コロナ禍で、ネット通販の売れ行きが2倍に伸びたほど大人気だという『缶詰』。
様々な業種が缶詰を作り始めていて、バリエーションもクオリティーも広がりを見せています。缶詰業界の裏側を取材しました。
■マニアが絶賛!缶詰も“多様性”の時代
保存食という枠を超え、進化が止まらない缶詰。
缶詰専門店のパイオニアとして全国展開しているミスターカンソ。店頭にはたこ焼きやハンバーグなど、総菜からスイーツまで約120種類もの缶詰が。チョコの中にサバが漬け込んである「鯖チョコレート風味(432円)」や、宮崎牛の塊肉がゴロっと入ったぜいたくな缶詰「南海グリル肉塊ステーキ」(4860円)も登場しました。
【ミスターカンソショップ 荒堀慧さん】
「元々素材をただ詰めるだけという、ツナ缶とかのイメージがありましたが、これまでに作れなかったようなものについて、各社が商品開発に力を入れるようになりました。
缶詰の劇的な進化を肌で感じ続けているという男性がいました。なんと2年半もの間、毎日缶詰を食べ続けるマニアだそうで…。
【カンダフル プロデューサー 鈴木正晴さん】
「もう800缶を越えているんですけど『こんなモノが缶詰に?』というのがすごく増えていて、今全国の作り手が本当に考えておいしいものを缶詰にしようとしています」
去年、缶詰専門店・カンダフルを東京で立ち上げ、その魅力を伝えている鈴木さん。中でも驚いた商品が…。
【カンダフル 鈴木さん】
「お寿司の缶詰というのがありまして、実際はお寿司ではなくてシャリに具が入った混ぜご飯みたいなものです。大阪で元々寿司店をやっていた方が、コロナで客が減ったので、自分たちでできるおいしい缶詰を作ろうとすごく苦労したらしいです。だから作っている人の想いがギュッと詰まっているんですよね、缶詰には」
■缶詰革命!町工場が生んだマシーン
新型コロナをきっかけに様々な業種が缶詰作りに参入。それを実現させる新たなマシーンが堺の町工場・浪速工作所で作られていました。
飲食店などを支援するため3年前に開発した「CANメーカー」は、電子制御で誰でも簡単に操作できるようにした世界初の缶詰製造機です。
【浪速工作所 谷本和考さん】
「ここに具材を入れてフタをして、CANメーカーにセッティングしてボタンを押したら…これでできあがり。缶が封をされた形です」
CANメーカーを利用すれば、ローリスクで缶詰づくりにチャレンジできるといいます。
【浪速工作所 谷本さん】
「缶詰をやりたいといっても従来は1ロット3万個。大量に作らないと生産できなかったんですね。それで缶詰を諦めてきたお客さんが結構いたんです。できれば小ロットから始めたいという要望が日本各地にあったので、それが叶うようにしたのがこの機械です」
一般的な缶詰の作り方は、食材をカットしてから缶に入れ、味付けのための調味料を加えます。あとはフタをして殺菌のため高圧・高温で加熱すれば完成で、圧力鍋で調理したのと同じ状態になるそうです。
実際にCANメーカーを導入し、缶詰作りを始めたという飲食店は…。
【浪速工作所 谷本さん】
「道後温泉に『カンパチ』という缶詰専門店を作られたお客様がおられます。元々鯛めしを提供する居酒屋さんだったんですが、去年3月にオープンされて既に180近い商品を開発されて、月1万缶以上を販売されています」
■名店の味を再現…高級缶詰の開発現場
そして、世界に羽ばたく新世代の缶詰も…。
「おいしい日本の食を世界に届ける」をコンセプトに、H&Wが展開する缶詰ブランド・カンナチュール。
料理人やシェフらと一緒に作った料理を詰め込んだ高級缶詰もあり、中には京都の老舗料亭や大阪の有名ホテルの味を再現した缶詰など、約70種の商品を手掛けてきました。
【H&W CEO 橋爪敦哉さん】
「料理人やシェフはたくさんアイデアをお持ちだと思います。そういったものが商品化されれば日本全国のレストランの味が世界中で味わえるんじゃないかと」
今も商品化に向けた様々な試作が進行中。その一つが、この春に販売を予定している神戸の一流ホテルとのコラボ缶詰です。
【神戸メリケンパークオリエンタルホテル 松岡正総支配人】
「ホテルの味を世界の方に分かっていただきたいという思いでスタートしました。味わいも実際のレストランと変わらない品質で出せると」
初めての缶詰に選んだ料理は、ホテル一番の人気店で提供される神戸ビーフのシチュー。長年愛されてきた看板メニュー、缶詰でどう再現するのでしょうか。提携工場での試作にはシェフも立ち合いました。
【ステーキハウスオリエンタル 鍬先章太シェフ】
「今日はこちらのスタッフさんだけで再現されたものを確認しに来ました。普段仕込みしているのとは全然違うので。ここにある機材を使って(調理時間も)できる限り短縮を」
使う材料は同じでも、調理するのはあくまで製造スタッフ。普段のレシピ通りに手間暇かけて作るわけにはいかないのです。本来は肉とルゥを長時間かけて煮込むところを別々に仕込むことで調理時間を短縮したそうです。
【H&W 橋爪さん】
「一応こんな感じでお肉とか調理していたんですが」
【ステーキハウスオリエンタル 鍬先章太シェフ】
「お伝えしていた感じですね。肉質も混在して入れてもらっているので、サイズ的には一口大を5~6個ですね」
【ステーキハウスオリエンタル 鍬先シェフ】
「(味見して…)うん、かなり再現度が高く、おいしいです」
加熱を想定した味付けにしているそうですが、フタを開けてみるまで分からないのが缶詰の難しいところです。後日、ホテルで行われた試食会では…。
【ステーキハウスオリエンタル 鍬先シェフ】
「やっぱりコクがかなり増えているので一体感が出て、OKだと強く思います」
どうやら無事、看板料理の味を再現できたようです。ホテルの名刺代わりとなる初めての缶詰。完成まであと少しです。
【H&W 橋爪さん】
「缶詰って本当に食の保存という役割で一役を担い、常温輸送で世界中、宇宙でも、電気やガスがなくても食べられる容器なんです。地域の食材をうまくシェフのアイデアで商品にして世界に発信していくことができれば。非常にワクワクが止まらないなという感じです」
作り手のこだわりと想いが詰まった進化系缶詰。世界を席巻する日もそう遠くないかもしれません。
(関西テレビ2月21日放送『報道ランナー』内「ヒットにワケあり!オカネのヒミツ」より)