病床使用率が一時90%を超えて全国で2番目に高い水準になるなど、まさに今、最大の危機に直面している滋賀県。
新型コロナ患者を受け入れる病院では、人も設備も限界が近づいていました。
都市部と比べ、医療体制が整っていない地方を襲う第5波の現状を取材しました。
■限界近づくコロナ患者受け入れ病院
滋賀県の大津赤十字病院。
重症と軽症・中等症、合わせて20床を確保して、新型コロナ患者を受け入れています。
先週、滋賀県に緊急事態宣言が発令される前日の、重症病床の映像。
4床ある病床に、3人の患者が入院していました。
治療を受けている50代の男性は、入院したときは自分の足で歩ける状態でしたが、容体が悪化。
人工呼吸器を必要とする危険な状態に陥っていました。
【呼吸器科 佐藤将嗣 医師】
――Q:回復の状態は?
「日に日に悪くなっているような印象ですね、この方の場合は」
「発症してから5日でこちらに入院してきて、それから数日してから、こちら(重症病床)に移って、酸素状態も悪いし呼吸も安定しない」
8月4日に、初めて1日の新規感染者数が100人を超えた滋賀県。
その後も感染拡大は止まらず、2週間後には200人を超えました。
滋賀県はもともと病院の数が少なく、先週には、病床使用率が一時90%を超えて全国で2番目に高い水準になるなど、まさに今、最大の危機に直面しています。
病院では8つある集中治療室のうち、4つを新型コロナの重症患者用に転換。
限られた資源をフル稼働させて、第5波と戦っています。
【看護師】
「もともとはここ病棟がなかったところなので、先生たちの仮眠室になっていたところなので、そこを、改築というか、ゾーニングして、新たに作った」
「作業スペースがとても狭いんですよ、中が本当に。この幅に入れるのは2人くらいですね」
本来は、十分なスペースや設備が必要とされる重症者の治療ですが、急ごしらえの体制でしのいでいるのが現状です。
【影山祐子 看護師長】
「ICUの病棟も稼働しながら重症のコロナ患者も対応するということは、スタッフ自身の疲労というか、すごく頑張ってくれてはいるが、なかなか疲れがたまってきているかなというのが実際」
■すぐそこにある「2つの危機」
ヒトも設備も限界が近付いている中、医師たちは、すぐそこにある2つの危機を懸念していました。
1つ目は、新型コロナ以外の重症患者のリスクです。
【大津赤十字病院 河南智晴 副院長】
「一般病棟で診るのは危険だから怖いなという状態の患者さんを(ICUから)出してしまい、次の新たな人を入れる形になってる。ですから、(ICUの)外に出た時に急変した時に対応がICUの対応ができないので、後手にまわってしまうリスクはある。非常に危険な状況の中で運営している」
もう1つは、自宅療養者のリスクです。
この日は、ワクチンを2回打ったものの陽性が確認され、自宅で療養していた患者の入院を受け入れました。
滋賀県では、自宅療養する人の数が1500人を超えていて、医療の目が届かない人たちへの対応が懸念されています。
【救急センター 竹市康裕 副センター長】
「今までも自宅療養者はあったのはあったんですが少数でした。今はものすごい数になっている。自宅療養者の方で心配をされて、呼吸が苦しいということで救急車を直接呼ぶ方がいる。(特に)メンタルの部分で助けてくれという方が多い」
「1人の(発熱がある)患者さんに当たったら、別の患者さんを即見るわけにもいかない。1人2人くらいなら耐えれるけども、3人とか出てくるとスタッフが足りなくなってします」
■急増する家庭内感染 妊婦の入院も
大津赤十字病院は3次救急を担う最後の砦。
年間約7000件の救急搬送を受け入れています。
今はまだ患者の受け入れができているものの、今後、特に重症患者の搬送が増えると、立ち行かなくなる恐れもあります。
【大津赤十字病院 河南智晴 副院長】
「滋賀県の場合、2世代3世代同居されてたりとか、同居でなくてもすぐ近くに住んでいて、しょっちゅう行き来したり、そこに1人感染者がでると、みなさん濃厚接触になってしまったり、みんな感染者になる。ある時から、急に爆発的に患者さんが増える。滋賀県の大きな特徴の一つかなと感じます」
この日、軽症・中等症の病床には、新型コロナに感染した後に出産した女性も、入院していました。
陽性となった妊婦の受け入れは難しく、急遽、医療体制の整ったこの病院に転院し、帝王切開で出産しました。
赤ちゃんは陰性が確認され、母親の退院も決まりましたが、親子はまだ直接会えずにいます。
【助産師】
「まず、母子手帳と出生届を夕方にお持ちしようと思うんですけど、戸籍上のお名前の確認をしたいのですが」
「具体的には赤ちゃんがお生まれになった時間であるとか、何人目のお子さんかということを確認しないといけないので、また夕方お電話します」
面会ができない家族に代わって、感染管理認定看護師の資格をもつ助産師など、現場の医療者たちがサポートしています。
【大津赤十字病院 影山祐子 看護師長】
「第1波の時は、働くのが怖いという声はあるけれども使命で来ているというのがあった。しっかり知識をつけて感染防御すれば感染しないというエビデンスを持ってやっているので、実際感染したスタッフもいないのでそこはよかったかなと思っている。地域の人に早く元気になってもらいたい、早く笑い声が聞きたいという気持ち」
都市部と比べて医療体制が整っていない、地方を襲う第5波。
限られた資源の中で、医療崩壊を防ぐために戦い続けています。
(カンテレ「報道ランナー」8月31日放送)