それ本当にナンバーワン? 「満足度第1位」「オススメしたいNo.1」…よく見かけるランキング広告の裏側に“驚きのカラクリ” 1位取らせる『イメージ調査』の実態とは 2022年12月05日
「売り上げNo.1」「お客様満足度第1位」、「シェアNo.1」…など自社の製品などが調査の結果、ランキング第1位を獲得したとうたうNo.1広告。
インターネットや街中でよく見かけますが・・・
【大手調査会社】
「これはNo.1を取らせるために、編み出された手法だって思っていただいた方がいいと思います。最初からNo.1を打ち出す調査をサービスとしている会社も複数存在します」
No.1広告の裏側を取材すると、驚きのカラクリが見えてきました。
■どんな「ウリ文句」に人はひかれる?
人は商品を選択するとき、どのようなウリ文句にひかれるのでしょうか。
モバイルバッテリーを例に、「販売台数20万台突破」「2年顧客満足度No.1」「2022年最新モデル」「人気家電芸人オススメ」の4つ選択肢を用意し、街頭で100人に調査しました。
【男性】
「(『人気家電芸人オススメ』を選び)芸人が責任持って勧めてくれそうな説得力がありますね」
また別の2人組の女性は、それぞれ「2022年最新モデル」、「2年顧客満足度No.1」を選びました。
【「最新モデル」を選んだ女性】
「なんか最近出たやつやから気になる」
【「顧客満足度No.1」を選んだ女性】
「満足度が2年連続No.1やからそっちにした」
聞き込みを続けていくと…「2年顧客満足度No.1」を選ぶ人が多いようで、その理由を聞いてみると、「顧客満足度っていったらみんながいいなって思っているから」「No.1にひかれて一番いいのかなって思いました」などの声がありました。
そして調査の結果…100人中54人が「2年連続顧客満足度No.1」を選択し、圧倒的な支持を集めました。
■人はNo.1が好き ビジネスのためにランキングが作られる?
No.1には効果があるようですが、この結果についてデータ分析の専門家は…
【データサイエンティスト 松本健太郎さん】
「人が基本的に評価をすることが好き。あるいは評価されたものの中でいいやつを選びたい。いっちゃんええやつを選びたいってことですよね」
ランキングを意識するのは人の心理にかなっていると指摘。しかしそこに落とし穴があるというのです…
【データサイエンティスト 松本健太郎さん】
「“ランキングは作れる”ということだと思っています。何かしらビジネスに使うためにランキングが使われているんだというふうに認識をしていただくのが一番いいかなと思います」
「ランキングがビジネスのために作られる」とはどういうことなのでしょうか?その意味を探るため注目したのが、都道府県魅力度ランキング。毎年最下位争いが話題になり、時には自治体のトップも…
【群馬県 山本一太知事】
「なぜ群馬県の順位が下がったのかその理由はやはり判然としていません。法的な措置も検討させていただきたい」
順位が下がったら結果にかみつくなど、大きな影響力があります。
ランキングを発表しているのは「ブランド総合研究所」。田中社長によると…
【ブランド総合研究所 田中章雄社長】
「弊社は、地域を活性化するっていうのが一番の目標でして。そのために調査コンサルティングを行っている」
地域活性化のための調査を行うのはビジネスで、結果を全国300以上の自治体に販売。さらに…
【ブランド総合研究所 田中章雄社長】
「この調査結果を見ると、ある町が自分たちが思っているよりも低かったとしますよね。そうした時には何が低いのか、誰に対して低いのか、なぜ低いのかっていうのは、多分(自治体の)皆さん、そこが一番の注目したいところだと思うんですね。例えば、観光で訴えかけましょうとか、あるいはその弱みを克服するような戦略を作れば、もっと街のイメージが良くなるだろうと、そういったような戦略を作るっていうことをやっています」
都道府県魅力度ランキングは、“格付け”ではなくあくまで“コンサルティングビジネスのための材料”。ただ恣意的な要素はないと胸を張ります。
【ブランド総合研究所 田中章雄社長】
「信頼性の低い回答を省くクリーニング作業を徹底して行っています。我々としてはデータに最下位まで発表できるぐらいの信頼性のあるデータを作っているという自信を持っています」
では、ちまたでよく見るNo.1広告はどんな調査に基づくランキングなのでしょうか。
■No.1広告の真実 “イメージ調査”の実態とは?
インターネット通販で、“10冠”をうたうマウスウォッシュを見つけました。
“女性に人気第1位”、“子供に優しい第1位”、“気軽に使える第1位”…よく見るとWEBアンケートによる“イメージ調査”との文字。
販売会社に問い合わせると…
【マウスウォッシュの販売会社】
「イメージ調査についてなんですが、こちら言葉の通りになりますが、イメージ調査になりますので、『実際に使用して比較した調査ではございません』というのが回答となっております」
–Q:使った人に対してこの製品のイメージを聞いたわけではないということですか?
【マウスウォッシュの販売会社】
「さようでございます。イメージ調査というタイトルの通り“イメージの調査”という形になっております」
–Q:どうしてもあれ(広告)を見た時に、使った人に聞いたと思うのが普通の感覚ではないのかなと思うのですが?
【マウスウォッシュの販売会社】
「貴重なご意見があったとしっかりと記録に残させていただきます」
言葉の通り“イメージの調査”…。大手調査会社はこう切り捨てました。
【インテージ 村上智人執行役員】
「これは“No.1を取らせるために編み出された手法”だって思っていただいた方がいいと思います。知らないブランドも含めて調査をして、1000人回答しました。じゃあイメージ満足度1位ですっていう言い方になってしまうと、『これ本当に1位なんですか?』というか。そもそも…使ってない人に聞くことに意味があるのか?」
■1位を取らせるための“さまざまな手法”とは
・アンケートの結果、依頼主の商品が1位でなかったとき、上位の商品を別の商品に入れ替えて、1位になるまでアンケートを繰り返す。
また、ほかにも…
・アンケートが行われている期間の途中でも、ある時点の集計結果で依頼主が1位になったら、その瞬間にアンケートをストップする。
…などの手法があるということです。
実際にこの手の調査会社は横行しているようで…
【インテージ 村上智人執行役員】
「当社にもメール来ましたから営業の。『No.1取らせます』って」
–Q:調査会社に来たんですか?
【インテージ 村上智人執行役員】
「調査会社に社長宛てのメールに来ていました。『No.1取らせます』ってメール来ました。営業しているんだなって」
調べると「No.1を取らせる」とうたう調査会社がいくつも見つかりました。
No.1調査を行うある調査会社に取材を申し込んだところ、メールの文面にあるように取材は断られ、さらに後日HPを再び調べたところNo.1調査のページはすでに削除されていました。
私たち消費者を惑わすNo.1広告。野放しにされていいのでしょうか。
■「行政処分」出された例も 消費者問題に詳しい弁護士は?
埼玉県が2年前、家庭教師派遣サービス業者に行政処分を出した例がありました。
【埼玉県庁 消費生活課 荏原智美主任】
「お客様の満足度・第一志望校合格の実績の満足度ということで、実際に利用した方が満足しているかのように見受けられる表示をしているんですが、実際にはこれはただのイメージ調査にしかすぎなかったので、消費者の誤認を生む可能性があるので、そこは景品表示法に違反するということで」
利用した人が対象ではない調査結果で満足度を打ち出し、いいサービスだと誤解させていました。
しかし、このように処分されるのは珍しいことだと消費者問題に詳しい弁護士は話します。
【消費者問題に詳しい 木村智博弁護士】
「景品表示法上問題になりそうなのは『飲むだけで痩せる』とかその商品の効果効能もダイレクトに表示するようなものが一応念頭に置かれているんですけれども。効果効能が“著しく優良であると示す行為”が(景品表示法で)不当表示になるので、No.1表示でその著しく優良性を示せるものっていうのが、かなり限られると思うんですね」
たしかに多くのNo.1広告では、何かの効果あると直接的には触れていないような言葉が並んでいます。
【消費者問題に詳しい 木村智博弁護士】
「たとえNo.1表示自体の調査に怪しい点があったとしてもなかなか景品表示法上を不当表示として措置命令などをしていくことが難しいというのが法律の作りになっています」
もっともらしく見せかけて、私たちの心につけ込むNo.1広告。人気や評判を、“本当に”証明しているものなのでしょうか。
(2022年12月1日放送)