2020年3月、大阪大学と、ベンチャー企業・アンジェスは、まだ日本では承認されたことがない「DNAワクチン」を使って国内で初めて新型コロナワクチンの開発に名乗りを上げました。
大阪府の吉村知事や大阪市の松井市長はすぐさま協定を結び、「オール大阪」でのワクチン開発をアピールしましたが…
【大阪府・吉村知事 2020/4/14】
「絵空事ではなく、7月に治験を開始して、9月に実用化へ」
【大阪府・吉村知事 2020/6/17】
「国の認可を得るのは、2021年の春から秋にかけてになります」
【大阪府・吉村知事 2021/3/10】
「さまざまな課題、安全性や治験の中で、手続きに時間がかかっているのであろうと。予定通りにいかない難しい問題にチャレンジしていると思う部分もあろうかとおもいます」
吉村知事から発信される実用化のメドは、何度も先送りになりました。
”大阪ワクチン”開発のその後を取材すると…
【記者リポート】
「日本初の国産ワクチンとして期待が寄せられているいわゆる大阪ワクチン。開発の当事者にお話をうかがいます」
アンジェスの創業者、大阪大学の森下竜一教授。
ワクチン開発のトップランナーとして期待がかかっていましたが…
【大阪大学 臨床遺伝子治療学・森下竜一寄附講座教授】
「有効性は、ファイザーとモデルナは高かったということもありますが、残念ながらそこには至らなかった。当初話していたスケジュールでなかなかできず大変申し訳ない」
アンジェスは11月、治験の結果を明らかにしました。500人に対し、治験をおこなったところ、安全性は確かめられましたが十分な有効性が確認できなかったのです。
実は開発レースから事実上、脱落することになったのです。
【大阪大学 臨床遺伝子治療学・森下竜一寄附講座教授】
「スケジュール感はやはり厚労省の考え方、どのように承認するかに左右される。当初考えられたような緊急使用とか期限条件付きで承認するという考え方が採用にならなかった。それによって、発症率を数万人でみるということが要求されて、かなり試験サイズ・費用が大幅に増えた。1年以上の遅れにつながった」
森下教授は、ワクチンの承認までに厚労省が慎重な姿勢をとったほか、感染者が海外に比べ少ない日本では、治験の対象者を集めることが大きな壁になったといいます。
それでも、国産のワクチンを開発する意味は大きいとして、2023年以降の実用化を目指して、容量や接種する部位を変えて治験が続けられています。
【大阪大学 臨床遺伝子治療学・森下竜一寄附講座教授】
「次回のパンデミックでは、ワクチンの争奪戦は今以上に厳しくなる。ワクチンが経済を回す切り札になると世界中で理解したから。お金があればワクチンが簡単に手に入るという保証はない。自国で、自分たちの技術で、新しいワクチン開発ができるのが非常に重要」
“期待通り”とはいかなかった大阪ワクチン。
今後、日本で接種される日は来るのでしょうか。
(関西テレビ「報道ランナー」 2021年12月27日放送)