最新のAI技術で、極めて精巧に作られた偽動画「ディープフェイク」。
政治の世界での悪用に加えて、私たちも被害に遭う恐れがあります。
いま注目の「ディープフェイク」を、詳しく「深掘り」してお伝えします。
本物?偽物?広がる「ディープフェイク」動画
トランプ大統領のそっくりさんのスピーチを、AI技術で本物に近づけた「デイープフェイク」動画。
アメリカのベンチャー企業が作ったもので、膨大な量の画像をAIに学習させ、専用のアプリなどを使えば、このような動画を作ることが可能になります。
11月3日に行われるアメリカ大統領選など、政治の世界での悪用が不安視されています。
オランダのデータセキュリティ会社「センシティ社」が、インターネット上にアップされている「ディープフェイク」動画の数を調べたところ、2018年には7964件だったものが、去年は1万4678件と倍増していました。
「ディープフェイク」の懸念は政治だけではない…
【桜美林大学・平和博教授(メディア論)】
「ネットでは専門のアプリも出回っている。一定の知識と機材があればディープフェイク動画は自作できる。作製を請け負う業者もある」
専門的な知識と機材があれば、誰もが作れてしまうという「ディープフェイク」動画。
悪用が懸念されているのは、政治の世界だけではありません。
たとえば、企業のトップなどが嘘の情報を語っているディープフェイクが出回れば、ネガティブキャンペーンや営業妨害につながります。
家族の偽動画を作られると「振り込め詐欺」や「脅迫」に使われる恐れもあります。
そして、すでに被害が確認されているのが「偽ポルノ」。
実は、存在しているディープフェイクの96%がポルノ関連で、外国ではすでに一般の方にも被害が出ているということです。
ホント?ウソ?見分けることが困難な時代に…
「ディープフェイク」がより本物に近づけば、大きな混乱も生まれるかもしれません。
実際にこんなことがありました。
2005年、トランプ大統領がテレビ番組の収録前に卑猥な発言をしていた動画が、2016年の大統領選中に報道されました。
当初はこの発言を認めて謝罪していたトランプ氏でしたが、大統領に就任すると、上院議員や側近に「動画はフェイクだった」と公言するようになったのです。
SF映画のような話ですが、ディープフェイクが本物に近づけば近づくほど、トランプ大統領の「フェイクだった」発言も、信ぴょう性が増すことになります。
本物?偽物?見抜くためには…
その動画が「本物」なのか「偽物」なのか見抜くためには、どうすればいいのか?
【桜美林大学・平和博教授】
「偽動画を“見破るAI”による対策が必要。しかし“見破るAI”“作製するAI”ともに技術は追いつ追われつ」
AIのイタチごっこのような状態になってしまっているというのです。
情報の発信をする私たちも、日々接する情報の精査を徹底し、情報を受けとる皆さんも、冷静な対応を。
周りにシェアする前に一旦冷静になるよう意識することが重要になってきそうです。