台湾の蔡英文(さい・えいぶん)総統が、アメリカでマッカーシー下院議長と会談しました。台湾の総統がアメリカで下院議長と会談するのは初めてで、中国政府が反発し、現地では中国派と台湾派が激しくもみ合うなどの衝突も起きています。
緊迫する状況を受けて、「newsランナー」取材班は台湾へ入りました。上海支局の森特派員が現地の様子を取材しました。
■市民は”歓迎ムード” その一方で警戒する声も…
【関西テレビ・森雅章特派員】
「台北市内の中心部にいます。街はいつものように多くの方がいて、普段と変わらない様子です」
【関西テレビ・森雅章特派員】
「市民に話を聞きますと、会談については多くの方が歓迎ムードという感じでした。また、現地ではこのように報じられています。
こちら政権側の民進党寄りとされる新聞ですが、ここには『台湾とアメリカは新たな段階に入った』と好意的な受け止め方の記事があります」
【関西テレビ・森雅章特派員】
「一方、こちらは中国寄りとされる新聞です。『二人の会談後には台湾は危険な三角関係に陥る』と書かれていて、メディアの報じ方も分かれています」
(Q. 太平洋に中国の空母が航行しているというのも確認されていますが、台湾国内では警戒感は高まっているのでしょうか?)
【関西テレビ・森雅章特派員】
「市民の中には警戒する声もあります。政府に対して『命と財産をしっかり守って欲しい』という声や、『中国がこれまでにない反応をしてくるかもしれない』という不安の声も聞かれました」
■”有事”に備え台湾には全人口の2倍以上を収容できる「シェルター」が
【関西テレビ・森雅章特派員】
「ただ、中国との緊張状態は今に始まったわけではなく、ここ数年続いています。有事に備えて台湾全土には9万カ所の”防空シェルター”が備えられているんですね。台湾の全人口の2倍以上を収容できるということで、備えは常になされている、そんな状況です」
台湾市民からは今回の会談を歓迎する声がある一方、中国の動きへの懸念も聞かれ、街ではそれに対する備えも強化されている状況です。
今回の蔡英文総統とマッカーシー下院議長との会談に対して、「必ず反撃する」としている中国ですが、その中国の動きを解説します。
■前回のペロシ下院議長との会談時と異なる中国の動き その背景は…
2022年にペロシ下院議長(当時)が台湾を訪れた際、中国は台湾周辺で大規模な軍事演習を実施し、弾道ミサイル11発を発射して、そのうち5発が日本の排他的経済水域に着弾しました。
今回は中国海軍の空母「山東」が太平洋を初めて航行していますが、実弾訓練などといった動きは今のところ確認されていない状況です。
【関西テレビ 神崎博デスク】
「今回は、台湾にもアメリカにも、中国に一定の配慮があったとみられています。前回はアメリカ(当時のペロシ下院議長)が直接台湾に乗り込みました、こうなるとやはり中国としては『反発して意思を示さねば』となり、ミサイルを撃ち込んできました。
今回は当初、マッカーシー下院議長が直接台湾に行くという話もありましたが、台湾側から『それは待ってくれ』となりました。そこで、蔡総統が中米を訪問するので、”乗り継ぎ”のついでにマッカーシー下院議長に会う…というようなカタチで、中国をなるべく刺激しないように配慮しました。なので前回のペロシ議長の台湾訪問時のようなミサイル発射などの反応は起きていないということですね」
今回は中国への配慮を見せているという神崎デスクの見解でしたが、安藤さん、どうご覧になりますか?
【ジャーナリスト 安藤優子さん】
「台湾の人が戦争を望んでいるとは到底思えません。最新の世論調査などを見ると、”現状維持”という中間派が多数です。これは『今の生活を守りたい』という意思ではないでしょうか。そこを見誤るのは、ちょっと違うのではないかな…と思います」
アメリカでの会談を歓迎する一方、警戒感もある台湾。市民の意思を冷静に、しっかりとくみ取っていくことが大切なのかもしれません。
(関西テレビ「newsランナー」4月6日放送)