映画監督の入江悠さん。
「あそこだ、看板が出てる」
この日、新作映画の打ち合わせのため、大阪・十三(じゅうそう)にあるミニシアター「第七藝術劇場」を訪れました。
数多くのメジャー映画のメガホンをとってきた入江監督。
自身が世に出るキッカケとなったのは2009年に公開した自主映画「SRサイタマノラッパー」がミニシアターでヒットしたことでした。
多様な作品を上映する小規模な映画館「ミニシアター」は、コロナの影響を大きく受けました。
第七芸術劇場も売上が大きく減っています。
入江監督はそんなミニシアターを支援しようと、大きな映画館で上映するメジャー映画ではなく、あえて自主映画を作ることにしました。
それが新作「シュシュシュの娘」です。
埼玉県のある町を舞台に、一人の女性が政治や差別などを巡る様々な問題に立ち向かっていく物語です。
【入江悠監督】
「去年はめちゃくちゃ(精神的に)落ちましたね。関西を舞台にした映画の企画が5年くらい脚本書いていたが、それが止まっていつ再開するかも見えない。このままどんどん悪い方に自分が行っちゃうなと、せめて自分がいままでお世話になった映画館とかに恩返しじゃないけど応援する活動しようと思って」
映画の製作費は自己資金200万円を用意。
さらにクラウドファンディングで「仕事を失った映画人と商業映画ではできない作品を作る」などと呼びかけ、およそ1200万円が集まりました。
出演者やスタッフは入江監督が自ら募集し、さらにコロナによって映画製作の機会が閉ざされていた学生たちをインターンとして採用しました。
【入江監督】
「ミニシアターって客との距離が近いので面白かったら面白かったって声が返ってくるし、『あそこはなんでこういう風に撮ったの』とお客さんからのフィードバックがすごい強い。何かアクションを起こさないと日本のミニシアター文化が消えるということはあり得ると思う」
21日から公開された「シュシュシュの娘」。
週末はほぼ満員となりました。
上映後に行われた舞台挨拶では、客からの質問に丁寧に答える入江監督の姿がありました。
【入江悠監督】
「お客さんから『自分はこう見たけどどうなんだ』っていうのを突きつけられて、自分が演出家として再確認をした感じがした。楽しかったですね」
全国およそ30カ所で公開される映画「シュシュシュの娘」。
ミニシアターの魅力に多くの人が気付いてほしいと入江監督は願っています。
(「報道ランナー」2021年8月23日放送)