番組審議会 議事録概要

No.675 2026.6.11

「ザ・ドキュメント 冤罪・甲山事件 山田悦子 半世紀の闘い」(5/29放送)について審議

放送日時
2026年5月29日(金)
25:15~26:30
視聴率
個人全体 0.7%(占拠率15.9%)
オブザーバー
報道センター ディレクター
上田大輔

参加者

委員

委員長

上村洋行(司馬遼太郎記念館 館長 司馬遼太郎記念財団 理事長)

委員長代行

難波功士(関西学院大学 社会学部 教授)

井上章一(国際日本文化研究センター 所長)
上野信子(ジャトー株式会社 執行役員 関西国際交流団体協議会 理事)
黒川博行(作家)
高江洲ひとみ(弁護士)
通崎睦美(木琴奏者)
中村将(産経新聞社 東京本社 正論調査室室長)
*早嶋茂(株式会社旭屋出版 代表取締役社長)

(敬称略・50音順) *はオンライン出席

関西テレビ

岡 宏幸 代表取締役社長
西澤宏隆 取締役
南 知宏 制作局長
油野邦彦 総合技術局長
小川悦司 スポーツ局長
青龍博文 コンプライアンス推進局長
駒井有紀子 総合編成局長
豊島学恵(代理出席) 報道部長

議題

  • 局に寄せられた視聴者からの意見・苦情等の概要(5月分)報告
  • 審議番組「ザ・ドキュメント 冤罪・甲山事件 山田悦子 半世紀の闘い」(5/29放送)
  • その他(番組全般、放送に対するご意見・質問等)

第675回番組審議会では、議題1の報告の後、「ザ・ドキュメント 冤罪・甲山事件 山田悦子 半世紀の闘い」(5/29放送)について審議された。委員からの意見は下記のとおり。

 「ザ・ドキュメント 冤罪・甲山事件 山田悦子 半世紀の闘い」(5/29放送)
番組概要

「ザ・ドキュメント 冤罪・甲山事件 山田悦子 半世紀の闘い」(5/29放送)
21年間の裁判の末、3度の無罪を経てようやく殺人事件の被告人から解放された女性がいる。甲山(かぶとやま)事件の冤罪者・山田悦子さん。
過熱した事件報道に心を痛め、これまでメディアの取材を拒んできた山田さんに、今回初めて長期のカメラ密着取材が実現した。
1974年3月19日、兵庫県西宮市にある知的障害児の入所施設・甲山学園の浄化槽のマンホール内から、児童2人の遺体が発見される。警察は殺人事件として捜査し、当時22歳の保母・山田さん(当時の姓:沢崎)を男児殺害容疑で逮捕する。
山田さんは身に覚えがないと否認。しかし、密室の取調べ室で分刻みのアリバイ立証を求められ、最後には「父親も疑っている」と虚偽を告げられ、逮捕から10日後に自白。その後、自白を撤回した山田さんは釈放され、後に不起訴になる。一方、山田さんは自身の潔白を明らかにしようと、釈放後に国家賠償訴訟を起こした。
結審も見えてきた1978年2月、予期せぬ事態が起こる。同じ容疑で検察が山田さんを再逮捕。さらに山田さんのアリバイを証言した学園の園長と同僚まで偽証罪で逮捕したのである。一度不起訴になった事件、なぜ異例の起訴に転じたのか。事件から半世紀、山田さんの数奇な人生を辿り、甲山事件の残した教訓を探る。

委員からのご意見

  • 甲山事件を十分知らない視聴者でも、事件の流れと冤罪の構図が理解しやすい番組構成だった。
  • 山田悦子さんの成長や生き方が丁寧に描かれ、単なる事件紹介を超える人物像が伝わった。
  • 冤罪の怖さや、誰でも巻き込まれ得る恐怖を視聴者に強く実感させる内容だった。
  • 処分保留、不起訴、差戻しなど法律用語の説明が少なく、一般視聴者には難しい部分があった。
  • 冒頭で「カメラ嫌い」を強調した演出は、取材者側の自己演出のように見えて気になった。
  • 元検事への粘り強い取材が秀逸で、警察・検察の思い込み捜査の危うさが浮き彫りになった。
  • 検察や警察の権力性、後戻りできない組織体質の怖さが具体的に伝わる番組だった。
  • 園児証言の危うさや知的障害児の人権など、多面的な問題提起がなされていた点がよかった。
  • 知的障害児施設の閉鎖性や遺族感情など、周辺の社会問題まで掘り下げる余地も感じた。
  • 報道被害や過熱取材の問題も感じられ、メディア側の反省材料としても意味があった。
  • 支援団体や弁護団の中身が十分に見えず、支援の広がりや厚みは伝わり切らなかった。
  • ディレクター自身が画面に出る手法が、かえって視聴者の理解を助ける効果を上げていた。
  • 時系列は明快だったが、山田さんの年齢表示が少なく、歳月の重みが伝わりにくい面もあった。
  • 終盤の講演や対話の場面は、苦しみよりも美談としてまとめた印象を与える部分があった。
  • 弁護団や支援者の存在が垣間見え、冤罪と闘うには社会的連帯が必要だと感じさせた。

    上記のご意見への返答

    ●山田さんとの取材は、偶然お会いしたことがきっかけでした。その後、手紙を出して、私が以前つくったドキュメンタリーも見ていただいて、少しずつ信頼関係ができました。甲山事件は、物証が乏しいまま有罪方向へ進む日本の刑事司法の問題を象徴する事件だと感じています。
    ●山田さんは、ご自身を単なる冤罪被害者として描かれることをあまり望んでおられませんでした。被害者として消費されるのではなく、刑事司法の問題を語る一人の経験者として見てほしい。その思いはとても強くて、私もそこは大事にして構成しました。
    ●年齢を出すかどうかは、実はかなり迷いました。年月の長さは全体を見ていただければ伝わるだろうと思って今回は入れなかったんですが、22歳だった山田さんが今74歳になっているという重みは、数字で示したほうがより伝わったかもしれないとも思っています。
    ●元検事の話を聞いていて感じたのは、悪意があるというより、自分は正しいと信じて疑わないことの怖さでした。そう信じてしまうと、別の見え方が入ってこなくなる。しかも権力を持つ側ほど、その危うさを自覚しにくい。そのことが一番怖いと思いました。

委員のご意見を受けて

報道情報局 報道センター
ディレクター 上田大輔
事件で大きなポイントとなる自白強要の取り調べと園児証言について、どうすれば映像で分かりやすく伝えられるか悩みました。今回、CGや再現ドラマに挑戦しましたが、委員の皆様に番組の趣旨がしっかりと伝わったと実感でき、大変ありがたく思っております。一方で、まだまだ伝えるべきことが多く残っている事件であると再確認する機会にもなりました。頂いたご意見を参考に、今後も取材を続け、事件の教訓を残していきたいと思います。