ネットショッピングなどの勢いが増す中、経営が困難になる町の小売店が増えています。
そんななか、京都に「枠を超えた」サービスで生き残りの道を見つけたお店があるということで取材しました。
まるで家族…お客さんの家で昼食も
従業員の皆さんが、朝から体操で体をほぐすこの店。
京都市伏見区で、電気製品の販売などを行う「長嶋屋」です。
朝礼が終わり、店の人についていくと…
【従業員】
「サチさん~、失礼します」
この日は、頼まれていたインターフォンの点検をして、テレビのリモコンの電池を交換。
「あとさちさん、録画したやつもみたやつ消しとこうか?」
「うん消しといて。」
お年寄りには苦手な操作も含めて、電気のことならちょっとしたことにもご対応。ここで帰るのかと思いきや…
【お客さん】
「食べてください」
【従業員】
「すいません、いただきます」
なんとも自然な流れでお昼御飯です。電気屋さんというより、まるで家族のような風景です。
違う従業員のところに行ってみると…。
こちらの従業員さんは家のリフォーム真っ最中です!
【お客さん】
「全部取り外すんですよ。すごいんですよ、ネズミが。ありがたいことにね、長嶋屋さんが一生懸命やってくれるんで。なにかと細やかに銀行の取引とかも全部やってくれるの」
なんと銀行の取引まで…。この長嶋電機は、「電気店」の枠を超えて地域の“お困りごと”にはなんでも対応しているんです!
ここまでやるにはある理由が…
危機を乗り越え…地域と寄り添う道へ
長嶋屋は、56年前に地域の電気の修理屋として「長嶋電機サービス」をオープン。その後、製品販売と電気工事をメインに営業をしていました。
しかし…
【長嶋屋 長嶋貴生 社長】
「12年前のリーマンショックの時に元受けからの仕事がなくなってきて社員も3、4人いたんで。その人達の生活もあるし食べさせていかなきゃいけないということで。」
経営を支えていた電気工事などの下請け仕事がなくなる危機的状況の中、現在の社長・長嶋貴生さんは店の在り方を大きく変えることにしました。
【長嶋屋 長嶋貴生 社長】
「今までは電化製品とか電気工事をしていたけど本当にもっと困ってることはなに?と(地域の人に)きいたら買い物にもいってほしいし、庭の枝が隣の敷地にはいってしまってる、雑草が伸びてる、それやったらまちのでんきやにできることなんで力になりますというのが始まり。」
各地でみられるシャッター街や昔ながらのお店の閉鎖。
景気だけでなく、大規模量販店やインターネットショッピングの勢いが街の小さな小売店に押し寄せていて、国の調査では全国の商店街の半数以上が「利用者が減った」と答えています。
地元のちいさなお店が生き残るために、長嶋屋が選んだ道は「地域に寄り添う」ことでした。
感動を与えるのが小さい店の使命
時にはこんなことも…
【長嶋屋 長嶋貴生 社長】
「うちのお客さんは高齢のお客さんなんで、ちょっとでも外にでてほしいと思ってイベントをやってます」
お客さんにも呼びかけます
【長嶋屋 長嶋貴生 社長】
「落語会、あと店のイベントもあるんでお待ちしてます」
地域のお店と連携して、定期的にイベントも実施。この日は、創業56年の創業祭と落語会を同時開催。
【長嶋屋 長嶋貴生 社長】
「楽しみですね。準備してるときがね、一番ワクワクします」
開場前、入り口にはすでに長蛇の列が!
お客さんの期待が募る中、落語会がはじまりました。
【落語会参加者は…】
「今日6回目なんですよ。あと5回は寄らせてもらってる」
「(落語会を)心待ちにして。3か月に1回はかならずきてます」
――Q:まちのお店が主催することについて
「すごくいいですね。やっぱり大手スーパーとかあるけどそういうのに比べたら情があるっていうかね」
【長嶋屋 長嶋貴生 社長】
「笑顔を見て、笑い声を見てるとやってよかったなって思います。電気屋とまた違った落語って全然つながりないように見えるけど、やっぱりお客さんにありがたいなってうれしいなって喜んでもらう、感動を与えるのが我々の小さい店の使命じゃないかと」
長嶋社長は、未来をこう語ります。
【長嶋屋 長嶋貴生 社長】
「今やってる事業がうまくいって、地域にとけこんでいって、そのビジネスモデルができて…私が展開するんじゃなくて、全国の地元の企業が展開していってほしい」
危機的状況から、地元の人に愛されるお店となった「長嶋屋」。
地域に寄り添った柔軟なサービスが、ちいさなお店が生き残る新たな道なのかもしれません。