日本最古のケーブルカー『鳥居前駅』に鳥居がない? 「生駒の聖天さん」や遊園地、宿坊など「生駒って歴史いっぱい」【兵動大樹の今昔さんぽ 関西テレビ「newsランナー」】 2024年04月19日
【兵動さん】「今回は絶景から始まっております。こちらは生駒山上遊園地ですね。飛行塔の上からスタートです」
標高642メートルの生駒山の山上で、1929年(昭和4年)に開園した「生駒山上遊園地」。
入園料無料で、小さな子どもでも楽しめるファミリー層向けの遊具が多いことが特徴です。中でも「飛行塔」は、現存する国内最古の大型遊具として、遊園地のシンボルになっています。
■立派な“鳥居”が街なかにある風景…どこ?
これは1982年(昭和57年)に奈良県生駒市で撮影された写真です。どこの風景か分かりますか?
【兵動さん】「街のど真ん中!そこに鳥居が立っている。ここ(神社名などが書かれている扁額)は見えへんねんなぁ。でもここは覆われているからね」
鳥居の下には柵が設置されているようです。
【兵動さん】「普通はこう入っていくものなんやけどね。ここは参道か」
飛行塔から眼下を見渡す兵動さん。
【兵動さん】「どこ?どこや。ここ(飛行塔)から探しても無理やけどね」
それでは聞き込み開始。園内にはたくさんの子どもたちがいました。
【兵動さん】「(街の人に写真を見せて)これね、昭和57年(の写真)なんです」
【街の人】「平成生まれなんで分からない」
【街の人】「『これ鳥居ちゃうやん』って言ってたところやん。朝見た時に『鳥居前』って言ってたのに鳥居じゃなかったから」
【兵動さん】「どの辺で?」
【街の人】「駅の前。生駒の」
【兵動さん】「生駒の駅の前。ありがとうございます。ちなみにおいくつ?」
【街の人】「12歳です」
【兵動さん】「12歳の方にヒントを教えてもらいました」
子どもたちによると、写真の場所は近鉄生駒駅の近くではないかとのこと。
しかし「鳥居前なのに鳥居じゃない」とは、どういうことなのか?もう少し聞き込みを続けます。
【兵動さん】「今回ね、鳥居の写真ですねん。昭和57年」
【生駒山上遊園地 職員】「ギリギリ生まれてますね。この辺で鳥居と言ったら『宝山寺』のお寺かなと思うんですけど」
【兵動さん】「宝山寺!」
神社ではなく、鳥居を持つお寺があるといいます。
【生駒山上遊園地 職員】「ケーブルカーもあるのでそこ(宝山寺駅)で降りてもらったらすぐ行けます」
【兵動さん】「宝山寺駅というのがあるんや。ほな、そっち行って聞いた方が分かりやすいと」
【生駒山上遊園地 職員】「それが一番かもしれないですね」
■日本最古の生駒ケーブルで宝山寺駅へ
ケーブルカーに乗るため、「生駒山上駅」へ。
【兵動さん】「これ(駅)きれいになったの?前に来た時は違う感じやったけど、きれいになってるやん」
生駒山上駅は今年2月にリニューアルしていました。
駅前にいた人にも声をかけてみます。
【兵動さん】「今日はどちらから?」
【街の人】「神戸から。きのう泊まっていて」
【兵動さん】「宝山寺って聞いたことあります?」
【街の人】「行ってきました、さっき」
【街の人】「お参りしてから来ました」
【街の人】「すぐ近くの宿に泊まっていたので。崖の中腹に仏像があって、すごいなぁと思って見てたんですけど。どう作ったのかなぁって」
一体、どんなお寺なのでしょうか。ケーブルカーに乗り込み、向かいます。
【兵動さん】「このケーブルカーも日本最古のケーブルカー。だからすごく生駒って、いっぱい歴史が詰まっているんですよ」
実は兵動さん、以前遊園地を訪れた時にこのことを教えてもらったそう。
生駒ケーブルは、元々は宝山寺への参拝客の負担を軽くするための交通手段として、1918年(大正7年)に誕生。
その後、遊園地の開業に合わせ、延伸されています。
【兵動さん】「(宝山寺駅に)着きました。ケーブルカーを使わずやったら、ここからずっと階段で上がってくるということや」
下へ降りる長い階段がありました。さらに上へと続く階段もあり、ここを上ってお寺に向かいます。はるか上まで続いている階段を見た兵動さん、少し戸惑い気味です。
【兵動さん】「これはおびただしい階段やな。この上に行かないとあかんもんな。お寺とか神社はそういうことなんです。上がっていくことによってご利益をいただくんです」
階段を上り始めると、周辺には宿やお店がありました。
【兵動さん】「ものすごい風情のある…。なんかすごいな、旅館とか料理屋さんがいっぱいあるよ」
上から下りてきた女性に声をかけてみます。
【兵動さん】「こんにちは。上がってきはりました?」
【街の人】「上がってきました」
【兵動さん】「宝山寺さん、行ってきました?」
【街の人】「健康がてら歩いています」
【兵動さん】「健康がてらって、電車乗らずにずっと上がってきたの?」
【街の人】「(うなずきながら)家からずっと」
【兵動さん】「どれくらいかかります?電車に乗らなかったら」
【街の人】「私の家からは往復して約2時間」
【兵動さん】「え~!もうカモシカのような脚になってるんちゃいます?歩きすぎて。1個だけ聞いていいですか。階段って、まだまだあります?」
【街の人】「あります」
【兵動さん】「うわぁ。(上を見上げて)まだ(目的地の寺が)見えへんわ」
■参道沿いはかつて宿坊として栄えていた
さらに上っていくと、階段の途中にあるお店の前に女性が立っていました。
【兵動さん】「こんにちは。こちらにお住まいなんですか?」
【神社仏閣情報ショップ あん・はな 店員】「お店をやっているんです」
【兵動さん】「何のお店をやってはるの?ここは」
【神社仏閣情報ショップ あん・はな 店員】「神社仏閣をテーマにしたコンテンツショップなんですけど。神社とお寺が好きで、そういう文章を書くライターの仕事をしているんですよ。いろんなお寺や神社と関わっていく中で、自分なりに応援できないかなと思って」
店内には寺社仏閣関連の書籍や、御朱印帳などが並んでいました。
兵動さんが持っている写真を見て…。
【神社仏閣情報ショップ あん・はな 店員】「あ、写真のやつだ!」
「今昔さんぽ」を知ってくれていました。
【兵動さん】「そうなんですよ。これ昭和57年の写真で、生まれてないと思いますけど」
【神社仏閣情報ショップ あん・はな 店員】「あー!宝山寺の鳥居やと思います。上にあるんですよ」
【兵動さん】「上に鳥居もあるの?」
【神社仏閣情報ショップ あん・はな 店員】「下から上に移動してるんですよ、大鳥居が」
【兵動さん】「下から上に移動しているの?」
【神社仏閣情報ショップ あん・はな 店員】「はい。これは駅前の写真だと思うんですけど」
【兵動さん】「この鳥居って、今は上にあるの?すごいな、それ。なぜ上になったのか、話を聞くのがまた楽しみやね。ありがとう。いろんな出会いがいただけるわ、ここ歩いてたら」
階段をさらに上がっていくと、今度は飲食店がありました。「十割そば」と書かれたのぼりが立っています。
【兵動さん】「またしゃれてるな。こんなのも食べられるの?休憩がてらちょっと入れてもらおう」
階段をのぼり続けて息があがってしまった兵動さん、こちらのお店をたずねてみることに。
【兵動さん】「すみません、前の階段で腰が爆発しそうなので休憩させてもらってもいいですか?」
【門前おかげ楼 店員】「どうぞ、どうぞ」
【兵動さん】「うわ、しゃれてるな」
こちらは、大正時代の料理旅館を今のオーナーが買い取ってリニューアルしたそう。こだわりのそばが食べられる食堂も併設していて、参拝客から人気を集めています。
【兵動さん】「生駒山上に行く途中がこういうことになっているって知らなかったです。(この界隈に)泊まれる施設があるって、結構有名ですか?」
【門前おかげ楼 店員】「そうですね。もう大正の初期から宿坊(だった)」
この参道沿いは大正初期から宿坊として栄えていたそうです。
【兵動さん】「昔はもっと(にぎやか)だったんですか?」
【門前おかげ楼 店員】「僕が子どもの頃は朝からひっきりなしに往来があった。バブルがはじけたくらいからここもだんだんと…」
【兵動さん】「でもこうやってリノベーションして、心地いい空間を作ったりしているじゃないですか」
【門前おかげ楼 店員】「10年くらい前から空いている旅館とか、家とかを改造して」
10年ほど前から街を再生する取り組みが開始したとのこと。
【門前おかげ楼 店員】「参道は(毎年)9月23日の『万燈会』という、参道の階段に灯篭を1000基並べて、皆さんに絵とか字を書いてもらって」
【兵動さん】「めちゃくちゃ雰囲気あるでしょ」
「生駒聖天お彼岸万燈会」という催しが毎年恒例だそうです。
そして本題。写真について聞いてみると…。
【門前おかげ楼 店員】「これが(生駒駅の)駅前なんですよ。ここが参道の入り口になっているんです」
【兵動さん】「それで、僕が今通ってきた道につながっていく?すごい参道ですよね」
【門前おかげ楼 店員】「生駒の下まで1.5キロメートルくらいの距離はあります。あと、ここから入ったところにケーブル(カー)の駅があったんです。そのケーブルの駅が『鳥居前駅』っていうんです。(今は?)今も鳥居前なんです。昔のまま名前は残っている」
【兵動さん】「だからさっきの少年が『鳥居って見た』っていうのは、ケーブルに乗ってきたんや。だから駅で『鳥居』っていうのを見てるんや。だから、まんざら間違えてないよね」
最初に話を聞いた12歳の少年が言っていた「『鳥居前』なのに鳥居じゃない」というのは、このことでした。
残る謎は、なぜ鳥居を移動させたのか?それを確かめるため、宝山寺へ向かいます。
■「生駒の聖天さん」こと宝山寺に到着
【兵動さん】「うわー、ここからすごく厳かになるねんや。立派な鳥居が出てきたけど、これすごいよな。立派な鳥居や。これが駅前にあったと思ったらすごいよな。なぜ動かしたのか」
見上げると、大きな鳥居がたたずんでいました。
【兵動さん】「よっしゃ、行こうか。まだ階段はありますが…」
階段を上り続け、ついに宝山寺に到着です。
【兵動さん】「すごいね。言ってはったやつ、ほんまや。どうやってお納めしたんやろ」
街の人が言っていた通り、崖の中腹に仏像がありました。
1678年(延宝6年)に創建された宝山寺。地元では“生駒の聖天さん”の愛称で親しまれ、現生での利益、特に商売繁盛のご利益があるとして人気のお寺です。
境内には大きな巾着袋を模したさい銭箱がありました。そのさい銭箱に触れている女性たちがいました。
【兵動さん】「これ触って一周してはりましたけど、なんかありますの?」
【街の人】「お金が貯まるように。お財布でなでたり、手でなでて回ったりとか。(そうするとお金が貯まる?)いろいろいわれています」
【兵動さん】「まだお若いでしょ?おいくつくらい?」
【街の人】「25歳です。よくお参りに来させていただいていて」
【兵動さん】「お金は貯まりました?」
【街の人】「ぼちぼち」
さて、鳥居については、お寺のご住職が教えてくれるとのこと。
【兵動さん】「この(写真の)鳥居が、この鳥居ですか?」
【山主 大矢實圓さん】「そうです。(できたのは)大正5年なんですよ。100何年前。これは御影石(で作られた鳥居)で日本一やというんですよ、この大きさは」
【兵動さん】「大正時代からここにずっとあったということですか。移動した理由は…」
【山主 大矢實圓さん】「やっぱり駅開発というのがございます。大きいものですので、危ないと。地震なんか起きたら、えらいことですから。みんなつぶれてしまう」
巨大な鳥居は、いったん解体して山の上に運ぶという、大がかりな工事だったそう。
そしてこの時、鳥居の高さが少し変わっているんです。
【兵動さん】「あれ多分、駅の前の時はあの(柱に彫られた)名前がもう少し上やったんですね」
安全性を確保するため、以前より深く埋めたそうです。
【兵動さん】「いいお話をたくさんありがとうございました。あの岩山のところに仏さんいらっしゃるじゃないですか。あれはどうやってあそこに置いたんですか?」
【山主 大矢實圓さん】「それはね…分からん」
それでは、満を持して写真の撮影場所へ向かいます。ケーブルカーの終点「鳥居前駅」は、近鉄生駒駅の目の前です。
【兵動さん】「ここがね、『参道筋』って書いてる。ここをずどーんと行ったら、さっき僕らが出てきた階段のところになると」
近くにあったタバコ屋さんに正確な場所を聞いてみます。
【街の人】「このデッキの上から撮ってますね」
さらに、ご主人からちょっと面白い情報が!
【兵動さん】「ARいうの?」
【街の人】「AR。携帯をかざしていただいたら…」
【兵動さん】「(昔の写真を指し)このシーンが出てくるということ?この鳥居があそこの空間に突如出てくるということ?」
ARでかつての駅前の鳥居を再現できるというものですが…。
【兵動さん】「4月1日からARでここに鳥居出てくるねんて。その時に来たら良かったな」
このロケが行われたのは3月末のため、体験できませんでした。生駒駅を訪れた際にはぜひお試しを。
【兵動さん】「それでは行きましょう。はい、チーズ」
【兵動さん】「いやぁ、すごかったですね。素晴らしいお寺があって、そこの参道では今も泊まれる。皆さんどうですか。景色も最高ですし、まぁまぁ運動にもなりますよ。というわけで今回も楽しかったです」
(関西テレビ「newsランナー」 2024年4月12日放送)