大阪・守口市の大型ショッピングモール。
売り場の一角には所狭しと並んだ肌着の数々が・・・
【薄田アナウンサー】
「例えばこちらのメンズの商品では保温や、静電気防止のもの。レディースでは遠赤外線を放つもの。
このように機能性に優れたものが各メーカーからたくさん出ているんですね」
実はこちらのショッピングモール、
去年、西日本で初めて肌着などを中心とした専門の売り場を出店しました。
【肌着を買いに来た客】
「薄くて暖かいもの」
「やっぱり暖かいもの。ヒートテックとか」
出ました、「ヒートテック」!
こうした機能性肌着の人気は年々高まり、
その代名詞「ヒートテック」はおととし累計販売数「10億枚」を突破!
肌着ムーブメントを起こしました。
この王者に対抗しようと、ファッション通販大手「ZOZO」は去年、「ZOZOHEAT」を発売するなど、
肌着はまさに群雄割拠、戦国時代を迎えているのです。
そんな中、わが関西に下剋上を狙う肌着があるということで兵庫県加古川市に。
【薄田アナウンサー】
「のどかな風景の中にみえてきました。黄色い建物!『もちはだ』と書いてあります。さっそくお邪魔しましょう」
もともとは靴下作りからはじめたこの会社は「もちはだ」というブランドで様々な商品を展開しています。
ワシオの3代目・鷲尾岳さん(27)に案内してもらいました。
【ワシオ株式会社 統括本部長 鷲尾岳さん】
「手をつっこんでみてくださいよ」
【薄田アナウンサー】
「サンタクロースみたいな靴下。ほんとだ~きもちいい~」
【鷲尾岳さん】
「南極に冒険にいった植村直己さんが履いていたんですよ」
【薄田アナウンサー】
「本人が選んで履いてた訳ですよね。すご!南極にも対応してる靴下ってことですか」
同じ兵庫県出身の世界的冒険家・植村直己さんも南極探検に出る際、もちはだの靴下を使用していたというんです!
ではこの「もちはだ」がどうやって生み出されているのか、工場を見学させてもらいました。
【薄田アナウンサー】
「機械がいっぱい」
中に入ると金属音を立てながら生地を織る機械がずらり。この工場では約110台が稼働しています。
まさに町工場!織られたばかりの袖の部分を見せてもらうと・・・
【鷲尾岳さん】
「これは袖です。(インナーの袖になる)筒が入ってるんですよ。ここでつながってるんです」
【薄田アナウンサー】
「お!一瞬で!」
【鷲尾岳さん】
「ここから加工していくんですけど一本の袖」
町工場ならではの機械から生み出される、その秘密はというと・・・
【鷲尾岳さん】
「この起毛がもち肌の特徴なんですけどこの機械で作るっていうのが世界どこ探してもうちしかできない」
どこにも真似できない独自技術、詳しくは企業秘密ということですが、その仕組みはこうです。
通常の起毛は、生地を織った後に毛羽立たせますが、この時、パイルと呼ばれる編目は切れてしまい、空気が逃げやすくなります。
一方、もちはだ独自の起毛は生地を織りながらパイルを切らずに毛羽立たせることが可能に!
空気が2層にたまり逃げづらくなるため、魔法瓶のような働きをすることが暖かさの秘密なんです。
他社の製品と比べるとその保温力は約2倍!
と、いうことで・・・
【薄田アナウンサー】
「もちはだの保温力を試すためにやってきたのはなんと”マイナス20℃”の倉庫です。南極より寒いそうです。では体張ってきます」
【薄田アナウンサー】
「ここで十分寒い」
やってきたのは物流倉庫の冷凍室。
ここでもちはだの生地を使った靴下と市販の裏起毛の靴下を履いて実験します。
【薄田アナウンサー】
「鼻がこきっていった。固まって」
極寒の中、このまま10分間放置されました・・・
【薄田アナウンサー】
「あったかいここ」
靴下を脱ぎ、どれくらい保温されているか調べてみると・・・たしかに!
もちはだを履いた足の方が約3度高くなっています。
普段ここで働く従業員さんにも着てもらい、いつもの作業をしてもらうと・・・
【普段冷凍庫で働く従業員】
「今(いつもより)一枚脱いでます。着た瞬間からぬくくて逆に汗ばむとい思って脱ぎました」
まだまだ秘密はあるはず!ということで、再び工場に戻ると・・・
【薄田アナウンサー】
「まってまってまって」
アパレル工場なのに火花が!?
【薄田アナウンサー】
「うそ~繊維工場なのに溶接工場みたいな」
なんと作業場の一角には火花を散らしながら金属の加工を行う光景が!一体その訳とは???
【小谷章二さん】
「自分で手作りをしてるんです。機械を作ってる」
【薄田アナウンサー】
「ここに並んでる機械は全部小谷さん?」
【小谷章二さん】
「最初はみんなわたしの手を通って」
従業員の小谷章二(こたに・しょうじ)さん(71)はもちはだが誕生した当時から働く社内の最年長。
暖かさの秘密は職人お手製の機械にあったんですね~。
【鷲尾岳さん】
「だいたい新しいことするときは小谷さん。できますかー?、できひんわ!みたいなやりとりがあって。
無茶ぶりばかりですけど・・・」
【小谷章二さん】
「無茶ぶりで結構や」
町工場ならではの手作り感が持ち味のワシオですが、創業以来幾度となく試練がありました。
近年は大手メーカーや海外の格安商品に押され、売り上げは減少傾向に。
3年前にはついに、創業以来の大赤字となりました。
【ワシオ株式会社 鷲尾吉正】
「古くからのリピーターがついてはくれたけど新たな客のとりこみを大きく考えずやってきてじりひん状態」
そんな窮地を救ったのが大学を卒業後、中国で働いていた息子の岳さん。
大赤字となった3年前にワシオに入社しました。
【鷲尾岳さん】
「(入社当時)一つ上が40歳とかだった。平均年齢めちゃめちゃ高くて。
(入社)最初の年、個人的に絶対youtubeの広告がいいってなって。だれもついてこなかったですけど」
社内で賛同者がいない中、釣り人向けのyoutuberを起用して実際に着てもらい動画を作ってもらうと・・・
【釣りyoutuber 『釣りよかでしょう。』】
「寒くない。これ一枚で行けるわ」
これがズバリ的中!売り上げは急上昇!
若い人にも知ってもらうとインターネットを中心に次々とPRした結果、業績は見事V字回復。
大手メーカーより価格帯は高いものの、ネット通販の売り上げも好調です。
【縫製をする門野良子さん】
「いままでは年寄向きが多かったけど若者向きが多くなりました。嬉しいけどね」
【鷲尾岳さん】
「寒いから外出ないとか、布団くるまってるとかもったいないじゃないですか。世界から寒いをなくしたいという思いがあって」
独自の技術力に加え、年代問わず活躍するからこそ作られる「もちはだ」。
みなさんも関西の町工場が生んだ暖か肌着を試してみてはいかがですか?