京都の弁護士たちが、自民党の京都府連の西田昌司会長らを刑事告発しました。選挙前に、買収をしていたのではないかとの疑惑があるというのです。府連の元職員を取材すると、「買収目的」のために行ったとされる、不可解なお金の流れが見えてきました。
■「いわばマネーロンダリング」引継書に驚きの文言
「議員1人につき50万円」「公職選挙法上は買収」「いわばマネーロンダリング」
関西テレビが、関係者から入手した自民党・京都府連職員の「事務引継書」。元事務局長が作成したもので、驚く文言が並んでいます。
一体、この言葉は何を意味するのでしょうか。今回、長年、自民党・京都府連で働いていた元職員に話を聞くことができました。自民党京都府連では、公職選挙法違反の買収目的を隠すために、裏工作が行われていたというのです。
【自民党京都府連 元職員】
「運動員買収ですよね。違法性を認識しているので、そこをごまかしたいという意識。府連の公党を通してぱっと見、分からなくしている」
■地方議員に1人あたり50万円 「構図は広島と変わらない」
京都府連の会長・西田昌司参議院議員が代表を務める団体のお金の出入りが記載された報告書。
2019年5月31日に、京都府連に1020万円を寄付しています。
そのおよそ1週間後の6月8日、京都府連は京都府議会議員や京都市議会議員が代表を務める団体に、20万円を交付しています。
その数は51人で、合わせて1020万円。西田議員が寄付をした総額と、ぴったり一致します。
お金が交付された次の月には、参議院選挙が公示され、西田議員も出馬しました。
元職員は、西田議員が地元議員に選挙で協力してもらうために、お金を配ったと考えています。
20万円を配ったその半年前にも、30万円を配った記録があり、総額は、議員1人あたり50万円に上るということです。
選挙に出馬する候補者が、当選を得るために、人にお金を渡すことは法律で禁止されています。また、お金を受け取った側も処罰されます。
地元の市議・府議は、国会議員を当選させるために、応援演説に駆け付けるなど、様々な労力を費やします。何かとお金もかかります。
そこで、選挙で戦う候補者が、直接お金を渡すのではなく、一度自民党の京都府連にお金を寄付。寄付を受けた京都府連が、地元議員にお金を渡す「マネーロンダリング」システムが構築されたと、元職員は証言します。
【自民党京都府連 元職員】
「時系列で並べると、入ってすぐに出ているので、単に通過しただけ。府連は通過しただけという意識。そこを当時の事務局長は、マネーロンダリングだと。まさに選挙のための選挙対策。選挙のお願いをして、自由になる金を議員に現金で渡すという構図は、広島と変わらない」
西田議員に、お金の流れについて説明を求めると…
【自民党京都府連 西田昌司府連会長】
「全く事実誤認ですね。全く事実誤認。事実誤認というか、事実無根。近々、事実関係を整理して、皆さんに発表することを準備中。会見じゃなくてね、私も忙しいので文書・もしくはユーチューブで発信しようかと思っている」
【記者】
「ユーチューブとなると質疑の時間が取れなくなってしまう」
【自民党京都府連 西田昌司府連会長】
「だから、そういうことも含めて、きっちり私のほうでやりますから」
■自民党の元国会議員が振込の事実認める
このお金の流れについて、京都6区が地元で、衆議院議員を3期務めた、安藤裕元議員に話を聞くことができました。
【京都6区 安藤裕元衆議院議員】
「そのお金を振り込んだのは事実です。時期は解散になってから選挙前までの短い間。地域の府議会議員の数×50万円ということで、これをこの日までに振り込んで下さいと、府連のほうから指示が来ますので、その通りに振り込むと」
安藤元議員は、1回目の選挙で250万円、2回目以降の選挙では300万円、京都府連にお金を寄付したといいます。地方議員にお金が渡ることは認識していたものの、使い道について、府連から詳しい説明を受けたことはなかったそうです。
【京都6区 安藤裕元衆議院議員】
「選挙直前なので、合法だという話はされていましたけれども、見方によっては、変な風に受け取られる恐れはないのかなと感じました」
■野党も国会で追及
国会では野党議員が、京都府選出の参議院議員、二之湯智国家公安委員長を追及しました。
【立憲民主党 階猛衆議院議員】
「あくまで京都府連と示し合わせたわけではなく、ご自身が勝手に自己完結的に1440万円寄付したということでよろしいんでしょうか。京都府議や京都市議48人の団体に30万円ずつ支出されており、その金額を積算すると、同じ1440万円にぴったりなるんですよ」
【二之湯智 国家公安委員長】
「決して京都府連と相談しながらこのお金を寄付したものではない。私は私の判断でこの寄付をし…」
二之湯国家公安委員長は、組織的買収を否定しました。
■50万円を袋詰め 階段に議員並ぶ 「政権与党のすることか」
しかし、元職員は、お金の受け渡しについて、こう証言します。
【自民党京都府連 元職員】
「国会議員もしくは候補者に、府連の口座支店に振り込んでくれと連絡を入れて、振り込んでもらう。それを全部引き出してきて、50万円に袋詰めにして、領収書を用意して事務方が当日を迎えると。幹事長から候補者を原資とするお金を、のちほど3階でお渡ししますという説明がされて。3階の役員室なり応接室まで行くのに、階段に議員が並ぶ、現金をもらって帰ると」
現金を受け取ったある京都市議会議員は、関西テレビの取材に「コメントできない」と口を閉ざしました。
【自民党京都府連 元職員】
「発案者、西田先生はできるだけごまかしたい意図は見えているので、違法性は感じていたのかと。なんぼトンネルしたとはいっても、クリーンにはなってないですよ。それをさも適法みたいに言っているけど、そういう言い方で今回何もなく終わってしまえば、他府県も皆真似をする。政権与党がやるべきことではない」
後日、西田議員は、ユーチューブで2回に渡って、買収目的を明確に否定し、府連からのお金の支出は、選挙活動や買収のための費用ではなく、自民党を広く知ってもらい、党員を獲得するために使う費用だったと説明しました。
【自民党京都府連 西田昌司府連会長】
「(渡したお金は)広報紙の配布や、政党の演説会。これは全国で、またどの政党でも行われている政党による党勢拡大運動でありますが、こうした行為は、選挙運動とは明確に区別されており、各地域の選挙管理委員会も認めているところであります。適正かつ公明正大に収支報告をしているところであり、選挙買収を指摘される理由は全くありません」
■弁護士らが刑事告発
2月28日、20人の弁護士人が、京都府の選挙区から出馬した自民党の候補者7人と、地元議員52人の行為は買収にあたるとして、京都地検に刑事告発しました。
代表弁護士は、「選挙運動のための金銭交付であることは、否定し得ない」と指摘しています。
告発に対して、自民党京都府連は、「しっかり主張していきたい」とコメントしました。
政治家を巡るオカネの問題は、度々湧き起こります。国民に信任されて選ばれた議員であるなら、国民が十分納得するまで説明が求められます。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年2月28日放送)