トマトにコーヒー、イベリコ豚まで! 「機能性表示食品」最前線 市場規模は10倍以上に拡大 【ヒットにワケあり!オカネのヒミツ】 2022年03月15日
2004年に発売された、伊藤園の『お~いお茶 濃い茶』。
機能性表示食品にリニューアルした2019年9月から、前年同月比30カ月連続で売り上げが伸び続けていますが、実は中身・製法・価格、何も変わっていません。
ただ「機能性表示食品」として改めて販売したことが、購入のきっかけにつながったということです。
伊藤園の広報担当者に聞いたところ、「お茶の健康価値と『体脂肪を減らす機能』を明確にアピールできたことが大きな要因に」と分析しているそうです。
とどまるところを知らない機能性表示食品の広がり。
ヒットの秘密を取材しました。
■市場規模は2015年から2021年までで10倍以上に
今、健康食品の新ジャンル「機能性表示食品」が絶好調。
体にうれしい健康効果などの機能性を表す食品で、大阪市のフレッシュマーケットアオイ昭和町店を取材すると、お茶に炭酸水、ノンアルコールといった飲み物から、チョコレートや調味料、まさかのトマトにまで機能性表示食品のマークが付いていました。
アオイサポート 内田寿仁社長:
「売り上げも大変伸長しております。去年1年間の売り上げを前の年と比較したところ、20%ほど売り上げが伸びています」
実際、その市場規模は年々右肩上がりで、機能性表示食品の制度が始まった2015年から2021年までで、10倍以上も拡大しています。(出典:富士経済)
各社もこぞって新商品を発売していて、2021年12月には、血圧を下げる効果が期待される機能成分GABAを含んだ、業界初という「たらこ」などが登場。
また、和歌山県の紀州南高梅を使った飲料メーカーとのコラボ商品は、2月のリニューアルでクエン酸が持つ疲労感を減らすという機能性を新たに表示。
売上も好調のようです。
和歌山県 食品流通課 稲葉有里さん:
「健康志向の人も増えている中で、より県産品のPRにつながるのではないかと思います」
■ブランド力等アップのためコストをかけてでも付加価値を
広がる機能性表示食品。その裏側にはどんな秘密があるんでしょうか。
向かったのは神戸市に本社を構えるコーヒーメーカー「UCC上島珈琲」。
2021年9月に発売したという商品が…。
UCC上島珈琲 製品開発部 杉山結樹子さん:
「無添加のレギュラーコーヒー100%の機能性表示食品になります」
コーヒー豆に含まれるクロロゲン酸類は、食後の血糖値の上昇を緩やかにする機能があるとされ、独自の焙煎技術などで、より多くの成分を含んだコーヒーが開発できたそうです。
杉山さん:
「味覚としては、華やかな香りとまろやかな味わいが特徴です。開発のため研究的な要素が入ってきますので、臨床試験やデータの分析などを含めるとコストはかかりますが、コーヒーとしてのおいしさを保ちながら、かつ機能性を持たせるというところで、競合他社との差別化ができます」
健康志向が高まる中、機能性という付加価値をつけることで、売上やブランド力のアップにつなげたいという狙いがあるようです。
■機能性表示食品とトクホ(特定保健用食品)の違いとは
ところで、健康増進効果を表示した商品には、「特定保健用食品」通称「トクホ」もありますが、何が違うんでしょうか。
機能性表示食品の制度に詳しい専門家は…。
大阪大学大学院 森下竜一教授:
「基本的にはトクホも機能性表示食品も、効果のある成分が当然入っていないといけない。例えばトクホの方が、量が多いとか、そういうことはありません。それはそれぞれの企業の考え方を基に設定されています」
森下教授によると、2つの違いは成分の量ではなく、表示された効果や安全性を国が認めているかどうか。
機能性表示食品の場合、消費者庁に根拠となるデータなどを届け出て受理されれば、事業者などの責任で食品に期待される効果を表示することができるそうです。
また販売された後も、消費者庁が、表示と実際に含まれる成分量などが正しいかどうか監視しているといいます。
森下教授:
「あくまでも届け出ではあるんですけれども、安全性あるいは商品の品質も、すべて消費者庁のホームページ上で公開されますので、ある意味いい加減なことができないと」
届出数は年を追うごとに増えていて、食品のジャンルも多様になっています。
■野菜の機能が分かりやすくなり消費者のメリットにも
今、農業の分野でも積極的に届け出が行われていて、野菜の品種開発を手掛ける種苗会社の研究農場を訪ねると…。
タキイ種苗 研究員 富永直樹さん:
「甲子園球場17個分の広さがあります。トマトやピーマン、タマネギなど栽培しています」
高齢化社会での機能性野菜の活用を見すえた研究を20年以上前から続けているタキイ種苗。
野菜が持っている機能性成分を、より多く含んだ品種を20種類以上も開発しています。
中には、機能性表示食品としてすでに流通している野菜も…。
富永さん:
「こちらに並んでいるのはGABAという成分、あとはトマトで有名なリコピン。それらの成分が非常に高くて、一定の健康機能があると届け出された成分です」
生鮮野菜は天候によって品質が左右されやすく、育て方で機能性成分の量が変わるという苦労も…。
今はタマネギでの届け出も目指しているそうで、タマネギが持つ認知機能の改善に役立つとされるケルセチンを、通常の約1.5倍多く含んだ品種も。
富永さん:
「野菜ってこんなに体にいい成分が含まれているんだというような、手に取るきっかけに。野菜がもともと持っている力を再確認していただいて、機能性表示食品であれば、こういう効果があるんだというのが目に見えて分かるので、消費者のメリットにもなると思います」
■外食の価値向上を…機能性表示が新たな一手に
薄田キャスター:
「ちょっとこちら、世界初イベリコ豚で機能性表示食品認定ですって」
届け出たのはイベリコ豚の輸入を手掛ける大阪の会社で、その豚肉を提供する「イベリコ屋 北新地店」に向かってみると…。
タイシコーポレーション 山本真三社長:
「イベリコ豚のレアル・ベジョータという最上位のランクのもので取らせてもらいました」
イベリコ豚の希少品種レアル・ベジョータの脂には、コレステロールの値を改善する効果が期待されるオレイン酸が豊富に含まれているそうです。
海外産の豚肉の届け出は前例がなかったこともあり、受理されるまで3年かかったといいます。
山本社長:
「このイベリコ豚の価値をもっと高めていこうということで、お肉を食べながらも健康になれるのは、これからウケるんじゃないかとチャレンジしました」
新型コロナの影響を受ける中、機能性の表示は外食産業の新たな一手だといいます。
今、機能性は精肉の状態でのみ表示でき、調理すると成分が変わるため表示できなくなります。
しかし、熟成させるとオレイン酸の量がさらに増えることが分かり、今度は生ハムで届け出ようとしています。
山本社長:
「外食産業の価値を高めていきたいので、食べるだけでなく健康にも良くなるという、さらに一歩踏み込んだものを提供していきたいと思います」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年3月15日放送)