だった。「死に逃げは許さない」最初からブレなかったと上田医師は言っていた。事件の本質がわからなければこれを本当の意味で裁けないし、なぜこういう事件が起きたのかということを解明しなければ、という思いが伝わってきた。上田医師をあれだけ取材できたのもよかった、他社よりも深く取材できたのかなと思う。
  • 青葉被告は、派遣の仕事もうまくいかず、ホームレスになり、雇用促進住宅に入り、ここで京アニの作品「涼宮ハルヒの憂鬱」というアニメに触れた。38歳、京アニの小説コンクールに応募した。ここで応募した小説のプロット、応募数と採用数、このあたりを教えてもらったらもっとリアリティがあるというか、なぜこの青葉被告が京アニを襲撃したかという動機をもう少し深く知ることができるのではないか。
  • 青葉被告が21歳のときに父が死亡。子どもの頃DVを受けた父との関係を青葉被告はどう考えていたのか、ここら辺を少し取材して紹介してほしかった。
  • 「責任能力はありとされた」という形で死刑、最後判決を述べていたが、今回、青葉被告の半生がメインになっているなか、最初に弁護人と検察官の主張も対立していて、結局責任能力ありと判断されたという話のときに、なぜ責任能力ありとされたのかという理由を短くてもいいので入れたほうがいいのではないか。

    上記のご意見への返答

    判決内容は構成上少し短くしてしまったのですが、犯行を逡巡したことなども判決理由として挙げられていました。青葉被告も法廷で逡巡していたことを口にしていたので、構成上入れたほうがよかったのかと感じました。

    ディレクター 宇都宮雄太郎

  • 番組最後の「判決の翌日、弁護人は控訴、向き合い続ける理由がある」というナレーションの意味がわからなかった。向き合う理由があるから控訴した、と言いたいのかなと思うが、ぴんと来なかった。
  • (遺族の)寺脇さんが「第2の青葉さんをつくらないように」と言っていた。そのときに「第2の青葉」と初めは呼び捨てにするかのような言い方をして、少し間を置いて「青葉、さん」というふうにためらいながら言われた。あの間、戸惑いというか、ためらいを捉えたところがよかった。
  • 京アニ事件は、事件のことに集中してしまいがちだが、京アニがどんなものを作ってきたかというのを、わかっていない人もいるし、「パクる」という話も具体的にどういうことなのかというのはあまり報道されていない。その辺を突っ込んでもらえたらと思った。

    上記のご意見への返答

    実際に裁判の中でも、青葉被告が「パクった」と主張するものと京アニ作品の対比みたいなところも紹介されていました。具体的に紹介したほうが、より妄想の度合いもわかるので、何とか映像化できないかを考えましたが、その妄想の度合いにどこまで客観的に報道できるのかという点の難しさもありました。「パクられた」というところが具体的に何なのかというのを示せなかったのかというのは反省点かと思いました。

    ディレクター 宇都宮雄太郎

  • クライマックスはいろいろな見方があると思うが、やはり(遺族の)寺脇譲さんと上田医師が面会するシーンで、上田医師が青葉被告を治療しながら「犯行前に私たちが関わっていたらどうだったか」と聞いたら、青葉被告は「正直やっていなかったと思う」と言ったという。その言葉を聞いて、寺脇譲さんは涙をこらえ切れず泣く場面が強く印象に残った。これが(タイトルの)「生かされた理由」のところにすっとつながったのか、だから、この構成は非常によかったと思った。
  • いいドキュメンタリーだった。青葉被告の生い立ちや家庭環境、背景において、奥さんを失った遺族の寺脇さん、必死に手当てにあたった上田医師、この2人に視点を絞って淡々と進めていったところが非常にわかりやすいし、訴える力が強くなったように思う。
  • 深夜帯に放送されたのが問題ではないか。こういう番組を、深夜帯ではなくて、もう少し多くの視聴者が見る時間帯に放送したほうがよかった。

委員のご意見を受けて

報道局 報道センター
宇都宮雄太郎 ディレクター
「制作者として伝えたいこと」「視聴者に考えてもらいたいこと」
委員の方々からいただいた様々な意見を聞いて、映像表現・ナレーション原稿等に込めた“想い”を、作品全体に落とし込む難しさを改めて実感しました。
事件に関する裁判は今後、控訴審に舞台を移します。いただいた貴重なご意見を励みにして、取材を継続していきます。ありがとうございました。