ことしの4月は「値上げの春」です。トラックの運転手などの残業時間に上限ができて、その影響で宅配便の配送料が値上げされます。さらに75歳以上の高齢者の一部で医療保険料も引き上げ。新型コロナの治療薬などへの公費支援が終了します。そんな中で2806品目の食品が値上がりし、半年ぶりの「値上げラッシュ」となります。中でも、みんな大好きなあのお菓子が、大ピンチなんです。
多くの人でにぎわう、阪神梅田本店の生鮮売り場。エイプリルフールの1日限定で行われたのは名付けて「これが1080円!嘘ちゃいまっセール」です。
中トロなど、おつくりの盛り合わせは33%オフ、ステーキ用の国産牛は44%オフ。通常なら2000円ほどする甘ーいトマトも今日は1080円です。訪れた人たちも大喜びです。
【買い物客は】「びっくりしちゃった、え~って思って買いにきました。すごくありがたい。アメーラトマトって甘くておいしい。安いから2箱買った、バスで1時間かけてきて正解やった」
【阪神梅田本店・生鮮売り場バイヤー 河合亮さん】「エイプリルフール、本来ならウソをついていい日とされていますが、せっかくなんでウソではなく、ウソのような本当の価格ということで商品を提案させていただいております」
しかし、1日はあくまでエイプリルフール。「現実」はそう甘くはありません。
【スーパーのお客さん】「給料上がらないんですけど、物ばっかり上がってしまって困りますね」
今月は2806品目の「値上げラッシュ」。さらに、いま大ピンチなのがチョコレート。「チョコレート危機」ともよばれる、業界のイマを取材しました。
大阪府八尾市内のスーパーでは、きょう値札の張り替え作業が行われていました。
【高橋秀光店長】「砂糖は、何度も値上げなってますね」
民間の調査会社・帝国データバンクは、ハムやソーセージなどの加工食品を中心に4月の食品値上げは2806品目で半年ぶりの「値上げラッシュ」になったと発表しました。
要因の1つとされているのは、いわゆる「2024年問題」。 トラックのドライバーなどの残業の上限規制が1日から始まった影響で物流のコストが上昇し、食品の価格にも影響を与えています。
こちらのスーパーでは…、
【フレッシュマーケットアオイ八尾山本駅前南店・高橋秀光店長】「弊社の方では235品目が値上げの対象。お酒では、ウイスキー・ワイン、食品では、みそ・砂糖・七味・一味・インスタントコーヒー・果汁のジュース。今後も値上げという流れが続いていくと思いますので厳しい状況になっていくんじゃないかなと思います」
度重なる値上げにお客さんは…
【買い物客】「今100円で買えるようなお菓子がなくなってしまって量も減っているし、値段も上がっているなっていう…どこまで上がるのかなって」
【買い物客】「オリーブオイルとか亜麻仁油とか油系が高いなと思います。一番感じているのはオリーブオイルですかね」
そのオリーブオイルも5月さらなる値上げが決まっています
ヨーロッパでの記録的な干ばつによるオリーブの不作などが影響し、日清オイリオグループは、5月納入分から家庭用のオリーブオイルを最大なんと64%値上げすると発表。J-オイルミルズも、最大66%値上げすると発表しています。
(Q.5月からオリーブオイルが上がるみたいですが?)
【買い物客】「そうなんですか、ショック。普段オリーブオイルなので」
(Q.けっこう上がるみたいなんです)
【買い物客】「買いだめしないと」
大阪市城東区のイタリアン店にも、オリーブオイルの値上がりの影響が直撃していました。
(Q.オリーブオイル使うメニュー多い?)
【リストランテ・イル・コンティヌオ 上野知希オーナー】「前菜からメインディッシュまですべてのものに使いますね。大体20リットルくらい使う」
断続的に上がり続けているオリーブオイルの仕入れ価格は、4月からさらに上がったといいます。
【リストランテ・イル・コンティヌオ 上野知希オーナー】「1割、2割の話じゃないオリーブオイルに関しては上り幅が相当テカいので厳しい」
この店では去年一度値上げを行ったということですが、このままではさらなる値上げも検討せざるを得ないといいます。
【リストランテ・イル・コンティヌオ 上野知希オーナー】「値上げはしたいなぁと思いますけど、何度も何度も上げていくと、その辺はお客さんも敏感に反応していくということで」
そしていま、大ピンチを迎えているのがチョコレートです。明治は4月から「きのこの山」や「たけのこの里」を値上げすると発表。森永製菓もチョコボールを6.5%値上げするとしています。
不二家のカントリーマアム、価格は変わりませんが19枚から1枚少なくなって、18枚入りとなり「実質値上げ」となっています。
その背景にあるのは…
【dariK襖田朋子さん】「カカオの価格は去年ぐらいから上がってきたんですけれども、今年、特に数カ月で倍とかに上がっている状況で、非常に顕著に上がっている」
「ビーンショック」といわれる世界的なカカオ豆の価格の高騰。 ニューヨーク市場では、昨年末には1トンあたり4000ドル程度だったカカオ豆の先物価格が、2024年に入って一時1万ドルを上回り、わずか3カ月で2倍以上となっています。チョコレートの専門家は、現状についてこう話します。
【チョコレートジャーナリスト・市川歩美さん】「大きな理由はカカオ豆の不作なんですね2023年カカオの主要な生産国、コートジボワールやガーナで大雨やかんばつでカカオ農家の方がなかなか収穫できない状況が続いた。(業界は)カカオ豆をどう調達するかにも対応を迫られている」
「チョコレート危機」ともよばれるこの状況。京都で生まれ、全国各地の百貨店などでも取り扱われるチョコレートショップ「dariK」でも、1日から一部商品を値上げすることになりました。
【dariK襖田朋子さん】「これから収穫期になるのでさらに上がってくる可能性もありますし、お客さまがどういう反応をされるのかっていうところが心配」
「dariK」はインドネシアのカカオ農家と直接契約しています。定期的に行っているミーティングで、農家の口から聞こえてくるのは、世界的な「カカオ争奪戦」の現状です。
【dariKスタッフ】「今聞いたんですけど、やっぱ他の競合がかなり多いですよね。計算よりもちょっとだけ高く買っているみたいな。そこの価格競争が起こり始める、中間の価格競争が激化しているよって話をしてくれてました」
そんな中で、消費者に選ばれ続けるための策は「プレミア感」。
「dariK」では農家と直接コミュニケーションができる強みをいかして、現地で「フルーツ発酵」という特殊な技術でカカオ豆を発酵させ、より香りが華やかなチョコレート作りを研究しています。生き残りのためには、「高くても買ってもらえるチョコづくり」が必要です。
【dariK襖田朋子さん】「ちょっと違う取り組みをしているから、値段にも反映されているし味も美味しいよねと。いいカカオを作っているといいチョコレートができるんだって、お客さまに実感していただけるのではないかと願ってます」
異常な価格高騰の中で今後、値上げにも負けない新たなチョコレート文化が育つのでしょうか。