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赤穂市民病院『手術ミス』民事裁判 執刀医と市に賠償命じる判決 腰の神経の一部切断し両脚マヒ05月14日 19:07

兵庫県赤穂市の市民病院で、手術のミスにより、両脚のまひなど後遺症が残った女性と家族が、執刀した医師の松井宏樹被告(47)と市に賠償を求めた民事裁判。

神戸地裁姫路支部(池上尚子裁判長)はきょう=14日、松井被告について「止血をこまめにせず、出血で見えにくい状態のまま手術を進めていて注意義務違反の程度は著しい」などと指摘し、赤穂市とあわせて、およそ8900万円を賠償するよう命じました。

松井被告はこの医療ミスについて、業務上過失致傷の罪で在宅起訴されています。

女性の親族はこの手術ミスを題材に「脳外科医 竹田くん」という漫画をインターネット上で連載し、問題を訴えていました。

判決での松井被告に対する指摘について、原告の代理人弁護士は「基本的なことができていなかったから起こった事案だと裁判所も認めたと認識している」と評価しています。

■歩くことができていたが…手術受け両脚まひ


訴えなどによると、現在80歳の女性は、十分に歩くことができていた2020年、赤穂市民病院で松井被告から、腰の骨が変形することで神経が圧迫され、脚が動きにくくなる「脊柱管狭窄症」と診断され、腰の骨の一部をドリルで削る手術を受けました。

この手術を執刀した松井被告は、誤って腰の神経の一部を切断し、女性は両脚が麻痺したほか、強い痛みが続くなどしました。

女性と家族は、「医師が手術の経験も技量もないのに執刀し、後遺症が残った」などとして、医師と赤穂市に対して、あわせておよそ1億4000万円の損害賠償を求めて裁判を起こしていました。

■女性は『この痛みを治してくれ。足を動くようにしてくれ。そうじゃなければ死ぬ』訴え 「ほかの被害者が救済される道が」と裁判を起こす


【女性患者の親族】「(女性は)手術後に急に足が自由に動かなくなったりとか、普通手術って終わったら手術前よりも良くなってるようなものなのになんでこんなあの足が動かないんだとかそういうことに対して憤りとかも感じていた。

『死にたい』っていうふうな、『この痛みを治してくれ。足を動くようにしてくれ。そうじゃなければ死ぬ』っていうことを言っていました。

裁判によって医療事故の全容を明らかにすることで、ほかの医療事故被害者が救済されるような道があるのかもしれないと思って、民事裁判に踏み切りました」

■松井被告「上司にせかされ…よく削れるドリルに変えたのが最大の原因」主張も上司に「先生のせいではない」とメッセージ送ったこと認める


松井被告はこれまでに裁判で手術の技量がなかったわけではないと主張し、「助手の上司の医師が水をかけて視界が悪く、また手術をせかされ、よく削れるドリル=スチールバーで手術したことが最大の原因」と述べました。

【松井被告(裁判での証言より)】「(助手の上司の医師から)水が大量にかけられて、吸引されない。かなり視界が悪かった」「『何をちんたらやっとるねん。日が暮れる。スチールバーでやれ』と。『いいから替えろ』と押し切られました」

一方で手術翌日にはその上司の医師に「先生のせいではない」とメッセージを送っていたと指摘され、これを認めていました。

<裁判での尋問のやり取り>
【原告側代理人弁護士】「『今回の件(女性の手術でのミスのこと)、先生のせいではありません』というメッセージはあなたが書いた?」
【松井被告】「はい…」

■判決を受けて赤穂市は判決を受けて赤穂市は、牟礼正稔市長として「本日、神戸地方裁判所姫路支部において、赤穂市民病院の医療事故に対する損害賠償請求事件の判決がありました。現時点では、判決の具体的な内容は把握できておりませんが、判決については真摯に受け止め、当院に対する市民の皆様の信頼回復に努め、安全安心な医療の提供に引き続き取り組んでまいります」とコメントしました。

また病院事業管理者として、「判決を真摯に受け止め、引き続き医療安全の推進に努めてまいります」とコメントしています。

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