タクシー不足を解消するため、一般ドライバーが有料で乗客を運ぶ「ライドシェア」が、来年4月から大幅に解禁されることになりました。ただ、運行の管理はタクシー会社が担うことになっていて、タクシー業界からは、「うまくいかないのでは」と困惑する声が上がっています。
【岸田首相】「深刻となっている地域交通の課題を踏まえ、ライドシェアの課題に対応し、地域の自家用車や一般ドライバーを活用した、新たな運送サービスを、来年4月から開始します」
一般のドライバーが自家用車を使って、有料で客を送迎する「ライドシェア」。海外で導入が進むこの事業が、いよいよ日本でも解禁されます。
政府の会議で示された来年4月からの新制度案は、以下の通りです。
・ライドシェアが利用できるのは、タクシーが不足している時間帯や地域に限定
・利用者は配車アプリで依頼することを想定
・安全性を確保するため、タクシー事業者が運行管理を行い、事故が起こった場合の賠償責任もタクシー事業者が負うよう検討しています。
■街の人は安全性に不安を感じつつも期待の声も
街の人からは、不安と期待の声が聞かれました。
【街の人】「責任というところ(が気になる)かな。安全の。運転手が少ないと聞いているので、本当に必要な時にはありがたい」
【街の人】「父や母は腰が悪いから。辺ぴな駅だったら必要かなと思います」
■タクシー会社の本音「そううまくはいかない」
地方の交通手段になればと願う声があるなか、「そううまくはいかない」と大阪のタクシー会社は異論を唱えます。
【日本城タクシー 坂本篤紀代表取締役】「誰が田舎で(ドライバー)すんねん。普通に考えたら、売れるところに来るやんか。『大阪府全域でやります』と言ったら、『泉南の方でライドシェアやります』と言っても、人の集まる梅田に来るやん」
ライドシェアの働き手が地方よりも利用者の多い都心に集まってしまい、都心でタクシーがあふれかえるだろうと危惧しています。 また、京都などのオーバーツーリズム対策としても期待はできないと考えます。
【日本城タクシー 坂本篤紀代表取締役】「ライドシェアで解決したら車1センチも動けへんようになる。だって、バスは渋滞で動けへんし。訪日外国人をタクシーで解決するのは不可能やわ」
■ライドシェア解禁に備える会社もあるが、課題は山積み
一方、別の大手タクシー会社の担当者は、ライドシェア解禁に備え、一般ドライバーの研修を行う体制を整え始めていると話します。
【大手タクシー会社】「当社ではかなり採用に関しても厳しく基準を設けていて、面接2回、運転チェックも2回行っています。合格率も相当低い状況。安全の運行責任をタクシー会社が、(負う)ということであれば、タクシーでもライドシェアでも人命を預かる身としては、教育の基準は絶対に崩すことができないです」
しかし、数え上げたらきりがないほど課題が山積しているといいます。
【大手タクシー会社】「われわれは、ほぼ運転席と助手席を覆うような形の防犯板、強化プラスチックでできた防犯板の設置や、緊急通報装置を装備しています。そういったところで乗務員の安全を守るためにいろんな施策をしています。じゃあライドシェアの場合どうするか。例えばコンパクトカーや軽自動車に乗っている方が郊外から出てきて、スーツケース載りますか?たぶんタクシーメーターも必要になってくると思うんですよ。あれも1台何十万もするんですよ。しかもタクシーと違って流しができないですよね、おそらく今の想定ですと。働きたいと思う人がどれくらいいるか、まったく見えてこないですよね」
現場から上がる不安の声。ライドシェアは本当にうまくいくのでしょうか。
(関西テレビ「newsランナー」 2023年12月20日放送)