「京の台所」は今日も元気 にぎわい戻った「錦市場」 京都名物・千枚漬は店ごとに味が違ってそれぞれうまい 【兵動大樹の今昔さんぽ 関西テレビ「newsランナー」】 2023年12月08日
1枚の写真から街を再発見!兵動大樹の今昔さんぽ
【兵動さん】「京都です。寺町京極商店街からスタートします」
■神社で “丸いもの”が並べられた写真を手に聞き込み
今回の写真は、1963年(昭和38年)、京都市内で撮影された写真です。どこの風景なのでしょう?
【兵動さん】「なんか神社ですかね。鳥居が立ってる。『献上』と書かれてますね」
【兵動さん】「バウムクーヘンが並んでいる?いや“たる”か?これ、なんやねん」
街行く人に写真を見せて聞いてみると、「お鍋」「千枚漬」「バウムクーヘン」「(京都の名物なら)八つ橋か漬物」といった意見が出てきました。『献上』するということは、京都の名物なのではないかと見当をつけて、聞き込みを続けます。
■京都名物について聞くなら「錦市場」
「京の台所」とも呼ばれる「錦市場」へ行き、老舗のつくだ煮屋さんで写真を見てもうと…
【兵動さん】「せやけど、人が戻ってきたね」
【野村佃煮 店員】「人いっぱいで、ありがたいことです。(写真の丸いものを見て)私も漬物かと思いました。形そっくりなのが、『大藤(だいとう)』さんっていうお漬物屋さんで、この形で販売してはるんです。すごく似てます、このサイズ感」
【兵動さん】「ほなちょっと『大藤』さんで聞いてみよか」
慶応元年創業の「大藤」は、千枚漬発祥のお店。京都御所の料理人を務めていた藤三郎(とうざぶろう)さんが発案したもので、それが宮中で評判となり、今では冬の京漬物の代表として知られています。
【兵動さん】「有名や『大藤』さんいうたら」
【兵動さん】「すみません。『newsランナー』の兵動といいます。僕、前も『よ~いドン(別のテレビ番組)』で寄せてもらいましたよね」
【大藤 6代目 山崎末莉さん】「若かりし頃」
【兵動さん】「千枚漬といったら京都の三大漬物ですよね。他の漬物とどう違うんですか」
【大藤 山崎末莉さん】「三大漬物には『すぐき』と『しば漬』もあるんですけど、あれは昔の保存食で、お塩をたっぷり使って、日がもつように乳酸発酵したお漬物なんです。千枚漬はお料理の一品みたいなもので、初代は料理人をしていたので、聖護院かぶらを使って何か作りたいと思ったのが初めだったと聞いています」
■“丸いもの”は「千枚漬のたる」だとのこと
その先代から120年以上受け継がれた大藤の千枚漬の味は?
【兵動さん】(じっくりと味わって)「うまいなあ。初め食べた時は、かぶらのみずみずしさがあって、そこからうま味がちょっと出た後に、漬けたしょっぱさがあがってくる。すごいもんやな」
ここで写真について聞いてみると…
【大藤 山崎末莉さん】「うちにはもっと古い時期、セピア色になったような写真で、献上している写真があります。これはどちらかちょっと分かりかねます。ただ千枚漬の“たる”には見えますね」
【兵動さん】「こちら(大藤)ではないと」
写真に写るのは千枚漬のたるだそうですが、大藤のたるではないとのこと。そこで再び錦市場のつくだ煮屋さんで心当たりを聞いてみると、「大安(だいやす)さんも千枚漬で有名です」とヒントをもらいました。
■写真は「大安の千枚漬」だと判明
平安神宮の近くに大安の本店はあります。明治35年創業の「京つけもの 大安」は、千枚漬をはじめ、年間200種類以上の漬物を揃え漬物文化を支えています。
【京つけもの大安 店員】「『今昔さんぽ』ですか?いつも見てます」
【兵動さん】「この写真に写っているのが千枚漬ちゃうかということで、先に大藤さん行ったら『うちではございません』ということだったんです。大安さんも有名だということで、どうですか?」
【京つけもの大安 店員】「うちです。左側に写っている男性は、先代の社長、大角安治郎になります」
今回の写真は、皇室に献上する千枚漬ではないかとのことで、詳しい話を3代目に聞きました。
【京つけもの大安 3代目 大角安史さん】「神社さんで、献上の前のご祈とうをされている写真だったようです。普段販売しているものより、吟味を重ねて作っているものとなります。かぶらもいろんなところでとれるものの中から、できのいいかぶらを使います。昆布は天然の物しか使わない。そして一番大事なのは職人さん。一番上手な職人さんが漬ける。塩を一瞬で均一に振れるかというところがポイントです」
千枚漬はまず塩だけで「下漬」をし、それから味をなじませる「本漬」になります。下漬が上手にできないと本漬で味が入らないんだそうです。3代目も最初の頃は塩を均一に振ることができなくて、うまく漬からなかったと言います。
【兵動さん】「千枚漬って、お店によって味は違うんですか?」
【京つけもの大安 大角安史さん】「全く違うと言っても過言ではないですね」
ということなら、大安の千枚漬も食べさせてもらうことに。
【兵動さん】「これはすごい。トップから味がスッと入ってきて、最後キュッと千枚漬の塩味とかがあがるんですね。口に入れた瞬間から粘るんです。全然違いますね。献上の千枚漬は買ったりできないんですか?」
【京つけもの大安 大角安史さん】「同じものはないんですけど、同じスペックの物は販売しています。12月だけの限定です」
千枚漬を味わったところで、写真の場所を聞いてみると。
【京つけもの大安 大角安史さん】「吉田神社です。うちの創業者が吉田神社の麓の出身で、氏子なんです」
■献上する「千枚漬」を「吉田神社」でご祈とうしていた
写真は京漬物の老舗・大安が、献上する千枚漬を祈とうしているところだと分かりました。大安は商売繁盛のご祈とうも吉田神社で毎年しているということです。
【兵動さん】「すごい大きい神社。ここのどこかに写真の場所がある」
「(社務所で)大安さんが、吉田神社さんでご祈とうしていただいていると聞いてきたのですが」
【吉田神社】「これはうちですね。本来ご祈とうなどでしか入らないところです」
【兵動さん】「バッチリや。はいチーズ。ここで献上の千枚漬をご祈とうしていただく」
【吉田神社】「お清めをしてから、宮中にお持ちになった」
【兵動さん】「さすが歴史ある神社です。写真と変わっていませんでした」
(関西テレビ「newsランナー」 2023年12月1日放送)