JR西日本のエリアでも深刻な赤字路線となっている木次(きすき)線を走る観光列車「奥出雲おろち号」が4月から最後のシーズンの運行が始まりました。
島根県の東部を走るおろち号は1998年から運行が始まりましたが、JR西日本は車両の老朽化などにより2023年度限りで運行を終了することを決めました。
私は最後のシーズンが鉄道ファンで混雑し指定席が取れなくなることを恐れて、昨シーズンの運行最終日に乗ってきました。
木次線のハイライトは三段式スイッチバックで、そのスイッチバックを「降りる」のではなく「登って」みたかったので、木次から備後落合方面に乗るべく運行前日に現地入りを目指しました。
金曜の夕方ニュース終わりに大阪駅で学校帰りの長男と待ち合わせをして特急「スーパーはくと」に飛び乗り、深夜に鳥取駅に到着しました。
翌日は早朝から島根県の宍道駅へ移動し、おろち号の入線を待ちます。この日は出雲市駅始発の片道延長運転日でした。牽引するのはDE10というディーゼル機関車で、ブルーに塗装されたボディにヤマタノオロチをあしらったヘッドマーク。先頭は12系という旧型の客車で、窓を取り払いトロッコ列車となっていて開放感があります。
備後落合方面に向かう場合はディーゼル機関車が最後尾に付くため、先頭になる客車は車掌室を改造した運転席が設けられています。座席部分には木製のテーブルと椅子が設置されていて、天井にはランプ風の照明。トンネルに入ると天井にはヤマタノオロチのイルミネーションが点灯します。
2両目は控車なっていますが、こちらも12系の客車で、懐かしい雰囲気も残っているのでトロッコとは違う魅力があります。この日は11月下旬、しかも雨交じりの曇天だったこともあり、トロッコ列車の車内は寒風が吹きこみかなり寒く、私は暖を取るため2両目の控車との間を行ったり来たりしていましました。
おろち号は1枚の指定席券で1両目のトロッコと2両目の控車の両方の座席が指定されているので、こういう天候の日は本当にありがたかったです。行程は日本海側から中国山地に向け登り坂が続きます。紅葉が楽しめる絶好のタイミングでしたが、あまりの寒さでゆったりした気分では眺められませんでした。
おろち号の楽しみの一つは、停車駅ごとに販売される沿線名物です。事前予約が必要なものもありますが、私は奥出雲和牛と仁多米というブランド米のタッグ組んだ牛丼「仁多牛弁当」と亀嵩(かめだけ)駅の「駅そば」屋が販売する亀嵩駅そば弁当を注文しておきました。仁多牛弁当はやわらかくジューシーな牛肉にほのかに甘いご飯の組み合わせが絶妙でかなりおいしかったです。蕎麦も最初は「駅そばでしょ」と期待せずに口に運びましたが、そば粉の風味が口に広がり、山芋と温泉卵がからんだ、そばのつるっとした「のどごし」も最高でした。
一番の見どころはやはり三段式スイッチバック。出雲坂根駅からジグザグに山道を登っていくのですが、一段目を登りきったところで運転手が車内を通り最後尾へ向かいます。そこで先頭が入れ替わり、二段目を登ります。三段を登りきったところで下に目を向けると、これまで登ってきた線路が眼下に広がり、「さっきまであそこを走ってたのか」と急な斜面を登ってきたことを感じることができました。建設当時の技術でこれだけの斜面を効率よく登るのはこの方法が最適だったのかと先人の知恵に改めて感心させられました。
3時間ほどで終点の備後落合駅に到着。ここから芸備線経由で新見まで向かうのですが、次の列車まで2時間ほど待ち時間があったので周辺を散策。10分ほど歩いた先にあるドライブイン落合で名物の「おでんうどん」を注文。おろち号の乗客で店も混雑していたので、うどんがでてくるまで40分ほどかかりましたが、おかげで暇をつぶすことができました。麺の上におでんがのっているだけのシンプルなうどんですが、おでんが甘めのだしを吸っていて、噛むとじわっとだしが染み出します。この後、芸備線の鈍行に揺られ新見まで行き、そこから振り子式電車381系の特急「やくも」で帰宅の途に就きました。
トロッコで
晩秋紅葉(もみじ)は
寒すぎた
【乗り鉄デスクのノリノリ日記】# 6
(関西テレビ報道局・解説デスク 神崎博)
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