伝統芸能『浄瑠璃』が江戸時代から受け継がれる大阪・能勢町 100年以上続く老舗豆腐店で手作り豆腐に舌鼓【兵動大樹の今昔さんぽ 関西テレビ「newsランナー」】 2024年07月05日
【兵動さん】「今回は大阪・能勢町に来ております。こちら、すごいですね。『野間の大けやき』という天然記念物なんですね。うわ~、すごい立派!」
兵動さんの背後にそびえる、樹齢1000年以上の「野間の大けやき」がある能勢町は、大阪府の最北にある町です。
今日は一体どんな写真が出てくるのでしょうか?
■能勢で200年以上も続く芸能とは?
これは1953年(昭和28年)に能勢町内で撮影された写真です。どこの風景か分かりますか?
【兵動さん】「お墓なのかな。『竹本文太』?ちょっと聞いてみますか」
早速、聞き込み開始です。
【兵動さん】「お店というお店もな…。あそこに『地元野菜直売』って書いている。『能勢けやきの里』、北へ464メートル。そっち目指すか」
田園風景の中をしばらく歩いていると…。
【兵動さん】「あった、あった。新鮮野菜」
直売所がありました。
【兵動さん】「これ毎日ですか?」
【能勢けやきの里 代表理事 谷 義樹さん】「定休日は木曜日でね。それ以外は。朝からやっているので(商品の)種類は減っています」
野菜の他にも、地元の加工品を販売しています。
【兵動さん】「これ昭和28年の写真でね、同じところから写真を撮りたいんです。この墓石?というかそんな感じの…」
【能勢けやきの里 代表理事 谷 義樹さん】「これが一番分かりやすいな。能勢は『浄瑠璃』が結構盛んやったことご存知ですか?200年以上の歴史があるんやけどね。その時の『太夫(たゆう)』。それをやった人がその記念というか、建碑。そういうことをあちこちでやってるんですよ」
「太夫」とは、場面の説明や人物のセリフなどの語りを担う人のこと。
【兵動さん】「能勢は『浄瑠璃』が…」
【能勢けやきの里 代表理事 谷 義樹さん】「200年あまり続いているんですよ。この名前でずっと代々、引き継いでいっているんですよ。何代目かの『竹本文太夫』という。4つあるんです。竹本文太夫、竹本井筒太夫、竹本中美太夫。で、ずーっと遅れて、竹本東寿太夫。私もたまたま、竹本東寿太夫を今やっていますので。だからこれ(写真)見て、大体見当つくなと」
【兵動さん】「えっ!太夫さんなんですか?浄瑠璃の語りをされているんですか?」
【能勢けやきの里 代表理事 谷 義樹さん】「やらしてもらってます。(写真をさし)これ見たら、大体どの地域かは分かります」
【兵動さん】「地域?この『竹本文太夫』さん…」
【能勢けやきの里 代表理事 谷 義樹さん】「『竹本文太夫』さんは西能勢地区でこれが結構ね、やってはると。1つ山超えて、もう1つ山超えたらこの地域に行くから」
【兵動さん】「2つの山を超えるの!?」
兵動さん、山を2つ越え、能勢町の西の方へ行ってみることに。
■手作り豆腐を販売する老舗豆腐店でも聞き込み
【兵動さん】「さぁ、山超えてだいぶ西の方にやってきました。人はなかなか歩いてない。あそこに『能勢のとうふ』って書いてあるねんけどな。大正9年創業ってすごくない?」
老舗の豆腐店を発見。そこに1人の女性が現れました。
【兵動さん】「こちらの(方)?」
【街の人】「ここに豆乳を」
【兵動さん】「豆乳を買いに?『これ(ペットボトル)に豆乳入れて』って言うて?おいしいですか?豆乳。スーパーで売られてるのとはひと味違う?」
【街の人】「また違います」
兵動さんもお店を訪ねてみることに。
【兵動さん】「すみません、お仕事中に。わぁ、昔ながらの」
【堂本豆腐店 店主 堂本博之さん】「手作りなんです」
【兵動さん】「今、手作り豆腐こうやって買えるところ減りましたもんね」
【堂本豆腐店 店主 堂本博之さん】「少ないですね。時間かかるから、みんな辞めてしまわれるから」
【兵動さん】「何時頃からやってはるんですか?」
【堂本豆腐店 店主 堂本博之さん】「遅いときは4時から。(Q.休みは?)月曜が休みです。(週末は)遠くから来られる方が多いから、土日は昼くらいに終わり(完売)」
【兵動さん】「朝に来ないとあかんわ。おから、厚揚げ、木綿…安くないですか?」
おから1袋100円、あつ揚げ100円、もめん豆腐200円と書かれています。
【兵動さん】「さっきの奥さんが言うてた豆乳ってあります?おいくらですか?」
【堂本豆腐店 店主 堂本博之さん】「豆乳は予約していただいた方にだけお分けしているんですよ。ペットボトル持ってきてもらったら。(Q.おいくら?)100円」
【兵動さん】「100円!?500ミリリットルで100円ってこと?」
【堂本豆腐店 店主 堂本博之さん】「そうです」
普段は予約制ですが、今回は特別に試飲させていただきました。
【兵動さん】「めちゃくちゃうまい!何これ!豆本来の甘み、旨みがふわっと上がってきて」
さらに、木綿豆腐のお味は?
【兵動さん】「うまい!誤解を恐れずに言いますけど、ごちそうです。豆の旨みがすごく伝わる。日本酒ほしいね」
【堂本豆腐店 店主 堂本博之さん】「それが一番ええかも」
【兵動さん】「それは出てこないね?当たり前か」
ここで、写真について聞いてみると…。
【兵動さん】「能勢ってね、浄瑠璃文化だと聞いて」
【堂本豆腐店 店主 堂本博之さん】「そうです。そこに『浄瑠璃の里』って書いてあります」
【兵動さん】「浄瑠璃の里があるねんや。『文太夫』さんと書いているから、話を聞いたら『西の方に行き』と言われて」
【堂本豆腐店 店主 堂本博之さん】「そやね。竹本文太夫…“派”が。いろいろあるんですよ。あんまり知らないんですけど。(Q. 浄瑠璃を習ったことは?)ないです」
【兵動さん】「ちなみに見たことは?」
【堂本豆腐店 店主 堂本博之さん】「あります。会館があるんです。『浄るりシアター』といって」
近くにあるという「淨るりシアター」へ行ってみることに。
■古くから受け継がれる『素浄瑠璃』と人形浄瑠璃
【兵動さん】「着いたぞ、『浄るりシアター』」
プロデューサーの松田さんに話を聞いてみました。
【兵動さん】「能勢は浄瑠璃が200年くらい続いていると」
【浄るりシアター プロデューサー 松田正弘さん】「そうなんですよ。1804~1815年、文化年間になるんですけど、人形のない『素浄瑠璃』というのが200年以上の歴史があるんです」
「素浄瑠璃」とは、三味線と太夫の語りのみで物語を紡ぐ伝統芸能。能勢町では、この素浄瑠璃が江戸時代から脈々と受け継がれているのです。
【浄るりシアター プロデューサー 松田正弘さん】「能勢町は大きく分けて、西地区と東地区に分かれるんですけど、浄瑠璃が盛んだったのが西地区。ここで3派が江戸時代にできて、2001年、新たな家元が立ち上がったんですよ」
【兵動さん】「それさっき会った人やわ。野菜の直売所で『太夫やってるねん』と」
【浄るりシアター プロデューサー 松田正弘さん】「多分お会いされた方は『竹本東寿太夫』さんだと思いますね」
【兵動さん】「今持っている写真がね、『文太夫』さんじゃないかと」
【浄るりシアター プロデューサー 松田正弘さん】「そうです。文太夫はこの『竹本文太夫派』の建碑式といって、ここのトップを“おやじ”というんです。『おやじ制度』というのがあって、これが世襲制じゃないんです」
「おやじ制度」とは、弟子を5~6人集め、素浄瑠璃の指導を行い育成する、能勢の浄瑠璃の大きな特徴です。
【浄るりシアター プロデューサー 松田正弘さん】「能勢の人口が今9200人ほどで、(そのうち)200人以上の『語り手』がいるんです」
【兵動さん】「すごいですね。知っているんじゃなくて、語れるんでしょ」
【浄るりシアター プロデューサー 松田正弘さん】「この素浄瑠璃の財産を、もっとビジュアル化を図るということで人形デビューさせて、今、人形浄瑠璃としてもやっているんです。おやじ制度も残っているし、新たに人形浄瑠璃としてやっていると。今度6月29日、30日に鹿角座(ろっかくざ)の人形浄瑠璃の本公演をするんです」
【兵動さん】「もうすぐやんか」
【浄るりシアター プロデューサー 松田正弘さん】「そうなんです。今も人形の稽古をしているんです」
能勢町で200年以上続く素浄瑠璃の伝統をベースに、2006年に旗揚げした能勢人形浄瑠璃「鹿角座」は、古典的な演目のほか、宇宙人が登場するユニークなオリジナル演目などを上演しています。
そして、「淨るりシアター」で6月末に上演された能勢人形浄瑠璃の練習風景を見学させてもらいました。
【兵動さん】「うわ!立派な劇場やなぁ」
【浄るりシアター プロデューサー 松田正弘さん】「人形の稽古をしていて、今度の29日、30日の演目の稽古を今しているんです」
鹿角座の座長を務める岡本さんに話を聞いてみました。
【兵動さん】「さっき教えていただいた素浄瑠璃の団員さんでもあり…」
【浄るりシアター プロデューサー 松田正弘さん】「鹿角座の人形浄瑠璃の座長です」
【兵動さん】「素浄瑠璃と浄瑠璃は全然違うものですか?」
【鹿角座 座長 岡本 勲さん】「やっぱり人形があるとお客さんによく(物語を)訴えられますね」
【兵動さん】「人形使いは女性の方が多いんですよね」
【鹿角座 座長 岡本 勲さん】「多いです。発足当時からの人がほとんどです」
人形使いの皆さんにも話を聞いてみました。
【兵動さん】「何が難しいですか?一番」
【人形使いの女性】「何もかも全部が難しい」
【兵動さん】「すごいのは、人が見えなくなるくらい、『そうだ、これ人が動かしてたんや』と思うくらい(自然な動き)になっていきますもんね」
【人形使いの女性】「(そんな風に)なりたいなぁ」
それでは写真の場所はどこなのでしょうか?
【浄るりシアター プロデューサー 松田正弘さん】「17代目の竹本文太夫の碑があるところです。これはお寺なんですけどね」
【兵動さん】「あ、お寺なんですね!」
写真の場所は今、どうなっているのでしょう。
松田さんにそのお寺まで案内してもらうと、探していた碑が見つかりました。
【浄るりシアター プロデューサー 松田正弘さん】「これですね」
【兵動さん】「そういうことか」
【浄るりシアター プロデューサー 松田正弘さん】「こちらから撮っておられるんですね」
【兵動さん】「はい、チーズ」
【兵動さん】「能勢の浄瑠璃。200年以上受け継がれている素浄瑠璃ですね。今日はどうもありがとうございました」
(関西テレビ「newsランナー」 2024年6月28日放送)