若者の間で広がる“大麻”汚染…20歳未満の検挙者数は9年で約15倍に 合法大麻に追いつかない法規制 「命を落とす可能性」専門家も警鐘 2023年10月01日
日本大学のアメリカンフットボール部や、名門高校のラグビー部。兵庫県警の21歳の警察官も…。どこまでも広がる、若者の“大麻”汚染。大麻を加工し、規制を逃れて販売する店も存在します。
若者を蝕んでいく大麻。今何が起こっているのか、ツイセキしました。
■専門家「合法=無害ではない」
大麻事案の検挙者数について、気になるデータがあります。厚労省のホームページによると、2013年には1616人だった検挙者数が、2022年には5546人と約3.4倍に増加しています。その中でも20歳未満の検挙者については、2013年に61人だったのが2022年には917人と、およそ15倍に増えているのです。いかに若年層の間で大麻がまん延しているかがうかがえます。
大麻に関して、街で若者に聞いてみました。
「周りに使ってる人おるよな。おるおる!」
「ネットとかツイッター(現X)とか、友達が回してるとかです」と、大っぴらに話します。
さらに取材を進めると、意外な言葉が聞こえてきました。
「“合法大麻”なんで。合法なんでいいかなって思ってます」
「どこまでが合法でどこまでが違法なのか、詳しくはあんまり分かってない」
“合法大麻”を扱う店を訪れると、そこは住宅街。しかし店の中に入ると一転、怪しげな雰囲気です。
彼らのいう“合法大麻”とは、大麻に含まれる違法な成分を加工し、規制を逃れた商品のこと。次々と新しい成分が生み出されるため、法規制が追い付いていないのが現状です。
【店の代表】
「本物の大麻に近いというか、大麻の成分で構成されているものなので、大麻となんら変わらないような感じです。(Q.依存性があって、精神をやられるとかはお客さんで聞いたことありますか?)僕は1年以上、うちの商品を毎日吸っていますけど健康被害はないです」
店の代表はこのように話しますが、薬物に詳しい専門家は、規制されている大麻よりも危険な場合があると警鐘を鳴らします。
【法化学研究センター・雨宮正欣所長】
「合法=無害ではない。いろいろな検査を経ずに、ほぼ人体実験に近いような形になってしまいますから、どのような害があるか分からない。場合によっては命を落としてしまう可能性もあるということを自覚していただきたいと思います」
そうした事実を知ってか知らずか、商品を買いに来る若者たち。商品には、吸い込むものだけでなく、グミ状の食べるものもあります。
「(グミを)食べて大体30分くらいすると、あれ?みたいになってきて、1時間くらいすると、うわキマってるわ、みたいな」
「(大麻を使うと)顔とかに出ます。表情とか、ずっと笑ってたりしますね。何て表現すればいいか分からないですけど、これがキマってるってやつ。世間一般でいうキマってるっていうやつに、今なってますね」
■ヒップホップへの憧れから手を出し…その先にあったのは
さまざまな形で若者に忍び寄る大麻。今、違法な大麻そのものの広がりもとどまるところを知りません。
去年、大阪で検挙された10代の少年は、全国ワーストの172人。3年連続で過去最多を更新する深刻な状況です。
こうした実態について話を聞こうと訪ねたのは、浪速少年院。ここに入る21歳のAさんは、自らについて次のように話しました。
【Aさん】
「最初からヤンチャとかじゃなくて、結構なんか、私立とかに親に入れられてみたいな…」
私立の中高一貫校に通っていた16歳の時に、初めて大麻を吸ったそうです。
【Aさん】
「先輩が売買しているのを目の当たりにして、“一回いっときや、何もないで”みたいな感じで誘ってもらって。強要というか、付き合いで最初やってたんですけど」
しかし、次第に学校の友人らも手を出しはじめ、気づけば大麻が当たり前の存在に。その日常の先に、行きついたのが少年院でした。
同じ少年院に入る20歳のBさん。海外のヒップホップへの憧れから彼が大麻に手を出したのは中学生時代。それから5年も経たない内にエスカレートし、依存性も副作用も強い“麻薬”にも手を出していました。
【Bさん】
「コカインとかMDMAとか。コカインが一番多かったです。もっと強い刺激を求めて、もっとやるようになって、もっと刺激がなくなって、それのエンドレスでいっぱいやってしまうようになるっていう感じです」
さらに、自ら使うだけでなく、簡単に密売に手を染めていたと話しました。
【Bさん】
「ツイッター(現X)で調べたらすぐに買えるんで。(Q.それで稼いでいたこともあるのですか?)そうですね。僕が(直接的に)やってたわけではないけど、人に教えてやらせて。その売るやつを僕が用意してあげるみたいな」
■SNSに密売広告 10代も大麻の密売人に
大麻へのハードルが低くなった今、密売のスタイルもかつての状況とは一変したと、近畿厚生局麻薬取締部は警戒を強めています。
【近畿厚生局 麻薬取締部・春日 剛部長】
「SNS上には密売広告というのが載っていますし、いとも簡単にアクセスできます。いわゆる暴力団員が密売しているような状況と違って、若者の(大麻)ユーザーがまた密売人に変わっていくというような状況もある」
実際にSNSで特定の単語を検索してみると、大麻の密売と思われる投稿がすぐに見つかりました。連絡を取ってみると…。
【記者】
「もしもし。すみません、初めてなんですけど、買い方わからなくて」
【売人】
「大麻を購入希望か?」
【記者】
「大麻ですね。大体どれくらいの値段を用意すればいいですか?」
【売人】
「1グラムが6000円ですね。(Q.結構高いんですね?)そうですね、6500円のやつもあれば」
【記者】
「ちなみにお兄さん何歳ですか?」
【売人】
「自分は23ですね」
【記者】
「(売人には)若い人いっぱいいる感じですか?」
【売人】
「ああ、めちゃめちゃ、10代の子とかもいっぱいいる感じですね。」
初めて購入する相手にも臆することはない様子。客ではなく取材であることを伝え、罪の意識を問うと…。
「いや自分はだって…捕まる要素を満たしていないので。言っちゃえばこれを売っていることにはならないんで」
大麻そのものは自分の手元には置かず、客からの注文を受けると、仲間に送らせるスタイルだと話しました。
違法であるにも関わらず、大麻への抵抗感が希薄な若者たち。
社会復帰に向けて少年院で過ごすAさんは、最後にこう語りました。
【Aさん】
「大麻をやって失ったものも多いかなと思ってて。自分の体もそうやし、周りの人もそうやし。自分の夢もそうみたい。結構それ(大麻)使うことによって、自分の夢から遠ざかってたな。もうそれに浸かってたらあかん」
“大麻によって失ったもの”を悔やむ前に、その危険性を知る必要があります。
(関西テレビ「newsランナー」2023年9月28日放送)