2015年1月17日(土)深夜1:35~2:30

色あせたフェニックス ~震災20年の復興住宅~

内容

阪神淡路大震災から20年となります。被災地は賑わいを取り戻し、復興は成し遂げられたように見えます。しかし、震災で家を失い、自力再建がかなわなかった人たちが暮らす復興住宅は、今も様々な課題を抱えています。
2014年9月に放送した『ザ・ドキュメント~復興住宅 高齢者の反乱~』では、神戸市長田区の復興住宅を舞台に、住民の高齢化が進み深刻な事態となっていることを指摘しました。

続編となる今回の番組では、さらに複数の復興住宅に視点を広げ、孤独や死への不安を感じながら暮らしている復興住宅の住民の日常を見つめ、復興の意味について考えます。

前作の舞台となった兵庫県営西尻池高層住宅は、住居数の9割が高齢者専用で、住民の平均年齢は77歳に達しています。高齢化のために住民同士の助け合いや自治会活動が難しくなっていました。
自治会の副会長は、持病悪化のために引退を決めましたが後継者がおらず、自治会解散について議論が巻き起こりました。
ここまでは前作でお伝えしましたが、その後、家主である兵庫県側の動きも加わって、話は意外な方向へ動き出します。

目を神戸市垂水区のベルデ名谷に転じます。7棟が立ち並び約900戸が入居。大規模な復興住宅として注目を集めました。当初は自治会活動も盛んで、7つの棟それぞれに自治会ができ、活動の活発さを競うような時期もありました。
しかし例にもれず、住民の高齢化が進んで、自治会の活動は低調に。6号棟自治会は今年、会長が亡くなって解散しました。亡くなった会長が世話役だった1月17日の震災犠牲者追悼式典も、2015年を最後とすることが決まりました。ベルデ名谷は今、転換点を迎えています。
震災時に60歳だった人は80歳。これからますます生活支援が必要となってくる時期ですが、支援ニーズに反比例するように地域の力が衰え、外部からのサポートが減っています。

そんな阪神・淡路を見つめているのが東日本の震災被災地の人々です。「明日は我が身」と見えるからでしょうか、被災後20年の兵庫で何が課題となり、どんな対策が試みられているのか強い関心をもっています。
神戸で震災直後から支援活動を始め、今も復興住宅で被災者支援を続けている牧 秀一さんは、東北に招かれて支援者の指導などに飛び回っています。以前から過疎が課題だった地域では、兵庫の被災地で20年かけて深刻化した高齢化の課題が、すぐに現実となりそうです。牧さんは、東日本の被災地のためにも、先を走る兵庫で被災者支援をもっと充実させなければならないと感じています。
被災地に限らず、高齢化は日本の地域社会の大きな課題です。それが先鋭化して表れているのが阪神・淡路の復興住宅です。震災後、復興のシンボルとして手塚治虫氏が描いた「火の鳥」が採用され、「ひょうごフェニックス計画」と名づけられた復興事業が進められました。
「創造的復興」という目標を掲げてまちづくりを進めてきた被災地が、本当の意味で震災前よりもいい町になれたのかどうか、震災による傷に今も悩まされている人たちに気持ちを寄せて考えてみることも大事ではないでしょうか。

今回の番組は、復興住宅の現在の課題に向き合う人々の姿を見つめ、震災20年の被災地から日本の明日を考えます。
ディレクター:豊島学恵(関西テレビ報道番組部)
プロデューサー:兼井孝之(関西テレビ報道番組部)