線路はないけど駅がある?「ちんちんの親戚」行く時乗った…思い出の阪堺電車 【兵動大樹の今昔さんぽ 関西テレビ「newsランナー」】 2023年09月15日
【兵動さん】
「今回は大阪市阿倍野区ですね。あちらあべのハルカスですよ。ドーンとそびえ立ってますけども。こちらが阪堺電車ですね。大阪の子は『ちんちん電車』いうんですよ。駅でいうたら松虫駅いう、私の親戚が住んでいる所で、子どもの時ようこれ(阪堺電車)乗って、松虫で降りて親戚のとこ行ってた覚えがあるな。懐かしいですね。だからね『ちんちんの親戚』っていう話で、よう言うてました。私も懐かしい、この大阪市阿倍野区、松虫周辺からスタートです」
■写真には結婚式の参列者?駅? どこなんでしょう
【兵動さん】
「今日の写真ですね。はーえー?こちらでございます。なんかすごい写真やね」
これは1973年(昭和48年)に大阪市内で撮影された写真です。どこの風景か分かりますか?
【兵動さん】
「これ駅か。結婚式なんですかね。参列するために、みんなどっか行こうとしてるのか。駅のすごいにぎわい。左側の売店みたいな所には棚卸する親父の後ろ姿ですね。棚からもの取ろうとする親父の後姿」
【兵動さん】
「(駅の名前が書いてあるところを指さして)わーたぶんやけど、『住吉公…』。『公』まで見えんねん。これやっぱ駅やわな。ちょっと探してみましょか」
■「トラム(路面電車)」という名のパブで聞き込み
それでは聞き込み開始です。
【兵動さん】
「すごい電車のマーク…一瞬駅かなと思いきや。なんやここ?レストランか。なんで電車なんやろ?駅っぽいしね。一回聞いてみよか。すいません。『newsランナー』っていう番組で回らせてもらってる兵動ですが、ちょっとお話聞かせていただけますか?めちゃくちゃきれいなすてきなお店。ここのお店は何屋さんになるんですか?」
【ガストロパブ・トラム オーナーシェフ 柿本雅司さん(52)】
「ここは、イギリス料理、パブですね。イギリスのパブのご飯をもうちょっと良くした感じのお店で“ガストロパブ”っていうんですけど」
【兵動さん】
「なんでこの店来させてもらったか言うたら、電車のマークみたいなんが。あれはどういう意味なんですか?」
【ガストロパブ・トラム パートナー 峯川翼さん】
「路面電車が近くにあったので。英語で『トラム』が路面電車。それでお店の名前が『トラム』なんで」
【兵動さん】
「ここ突き当りぱっと開けたら、電車の線路沿いでしょ?」
【柿本さん】
「駅、7~8メートルの世界です。後ろからもお客さん入ったりされるんですけど」
【兵動さん】
「いいですか?ちょっと見せてもらって。え?なにここ。駅や。駅からここ歩いて、このまま直接店来る人もいらっしゃるの?」
【峯川さん】
「そうですね、基本は閉めさせてもらってるんですけど、トントンってされたら開けたりとか。お帰りはこっちから出られる方はたまにいらっしゃいます」
【兵動さん】
「えーめちゃくちゃいい。電車見れるし、みんなちょっと飲みながら見たりとかできんねや」
【峯川さん】
「そうですね。お子さんとかすごい喜ばれますね」
【兵動さん】
「そら喜ぶわ、これ。ええわ。めちゃくちゃ乗ってはるやん人」
トラムさんなら写真の場所が分かるのではと、聞いてみました。
【兵動さん】
「おんなじとこから写真撮りたいんです。ここに『住吉公…』何とかって、字つぶれて見えないんですけど、なんかちょっと電車の駅感があって、ほんでちょっとここ(トラムさん)に電車(関わりありそう)やなって入らせてもらったんです。見覚えないですわね?」
【峯川さん】
「住吉さんなんですかね?住吉って書いてるの。(電車に乗ることは) 私たちもあんまりない。堺へ行くときは乗るんですけど」
【兵動さん】
「分かりました。すいません。こっち(線路側)から出させてもらっていいですか。せっかくやしね。ありがとうございました。ええ店やなほんまに」
お店の奥の出入り口から、「松虫」の停留所へ行ってみると…
【兵動さん】
「えーこれが駅か。あるなあ、路線図。今がここ『松虫』やねん。ほんでここが『住吉』や。(写真の建物には)住吉って書いてあるから、住吉側にちょっと行ってみるか」
「住吉」へ行ってヒントを探します。
【兵動さん】
「というわけで、こちら住吉駅ですね。あちらにも電車(阪堺電車阪堺線)が通ってますけども、2車線がここで交わるという。通天閣方面からくる電車があちら(阪堺線)、こちら(上町線)は天王寺のハルカスからくる電車という。これは大阪ならではですよ、こういうの。住吉に着いたけど全然(写真と)ちゃうやん。昔はこれでしたとは、なかなかないと思うねんな」
■住吉駅すぐ前の薬局で「昔は線路が伸びてた」との情報
【兵動さん】
「ちょっと聞いてみよ。こちら目の前やもんな、『どんぐり薬局』さん。すいません、あの関西テレビの『newsランナー』っていう番組で回らせてもらってる兵動ですが、ちょっといいですか?ほんまに駅の真ん前でものすごい立地のいい場所ですよね」
【どんぐり薬局住吉店 店員】
「そうですね」
【兵動さん】
「これ(写真)ね、ちょっといいです、見てもろて。昭和48年の写真ですねん」
【店員】
「『住吉公園駅』って書いてますね。今もこんなような感じで(建物が)残ってますわ」
【兵動さん】
「え、こっちに行くと住吉公園駅っていう駅があるんですか?」
【店員】
「今、ないんですよ。ここ(上町線)の線路が、今タイムズの駐車場になってますでしょ、あそこに線路伸びてたんです。ずーっと」
現場へ行ってみると…
【店員】
「この線路がまっすぐむこうに。駐車場ぐにゃんって変な形でしょう?」
【兵動さん】
「はーはー、あれですか、(上町線の)線路が今は我孫子の方(南に)向いて走っていくけども、昔はこっち(南西)に行ってたんですか?」
【店員】
「このまままっすぐ行ってた線もあったんです。そんなに昔やないです。廃線になったんです」
【兵動さん】
「こっから先だけ廃線になったの?この先はどこまで行く線やったの?あっ、この先が住吉公園駅やったん?」
【店員】
「終点、終点」
実は、現在駐車場になっているところに線路が伸び、阪堺電車上町線の終点「住吉公園駅」につながっていたのです。約200mのひと区間が廃線となりました。特に上町線と阪堺線が交差する通称「ダイヤモンドクロッシング」など線路の改修に高額な費用がかかることから、2016年、多くの人たちに惜しまれながら100年以上の歴史に幕を下ろしたのです。
【兵動さん】
「この駅舎っちゅうのは、いまだにある?」
【店員】
「なんとなくこんな形であると思います。だから私ぱっと見て分かったんですよ」
【兵動さん】
「えー、ほなそこちょっと行ってみよ」
■今も残る「住吉公園駅」の駅舎へ
線路跡の多くは駐車場になっていますが、できるだけ線路跡をたどって住吉公園駅の駅舎を目指します。
【兵動さん】
「こっからさっきのパーキングや。ん、むちゃくちゃ(駅っ)ぽいのあらへん?」
駐車場の奥に見える建物が住吉公園駅の駅舎。この駐車場はホームがあった場所でした。
【兵動さん】
「いやいや。石垣みたいなん見えるやん。絶対あれやわ。いまだにあんの。絶対ない思てた。ここが住吉大社さんの参道や。せやせや…ほんで」
写真に写る阪堺電車「住吉公園駅」。すでに廃線となったこの駅の建物は、南海「住吉大社駅」のすぐそばにあるとのことです。
【兵動さん】
「あった。これほら『住吉公園駅』って書いてある。右からしかも。ほんで、でっかい鎖。つってまっせーいうのもあるわ」
【街の人】
「ちんでんの駅やで」
【兵動さん】
「ちんでんの駅?ここ、ちんでんの駅なの?」
【街の人】
「ほんで向こうは線路もないよ。駐車場になってあるやろ」
【兵動さん】
「えーすごいな。駅あるやん。こっちは南海の駅やなもう。お店もあるしな。(駅舎の中を通り抜け駐車場側に出て)あそこから、ずーっと流れてきて、ここが最終やったんや」
■3代にわたって駅舎で営業している宝くじ店 “ちんちん電車”の懐かしい思い出
この駅舎で宝くじを販売している方に話を聞いてみました。
【兵動さん】
「こちらでご商売ってもう何年やられてるんですか?」
【藤田裕子さん(66)】
「私で3代目なんです。お姑さんがやって、大姑さんもやってたみたいなんで。その人がやられているときはこれが高架じゃなくて、路面、手巻きの踏切だったそうです」
【兵動さん】
「それは南海電車?」
【藤田さん】
「そう南海電車です。私、昭和57年に嫁に来ているんですけど、私が来た時点では高架になってました」
阪堺電車住吉公園駅にも思い出があるそうで。
【藤田さん】
「あそこ(阪堺電車のホーム)に防火水槽みたいなの置いてたんですよ。そこ(住吉大社)で金魚すくいとか夏祭でしますやん。その金魚ほって帰るんですよ、持って帰らんと。ほんだら大っきくなってね。駅の人が水換えて、それをお孫さん連れて見に来たり。あと、そこにベンチがあったから、そこで電車見たり。始発も終点もやからちょっとの間止まってます。だからちんちん電車、路面電車を小さいお子さんを連れて見に来たり。ウチの子もよう見てました」
【兵動さん】
「このかいわいのみなさんの良いスポットではあったんや」
【藤田さん】
「たぶんこれ(写真左側の売店)、そこの靴屋のおじさんの店違うんかな。ここで商売してはったんですよ。靴屋のおじさんなんですけど。今まだ、角曲がったとこにいてはりますよ」
■写真に写っているのは靴屋のおじさん?本人に聞いてみます
写真に映る人物が近くの靴の修理屋さんかもしれないということで訪ねてみました。
【兵動さん】
「すんません。昭和48年のそこの住吉公園駅、さっきね(宝くじ店で)…」
【カワサキ靴店店主 川崎健一さん(79)】
「これがね、私とこの店でした。ここではね、お父さんと一緒にやっとったんですよ」
【兵動さん】
「これ写ってるのは、お父さん?」
【川崎さん】
「え?どやろなあ」
【兵動さん】
「ここでずっとご商売なさるんやったら、やっぱええ地域ですか?この辺は」
【川崎さん】
「地域はよろしいわ。働きやすいねんけど、やっぱり売り上げはしんどいですね」
【兵動さん】
「そうか。もうちょっと景気戻ってきてもらって、靴ももし修理あったらここ持ってきてもらったら」
【川崎さん】
「そうですね。また宣伝してください」
【兵動さん】
「はい、いきましょう。はいチーズ」
「まだこの古い駅舎が残ってるというのがすごいじゃないですか。だから思い入れを、みんなここで見るたびに思い出せるという。そんな素敵な『住吉公園駅』の回でございました」
(関西テレビ「newsランナー」2023年9月8日放送)