【Aさん(50歳)】「“いいね”するだけで数百円だけどもらえるなら助かるわって」
“楽に簡単に稼げる”、“誰でもできる”。そんな夢のような副業のはずが…。
【Aさん(50歳)】「完全にやられたなって。何とかしてお金を取り戻したい、そればっかりでしたね」
「完全にだまされましたね。信用してしまったっていうのもあるんですけど」
副業ブームの今、「少しでもお金が欲しい」という心理につけ込み大金をだまし取る「タスク詐欺」が急増。
被害者を信用させる巧妙な手口とは?
■副業を意識する人が多い中で増加する詐欺
Q.副業に興味はある?
【会社員(29歳)】「ありますね。基本的なお給料だけじゃ足りないなって思う時がほとんどなので、簡単にできそうなのがあったらやりたいなとは思う」
【会社員(28歳)】「老後の資金も、今使うお金もあったほうがないよりはいいので」
株式会社リクルートの調査によると、副業を意識する人は約6割。そんな中、“自宅でできる副業”を考えている人が少なくないようです。
【公務員(21歳)】「家でできるほうが隙間時間とか見つけてできるかなって」
楽に稼ぎたいという気持ちにつけ込む、新たな詐欺の被害が増えています。
Q.リスト見せてもらってもいですか?
【Aさん(50歳)】「いいですよ。これ全部振り込んだ日と、これが八幡署の相談番号」
京都府に住むAさんも、SNSで見つけたある“副業”に手を出した結果、およそ100万円をだまし取られました。
【Aさん(50歳)】「お金を返してほしい、それだけですね。なけなしの生活費だったので本当にお金を返してほしい。完全に当時は信用してしまっていた」
“タスク詐欺”と言われる巧妙な手口でした。
2023年11月、AさんはSNSの広告であるサイトを見つけたといいます。そこにあった「安全に稼げる」「誰でも簡単」という言葉。
当時、Aさんの月収はおよそ12万円でした。
【Aさん(50歳)】「このご時世なので、少しでも収入になればいいかなって」
お小遣い程度でも稼げるなら、と軽い気持ちで登録してしまったのです。
■誰でも簡単…「タスク」詐欺の手口
「タスク」と表現された仕事の内容は、インスタグラムの指定された投稿に「いいね」か「フォロー」をするというもので、報酬は100円~800円。
【Aさん(50歳)】「簡単なのでポチポチやってお金が稼げるならいいかなという感じで始めてしまった」
言われた通り指定されたアカウントをフォローし、その画面を送ると…。
【Aさん(50歳)】「PayPayにちゃんと100円入ったので、あ、本当にもらえるんだなって信用してしまった」
わずか100円でしたが、実際に入金されたことで稼げると実感したAさん。「どんどんやりたい」と伝えると、この先の報酬は聞いたことのない仮想通貨で支払われることになりました。
【Aさん(50歳)】「マイナスないから、まぁいっかって。ちょっとたまれば引き出せばいいかなという感じで」
副業を始めて2日目、「高報酬タスク」という仕事に勧誘されます。
「高報酬タスク」は、指定された銀行口座にお金を振り込み、実在する仮想通貨のサイトで指示された通りの操作をすると、振り込んだ金額に応じて報酬がもらえるというもの。
【Aさん(50歳)】「ちゅうちょしてたんですけど、仮想通貨の中の口座が1万円以上になっていたので、1回やってみようかなって気分的にもなってしまって」
しかし…。
【Aさん(50歳)】「高収入タスクを終了しないと(仮想通貨の)お金を引き出せませんって言われて、となると自分で1万円用意しないといけない。なけなしのお金を用意しました」
違和感を覚えながらも手元の1万円を振り込み、やってみたといいます。すると、高報酬タスクの分を含め、これまでの報酬と、振り込んだ1万円など、合わせて2万3000円が自分の銀行口座に振り込まれたのです。
【Aさん(50歳)】「2万3000円、大きいので助かるなと思って、本気で信用してしまったというのもある」
これで完全に相手の術中にはまってしまったAさんは、さらなる「高報酬タスク」の誘いに乗ってしまいます。
それは、4万円を支払い、4人でそれぞれが指示された操作を行う「タスク」。Aさんは指示通りできたのですが、1人がミスをしたことで、「タスク」は終わらず、ペナルティ15万円が課せられたのです。
ペナルティは、個人名義の銀行口座に振り込むと仮想通貨の残高が増える仕組みでしたが、振り込むと今度は…。
【相手から来たメッセージ】「高報酬タスクは本来1時間で終わらせる必要があります。しかし今回は1時間以上かかったため、ペナルティ30万円が必要です」
さらにペナルティを要求されました。
【Aさん(50歳)】「迷いますよね。でもお金は戻ってこないと困るし、という感じ」
Q.この30万円を払えば戻ってくると?
【Aさん(50歳)】「戻ってくると、その考えしかなかったですね」
仕方なく貯金を崩し、30万円を外国人名義の銀行口座に振り込んで、ようやくタスクは終了。
報酬と、振り込んだお金が仮想通貨の口座に加算されたことを確認すると、その時点の残高は115万円でした。
ここで全額を引き出そうとしたところで大きな落とし穴が…。
【相手から来たメッセージ】「仮想通貨の口座から全額を引き出すことはできません。全額引き出したいなら48万円を支払ってください」
なんと、さらに48万円を振り込むよう要求されたのです。
【Aさん(50歳)】「さすがにここまできたらおかしいなと思い始めて、自分の手に負えない金額だったので」
すでに振り込んでしまった48万円と同じ額。なんとしてでも取り戻したいと、息子から借りて振り込みました。
しかし、その後も現金化はできず。さまざまな理由をつけてお金を振り込むよう求められ、ようやく自分の置かれた状況を理解しました。
■副業トラブルの相談件数はここ5年で倍近くに
【Aさん(50歳)】「にっちもさっちもいかなくて、頭真っ白でお金返ってこないって分かった時点ですぐ警察に飛び込んで」
そこでAさんは、これは「詐欺だろう」と警察から告げられます。
振り込んだ口座の銀行に問い合わせても、ほとんどの口座はすでに凍結。残高もほとんどない状態でした。
【Aさん(50歳)】「全部個人名なんですけど、警察とか銀行の人とかがいうには『留学生とかが国に帰る時に口座を闇の業者に売ってしまった、そういう口座じゃないか』って」
「少額だけど、ちゃんとお金が手元に来てたので、完全にだまされていたなという感じ。完全に信用してしまった。悔しい思いしかないです、今は。だまされてしまった私も悪いんですけど」
わずかな報酬を手にしたばかりに、およそ100万円をだまし取られたAさん。こうした被害にあうのは、Aさんだけではありません。
国民生活センターによると、SNSで見つけた副業に関するトラブルの相談件数はここ5年で倍近くにまで増えています。
Aさんがだまされた「タスク詐欺」に関する相談も来ているということです。
【Aさん(50歳)】「息子もあきれてしまって、しばらく口聞いてもらえなかった。つらかったですね」
「一般の苦しい生活費からやりくりしているお金を取って何がうれしいんだって私は思いますけどね」
Aさんが被害にあった「タスク詐欺」。これには3つのポイントがあります。
・「損はしない」と錯覚させる
報酬をもらい、振り込む際も報酬から支払っているため、「損はしない」と思い込んでしまうのです。
・“暗号資産”の口座で信用させる
暗号資産の残高が増えることで安心させるということです。しかし、今回Aさんが被害にあった際に使われた暗号資産については、そもそも実際の暗号資産かどうかも分かっていません。
・「失敗」を繰り返して焦らせる
焦らせることで、判断力を鈍らせるのです。
被害にあわないためには、「簡単に楽して稼げる」といった甘い言葉や、“うまい話”には警戒することが大切です。
(関西テレビ「newsランナー」2024年3月7日放送)