出前授業

出前授業@尼崎市立尼崎双星高等学校

2017年6月21日(水)

ゼロからイチを作り、100にすること ~テレビマンのお仕事とは?~

尼崎市立尼崎双星高校に行ってきました。
2011年に尼崎市立尼崎産業高校と尼崎市立尼崎東高校とが統合して開校した尼崎双星高校。普通科、商業科、ものづくり機械科、電気情報科の4つの学科があります。梅雨の真っただ中の雨が降ったりやんだりのこの日、普通科の1年生およそ200人が授業に参加してくれました。

【学校からの要望】

普通科の1年生が学ぶ「総合的な学習の時間」という授業の一環として、テレビ番組ができるまでと、その中でどんな職業の人がどんな仕事をしているのかなどの話を聞き、生徒たちが知らない仕事の世界に興味をもち知識を増やし、2年生になってからの文理選択のときや、大学や専門学校への進路を決めるときのヒントのひとつになるような話をしてほしいとの要望を受け、授業を行いました。

【授業内容】

講師は入社20年目、制作部で『にじいろジーン』や『R-1ぐらんぷり』などの番組を担当し、現在は編成部・企画班で『NMBとまなぶくん』や『京都いろどり日記』などの番組を担当している東野和全(ひがしのかずひろ)プロデューサーです。

大学で「新聞学」を学んでいた東野プロデューサーは、関西テレビ入社後、報道関係の仕事を希望していましたが、配属されたのは制作部。編成部に移ってからも今までずっと「ゼロから、もの“番組”を作る仕事」に携わってきました。そこで番組を作る「楽しさ」と「難しさ」を数多く経験してきました。その経験をもとに、ディレクターやプロデューサーとして制作を担当した3つの番組を題材にして話をしていきました。

授業の冒頭、東野プロデューサーは生徒の皆さんに「1日にどれくらいテレビを見ますか?」と質問すると、2時間ぐらいという生徒が一番多くて全体の2~3割、テレビを見ないという生徒も1割ぐらいいます。授業の直前の6月17日に放送した『AKB48 総選挙SP』を見た生徒も10人未満で、ある程度は予想していたものここまでテレビ離れが進んでいる現実に東野プロデューサーは驚いた様子でした。
東野プロデューサーは「テレビや新聞、ネットなどで番組欄を見るとたくさんの番組が並んでいる。それは意味なく並んでいるのではなく、ひとつひとつにテレビマンのいろんな思いが詰まっている」と話し、授業を進めていきました。

最初に東野プロデューサーは、事前に生徒の皆さんに行ったアンケートでたくさん質問にあった「ディレクター」と「プロデューサー」の仕事の違いの説明から授業に入りました。「ディレクターはおもちゃを“作る人”で、その“パッケージと値段を決める人”がプロデューサー」とし、ディレクターは「具体的に番組の内容や企画を考え演出する」、プロデューサーは「予算を管理し、出演者との交渉などを行い、番組のパッケージ(方向性)を決めて出演者やスタッフを導く」ことが基本的な仕事であると説明しました。

そして、自らがディレクターとプロデューサーの両方を担当した、毎週土曜 午前8:30~放送、山口智充さん(ぐっさん)とガレッジセールさんが司会を務める全国ネットの情報番組番組『にじいろジーン』から、ディレクター時代に、夏の暑い時期にいつもスタジオの中だけで放送していてなんか狭苦しいと感じ、京都の貴船から納涼生中継で放送したこと、プロデューサー時代には、山口智充さんとゲストの歌舞伎役者・市川海老蔵さんを説得し、まったく事前の打ち合わせをせず、ぶっつけ本番で番組内のひとつのコーナーを放送したことなどを、そのダイジェストを見てもらい紹介しました。

番組のダイジェストを見てもらったあと東野プロデューサーは「『にじいろジーン』などの番組は制作・技術・美術などを合わせると100人を超えるスタッフで作っている。プロデューサーが方向性を見誤って間違った道を進むと視聴率が悪くなり、最悪の場合は番組が終わって100人を超えるスタッフを路頭に迷わすことになる」「どの番組も何よりスタッフと出演者の向き合い方、信頼関係、人間関係が重要」と話しました。
生徒の皆さんは、ひとつの番組にかかわっているスタッフの人数の多さと、その番組をまとめるプロデユーサーの責任の重さにとても驚いていました。

次に東野プロデューサーはディレクターとして2004年から2013年まで10年間制作を担当した、一人芸のNo.1を決めるお笑いコンテスト『R-1ぐらんぷり』の今年の放送の一部を見てもらい、番組の美術セットなどについての話をしました。

現在の『R-1ぐらんぷり』のセットは、2008年に作ったもので小さな変更はあるものの今まで10年間使っています。このセットは当時の東野ディレクターが美術スタッフと一緒に試行錯誤して、審査員の皆さんが見やすいように、そして出演者の皆さんが気持ちよく演技できるように、高さや目線にこだわりデザインし作ったものであることや、テレビ画面ではセット上部に映るトーナメント表を関西テレビでは初めてバーチャルシステムで導入したことなどを紹介し、これらも番組の演出にかかわるディレクターの重要な仕事であると説明しました。

続いて東野プロデューサーは入社4年目の27歳のときに制作に携わった特番『Mr.マリックの大冒険!南極大陸はてしなき超魔術の旅!!』(2003年8月24日放送)のダイジェストを見てもらいます。この番組は、超魔術師・Mr.マリックさんが未知なる大地南極で、ここでしか実現しえない渾身のマジックを披露します。またマジックだけではなく南極で生きるペンギンやゾウアザラシなどの珍しい動物の生態、各国の観測隊員の想像を超える暮らしぶりなどもリポートした特番です。東野プロデューサーは次のような南極での取材や撮影のときのいろいろなエピソードを紹介しました。

・民間放送ではめずらしく、制作スタートから放送まで1年かかったこと
・チリから南極まで行くチャーター機が天候不良で何日も飛ばず立ち往生したこと
・南極で宿泊していたチリ軍の基地の部屋が、6畳ほどの大きさに2段ベッド2つの4人部屋で、1人1泊およそ5万円すること
・南極は誰のものでもないとされているので、ゴミや汚物もすべて持って帰らないといけないこと
・ペンギンやゾウアザラシ、トウゾクカモメなど動物の撮影は大変だったこと
などなど

東野プロデューサーは「厳しい環境の中での仕事だったが、人生で二度と味わえない貴重な経験だったので嫌だとは思わなかった。ただ、ただ、番組を作り上げないといけないという使命だけは常にあった」とこの仕事を振り返りました。

そして最後に「どんな仕事でも想像もしないことが起こるし大変なこともある。だけど時間が経って振り返ればおおむね楽しい」「何より今の学校生活を存分に楽しんでください!できれば家に閉じこもらずに、外に出た方がいいと思います」と生徒の皆さんへメッセージを送り、授業を締めくくりました。

今回の自らがディレクターとプロデューサーとして制作を担当した3つの番組を題材に した東野プロデューサーの話は、仕事の内容や番組の制作過程、制作者にしか分からない裏話を聞くだけではなく、番組を作るいち制作者としての熱意や充実感、苦悩とジレンマなどさまざまな思いがぎっしり詰まった内容でした。生徒の皆さんにとっては2年生になって進路を決めるときのひとつのヒントになると同時に「仕事」や「働くこと」をじっくり考えるきっかけにもなる授業でした。

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