「灘の酒」を江戸に運ぶ港に明かりをともす 航路の安全を200年以上守り続ける日本最古の木造灯台『今津灯台』 【兵動大樹の今昔さんぽ 関西テレビ「newsランナー」】 2023年11月29日
1枚の写真から街を再発見!兵動大樹の今昔さんぽ
【兵動さん】
「阪急西宮北口駅前からスタートです。私も西宮に住んでいるので、この辺はよく来ます」
■大正時代に撮影された港の写真 海のすぐそばには灯台
1920年頃、大正時代に兵庫県・西宮市内で撮影された写真です。どこの風景なのでしょうか?
【兵動さん】
「今日の写真、大正時代!川から海につながる、ヨットハーバーかな?西宮や芦屋にはヨットハーバーありますけど、船がヨットとは違うか。これ誰に聞くねん」
誰に聞いたらいいのか分かりませんが、今日も聞き込みスタートです!
【兵動さん】
「お兄さん、何歳?」
【街の人】
「16歳です。平成18年生まれです」
【兵動さん】
「平成18年の子に、昭和45年生まれのオッサンが、大正時代の写真について聞くか」
【街の人】
「もしかして今津灯台ですかね」
【兵動さん】
「あ、すごいな。見覚えあるの。平成生まれに教えてもろた」
写真に写っているのは「今津灯台」ではないか、ということで兵動さん、西宮市の海側へ向かいました。
【タカハシ商店 高橋登司子さん(93)】
「ハンチングで黒縁メガネいうたら兵動さんや。(お店に入れてもらえますか?)どうそ、広い店。駄菓子屋なんです」
【兵動さん】
「アイスの冷凍庫に鶏肉かなんか入ってるのも売り物ですか?」
【高橋登司子さん】
「私用や。痛いとこ突きはる。(創業は)67、8年か。近くにコンビニができて、ほんでもういかれてしもうた」
■灯台を建てたのは「大関」 お酒の運搬のためだという
本題の写真について聞いてみます。
【高橋登司子さん】
「これ今津の灯台。嫁呼ぶわ」
【高橋典子さん】
「うわ兵動さん。(写真を見て)今津灯台」
【高橋登司子さん】
「(息子が)子供のとき歩いて散歩行っとった。何の障害物もなくて、これしかなかった」
【兵動さん】
「これは何のためにできたものなの?」
【高橋典子さん】
「この辺、酒蔵が多いので、お酒を運ぶのに船が出ていってたんだと思います。たぶん長部(おさべ)さん、『大関』の創業者が建てた」
【高橋登司子さん】
「(大関は)ここら辺を牛耳ってはる。威張ってるということ違うで。知らん人がないって事や」
大関の本社がすぐ近くだということで行って話を聞くことにします。
【兵動さん】
「ここ、お酒関係のお店かな。『関寿庵(せきじゅあん)』。ちょっと聞いてみよう。今津灯台の事を聞いているんですけど、大関さんが建てたと」
【甘辛の関寿庵 店員】
「そうです。大関の本社はすぐ裏にあるんです。ここは『関寿庵』といって、大関のアンテナショップになるんです。灯台の写真はここにも飾っています」
担当の方が来るまで、やっぱり兵動さんはお酒の試飲販売コーナーが気になって仕方がないようで…
【甘辛の関寿庵 店員】
「おいしいですよ。いっとかないとあかんです。『清酒しぼりたて生原酒』。このお店だけで出しています」
【兵動さん】
「じゃあ、すいません。(試飲のコップに)満タン、いただきます。なんて表現したらいいのやろ。魚でいう刺し身みたいな、新鮮なのが伝わってきます。ちゃんと味がしながら、のどにスッと入ってくる。ええなあ」
■大関の“灯台マニア”に詳しく聞く
ほろ酔い気分で大関の本社に連れて行ってもらいます。
【大関 宣伝広告グループ 村川有佐さん】
「よろしくお願いします。灯台マニアがいまして…」
【大関 総務人事部 伊藤大輔さん】
「こんにちは。マニアです」
【兵動さん】
「めちゃくちゃ詳しそうな人が来た。今津灯台が建てられたのはいつぐらいなんですか?」
【大関 伊藤大輔さん】
「1810年になります。創業家、長部家の5代目『長部(大坂屋)長兵衛』が建立しました。(古い木の札を見せてくれて)5代目が立てた後48年ぐらいたって痛みが激しくなりました。そこで大阪の町奉行所に修復の申請をして認められ、6代目『長部文次郎』の時に修復・再建した記録が残っています」
今津灯台がある今津港は、灘(灘五郷)で作ったお酒を江戸に運ぶ、『下り酒』の基地として栄えた港でした。その航海の安全のために建てられたのが今津灯台です。昭和43年、海上保安庁の正式な航路標識として登録されました。木造で登録されているのは今津灯台だけで、航路標識としては現存する日本最古の木造灯台だということです。
■通常非公開の灯台の中へ
【兵動さん】
「今もときどき見にいくんですか?」
【大関 伊藤大輔さん】
「『灯台が呼んでるな』と思ったら行きます。(中は)一般公開はしていないです。(灯台の声に耳を澄ますと)今日、兵動さんを入れて『ええよ』と言ってます」
写真は大正時代に西宮市内で撮影された「今津港」だと分かりました。今もあるという今津灯台へ連れて行ってもらいました。
【大関 伊藤大輔さん】
「修復はしていますが、基本的には昔のままです。土台は高砂の竜山石です」
【兵動さん】
「高砂の竜山石。以前行きました」
【大関 伊藤大輔さん】
「姫路城の石垣なんかにも使われている石です」
昔は大関の丁稚(でっち)さんが、毎夕、菜種油で明かりをともしていたそうです。
いよいよ灯台の中へ入らせてもらいます。
【兵動さん】
「江戸時代から今もまだ建っているというのがすごいですよね」
■2023年には移転 その後も灯台として働き続けることに
【兵動さん】
「今すごい雪降ってきた。なごり雪でしょうか。灯台はこのまま何十年もここに建ち続けるんですかね」
【大関 伊藤大輔さん】
「実は、背景を見ていただくと分かるんですけども、防潮堤の工事が行われています。その工事と合わせて、灯台の機能を維持するために、(今津港の)外に移転する予定になっています。今は緑色のランプが点くのですが、移る先は港の対岸になって、航路標識のルール上、赤色のランプになります。緑色に光る姿は2023年夏には見られなくなります」
【兵動さん】
「ちょっと悲しいのもありますが、これからもバリバリ仕事してもらうための移動だから、また歴史を重ねていってもらうことになりますね」
写真の撮影場所に移動します。
【兵動さん】
「(写真と同じように)灯台が見えるわ。はいチーズ。今津灯台でした。昔、大関さんが建てたのが、西宮・今津のシンボルになっているんですね」
(関西テレビ「報道ランナー」 2023年3月17日放送)