2022年9月9日(金)深夜1:25~2:25
もやい 福島に吹く風

受賞

ギャラクシー賞奨励賞

内容

表現者と来場者が入り混じるどこか懐かしいアートイベント。
「もやい展」
主催するのは和歌山出身の写真家、中筋純さん。



ラフな服装に無精髭、真っ黒に日焼けした純さんには人を引き寄せる不思議な魅力がある。
軽い気持ちで覗いた客が、気付けば撤収に参加していることも。
純さんは写真家として日本中の廃墟を撮影し、その延長線上でチョルノービリ(チェルノブイリ)に入り、今なお続く原発事故の現実を目の当たりにした。
中筋純さん
その先に福島があった。10年間通い続け、5年前、福島に思いを寄せる人々のアート展「もやい展」を始めた。言いたいことが時に言いにくくなった福島で、荒縄の結び、「もやい」のように再びつながることを願う。

福島から京都府綾部市に避難している井上美和子さん。3年前、原発賠償訴訟での意見陳述や「もやい展」での純さんとの出会いなどをきっかけに朗読劇を始め、次の「もやい展」で披露する。
朗読を聞いた人たちが、いつの日か立場を超えてつながれたらと願う。裁判の原告であると同時に、福島県民として誰かと思いを共有したいという美和子さんの答えがここにあった。
井上美和子さん
純さんは今回、祖国の戦火に胸を痛めるウクライナ人アーティストのマリコ・ゲルマンにも声をかけた。チョルノービリ(チェルノブイリ)原発事故で胎児被爆し、甲状腺障害を抱える。
6年前、マリコは福島で初めて自らの人生について語った。幼い頃から原因不明の体調不良に苦しみ入退院を繰り返した。大人になって初めて原因が被曝による甲状腺障害とわかるが両親と病気については話せなかった。また、自分の人生についてウクライナで話すこともできなかった。
一方、福島でも甲状腺がんで苦しむ人々が増えているにも関わらず、それを口にしにくい現実がある。
マリコは「もやい展」で自分と同じ痛みを抱える子どもたちとつながるための作品に挑んだ。
マリコ
純さんは言う。
「もしかすると今は有難迷惑な話かもしれない。それでも」と。
表現者たちがもやい、見えない現実を伝え続ける。
福島に吹く風のごとく__
マリコ・ゲルマンは過去作「マリアとフクシマ」で取材しています。
こちらのページをご覧ください。

スタッフ

ディレクター
:宮田輝美
撮影
:登島 努
編集
:北山 晃
プロデューサー
:萩原 守