来春に倒産件数が“加速度的”に増加? トラック業界は燃料費の高騰などで苦渋 「ゼロゼロ融資」終了で恐ろしい反動が中小企業を襲う? 日本経済の「足腰」どうなる 2022年10月07日
10月7日、調査会社が会見し、来年の春、「倒産件数は加速度的に増加する」との見通しを示しました。一体、何が起きているのでしょうか?
■苦境にある運輸業 課題は荷主への「価格転嫁」
10月7日、調査会社「帝国データバンク」と「東京商工リサーチ」が、近畿2府4県の企業の倒産状況を発表しました。
【東京商工リサーチ 山本浩司部長】
「業種で見てみますと、昨今のコスト高を販売価格に転嫁できない建設業や運輸業といった業種が2022年の上半期には増加している状況にあります」
2022年度上半期の倒産件数は800件と、前年の同じ時期に比べ17件の増加にとどまりましたが、運輸業の倒産はこの半年で41件と、じりじりと増えているというのです。
東大阪の運送会社でも、苦境が続いているといいます。
【HTHロジ 八田俊吾社長】
「燃料費は1.5倍。単純に1.5倍なので非常に苦しいです。単純に100円のものが150円になったイメージなので。今が一番高いですかね」
日用雑貨や園芸用品などの運送を行うこの会社では、燃料費が上がる中、さまざまな努力を積み重ねています。安全性を確保するとともに少しでも燃費を良くしようと、トラックは買わずに5年ごとに借り替え。ドライバーの運行記録から、急減速や急発進をしないなど安全と燃費に良い走りを点数化。満点のドライバーにはお米をプレゼントするなど、工夫を凝らしています。
しかし、上がっているのは燃料費だけではありません。
【HTHロジ 八田俊吾社長】
「人件費なんてどうだろう、この10年で100円、200円と上がってきましたけど、全く(運送費に)転嫁されないですからね。結局会社の自助努力、という形なので」
苦境にあるトラック業界が、束になって取り組もうとする動きがあります。10月7日、大阪府内の運送業者およそ3600社が加入する大阪府トラック協会では、ある「講座」が開かれました。
【大阪府トラック協会 滝口敬介 専務理事】
「大阪、荷主手ごわいです。日本一厳しい荷主さんがいらっしゃるのかなと思います。一緒に学んでいきたいと思います」
トラックによる運送費について、国は「標準運賃」を定めています。これを荷主に理解してもらって価格転嫁を進め、増える輸送コストへの対応だけでなく、ドライバーの労働環境を改善し、人手不足の解消を図る必要もあるのです。
【大阪府トラック協会 滝口敬介 専務理事】
「『うちはこれだけ人数が減っていきますので、運賃料金上げていただかないといい人材が集まりません』とか、『車両費がこれだけ上がってきてます』とか、具体的な自社の数字を持っていただけたら。『大変ですねん』て、歯が痛いのと一緒で相手に伝わらんよ、どれだけ痛いのか」
【参加した社長は…】
「(交渉の)机に着いてくれないところも多々あります。以前は向こうから『そろそろ上げましょうか』と話があったんで、昔の方が楽でした」
「原材料の分を値段上げたいのに、物流費まで一緒に上げるのは難しいと。『何とか、何とか』と言われるのが多いんですよね。労働環境を良くして、それが賃金に転嫁できるようにしていけたらなと」
■「ゼロゼロ融資」の返済迫る
さらにもう一つ気になるのが、「ゼロゼロ融資」の終了です。ゼロゼロ融資とは、新型コロナの影響で売り上げが減った中小企業に、実質無利子・無担保で融資する仕組みで、2020年3月に政府系金融機関などが開始しました。
それにより抑えられていた企業の倒産件数が、2023年の春から増えるとみられています。
【帝国データバンク 晶木裕司部長】
「企業の財務状況というのはこれからもっと厳しい状況になっていくだろう。今後、下半期にかけて倒産件数は加速度的に増加すると懸念される」
婦人靴を製造し、催事などで販売している大阪市内の靴メーカーも、コロナの影響で催事が開催できず、ゼロゼロ融資で数千万円を借りたといいます。
【新宿屋 丸吉肇社長】
「だいたい月に20~30会場、日本全国に催事に行って販売させてもらってるんですけど、それがゼロに近くなったので。保証料ゼロで利息も国が(補てん)してくれるので、すごく助かるのは間違いなかったです」
返済は来年以降にピークを迎えるということで、今後に不安を抱えています。
【新宿屋 丸吉肇社長】
「返済できるかできないかで言えばできるんですけど。一回出して終わりじゃなく、猶予をもう少しもらえればいいなと」
■ゼロゼロ融資の反動で倒産の危機?
近畿地区の上半期の企業倒産件数は、2009年のリーマンショック時に2000件を超えた後は年々減少し、近年は下げ止まりとなっていました。コロナ禍に入った2020年3月に総額55兆円のゼロゼロ融資が始まり、その効果もあって倒産件数はさらに減少。2022年の倒産は800件となっています。
しかし、この融資の利子の支払いが来年3月から始まります。経済状況が回復しないまま、借金を返せずに倒産する企業が増えると懸念されています。
報道ランナーに出演する京都大学大学院の藤井聡教授は、「ゼロゼロ融資の終了予定が2023年3月になっているのは、コロナ禍が終息して景気回復しているというイメージでそうなったものです。実際は、コロナ禍は終息せず、円安やエネルギー価格の高騰、ウクライナでの戦争などの影響で経済は“地獄状況”が続いている。ゼロゼロ融資の終了時期をイメージした時の前提が、全く違ってきているので、融資を続けるのは当然です。もっと景気が悪くなっているので融資の拡大も必要」と指摘します。
コロナ、物価高、円安と、苦境が続く日本の経済。今後、どうなっていくのでしょうか。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年10月7日放送)