日本維新の会・馬場伸幸代表 万博“向かい風”「全然ない」と強気 「立憲と組んでもロクなことない」毒舌は今だけ? 自公過半数割れなら…どう動く?【ホンネを聞き出せ!話題の人をスズキが直撃<第2回>】 2024年09月27日
関西テレビの東京駐在・鈴木祐輔記者が、今注目されている重要人物たちにじっくり話を聞き、ホンネに迫るシリーズ。
第2回の取材相手は、日本維新の会・馬場伸幸代表。大阪17区選出の関西議員である。
2023年の統一地方選では大躍進を見せた維新だが、最近は伸び悩んでいる。FNN世論調査を見ると、維新の政党支持率は同年6月に9.3%を記録するも、2024年3月には半分足らずの4.4%まで下落した。4月にはやや回復して5.0%となっている。
伸び悩みの原因は、維新が推し進めてきた「大阪・関西万博」にあると言われている。維新は次期衆院選の目標として、「野党第一党」「与党過半数割れ」を掲げるが…将来への戦略を聞いた。
■党勢拡大に「万博」がブレーキ?
―Q.万博で向かい風になっているのは、代表も感じているんですか?
【馬場代表】「全然ないね。我が党の支持率って、国政とか統一地方選挙とか、大型選挙があってグーッと上がっていくんだよね。選挙が終わって3カ月、半年経つと、ヒューッと支持率が下がっていく」
「鈴木さんは特に万博を絡めて『維新がアカン』という論調を張ってはるけど、ほんまにアカンのやったら、(3月の)鳥取県議会補欠選挙、みんなが『万博アカン』と思ってるのやったら通れへんと思うけどね。1億2000万人のうち1億人が反対してるんと違うから。ネガティブとポジティブの両方の情報を発信していくのは、メディアの皆さん方のお仕事違うかな」
―Q.ものすごく力を入れてきた万博が、ものすごい批判を浴びた。内心『ちょっとやばいな』とは思いませんでしたか?
【馬場代表】「全然ないな。必ず盛り上がるから。(1970年大阪万博の)当時の新聞見たら、『万博は無用じゃないか』『太陽の塔なんか要らんやないか』とか、今出していただいてる論調とほんま似通ってる。夏ぐらいになると、各パビリオンのコンテンツが発表されだすから、風向きも変わってくる。必ずグーッと評価が上がっていく。間違いないと思うからね」
インタビューは、維新・吉村洋文共同代表(大阪府知事)が、万博批判をした番組とコメンテーターを名指しして「入れさせんとこうかな」などと語った、いわゆる「出禁発言」の後に行った。馬場代表は「イッツ・ア大阪ジョーク。わからんかな?」とSNSで擁護し、その態度は吉村共同代表が発言を撤回しても変わらない。話題は、維新がメディアから批判を受けた際の姿勢の話に及ぶ。
■批判報道は「ネガティブキャンペーン」?
―Q. 維新の皆さんの物の言い方が、メディアに対して注文されたり、批判するとすぐ「ネガキャン」と言ったりする。反対意見に真摯に耳を傾けない、独善的な空気感はないですか?
【馬場代表】「それはね、プロ同士が話してるよね。意見が違うかったら激論になる。メディアの話を全く聞いてないわけじゃない。橋下さん(橋下徹元大阪府知事)時代から、記者会見は徹底的に最後まで、質問がなくなるまでやる伝統は、ずっと受け継いで、どんだけボロクソ言われてもちゃんとお答えしてる。だから主張を入れさせてもらうのは当たり前。プロ同士の、主張と主張がぶつかってるだけの話だから、我々が言うことに『なんで攻撃するんですか』って言う方が、ちょっと筋がおかしいと思う」
―Q.僕らは話を聞きに行っている。戦うつもりで言ってないですよ。
【馬場代表】「メディアの皆さん方って、国民を代表して、国民が聞きたいことを聞かせてもらいますよと。記者さんも真剣に聞いてくれなあかんし、こっちも真剣に答えてる。記者さんの聞いたことと180度違う意見を言われへんのは、ある意味怖いよ。(メディアが政党の)言論を抑え込んでるっていうこと。我々が『そんなこと言うたらあきませんやん』って、何で言うたらあかんの?俺らもプロとして真剣にやってる。そこはちょっと理解しといてもらった方がいいと思います」
―Q. 僕らに対してもそうですし、他の主張をする党を「なくてもいい」と言って、存在まで否定するっていうのも、ちょっと微妙な感じがします。
【馬場代表】「『ある政党ってどう思っておられますか?』って言われたから『要りません』って言ったわけ。『たたきつぶす』という発言もしたけど。まともにプロとして、国会議員の仕事をせえへんから言ってる。憲法審査会でもされてる。チンタラチンタラええ加減なことされてると腹立てへん?『まあボチボチやったらよろしいがな』って思ってるんやったら、神さんやと思う。
国民・納税者をなめてるん違うかなと思う。そこに怒りを覚えへんことの方が、メディアとしておかしいと思う」
■誘われても…立憲とは組めない?
―Q.政治改革について、他党でも「こういう政治改革をすべきだ」と案を出しています。立憲は「政治資金パーティー全面禁止」と言っています。維新は全面禁止ではない。なんか維新、弱くないかと。立憲よりも少しハードルを下げている気がするんですが。
【馬場代表】「これはもう是非注目しておいていただきたい。我々は、政治資金パーティーのパーティー券を企業団体に販売することは、内規で禁止ということになったね。(立憲も)言うた以上やってください。今の段階では、高めの球を投げようと思ったらナンボでも投げられる。我々は有言実行という路線をずっと歩んできてるから、できる範囲のことは言うけど、立憲さんみたいに素晴らしいことは、今回は言えてないかも分からんけど」
少し解説が必要だが、馬場代表の主張はこうだ。
維新は政策を掲げた時点で自ら先に実行するが、立憲は規則ができるまでは実行しない。ここに大きな違いがあるという。
【馬場代表】「他の政党がやらんでも、自分らでやったらええわけよ。旧文通費の領収書の公開も、今や国民民主党さんもやってる。立憲民主党も共産党もやったらええ。みんなやって自民党だけになったら、やらざるを得んようになる。それが政治の力。立憲が言う『皆がやらんと』『皆が約束して』とか、やらんの最初からミエミエやからね」
「俺の目から見て、どう考えても納税者・国民のための仕事をしてるとは思わないから、(立憲の)不要論を言ってる。自民党って、腐ってもやっぱり、目の前の課題とかこなしていく立場におるし、責任もあるから。悪いこともいっぱいあるけど、ええことも時々やってる。何もええことしてないから。野党第一党の方々って」
―Q.立憲が言っている「ミッション型内閣」。「自公過半数割れ」となったら、本当に呼び掛けが来ると思うんですよ。どっちが野党第一党になろうと。どうされますか?
【馬場代表】「仮定の話やからね、その時が来んと、ほんまにどういう判断するか分からんけど。基本的な政策の部分、外交、安全保障、憲法、エネルギーっていう国家の基本は合致してなかったら、そこから派生してくる政策、法律がうまいことまとまるはずないもんね。それは細川政権だけじゃなしに、過去の歴史が証明してるから。だから俺は今の段階、今の立憲民主党さんと組んでも、ろくなことにならんの違うかなとしか、今は思われへんね」
―Q.あくまで「今は」っていう…
【馬場代表】「今はね」
■立憲より自民のほうが「マシ」?
―Q. 馬場代表も昔は自民党にいらした。国会議員秘書も、地方議員もされていた立場から見て、過去の自民党と今の自民党、何か違いますか?
【馬場代表】「平成元年(1989年)にできた『政治改革大綱』※は、ほとんどが第三者、外部の方々が作った。それを受け入れる間口の広さみたいなのが、当時は自民党にあったと思う。今は声すら上がらない。随分自民党も劣化したなと思う。若手の中で『こんなことやっててええんかい』と立ち上がる人間がおらん。そこが非常に憂うべき部分だと思うね」
(※政治改革大綱…リクルート事件後に自民がまとめた総合的な再発防止策)
―Q.例えば万博を開催するまでは、立憲と組むより、自民党に寄っておいた方がいいとか、そういうことはないですか。
【馬場代表】「ないね。是々非々でやってきてるわけやから。万博は国家事業やから、やっぱり政府と助け合いながらやっていく。うちも大阪府・大阪市の首長を抱えてるから、敵対してできるわけないから、協調するのは当たり前の話だと思う。まあ、助け助けられっていうところはあると思うね。万博に関して言うと」
―Q.だから、恩義のある自民党に対して、政権から引きずり下ろすようなことは、しにくいんじゃないですか。
【馬場代表】「それやったら予算は賛成するん違う?どっかの政党、本予算に賛成してたけどな(2022年度予算案に国民民主党が賛成)。その後の混迷ぶりというのは、国民は見てると思うけどね」
―Q.政権交代するかしないか微妙な選挙結果になった時に、自公からも「協力してくれ」と言って来るでしょう。立憲からも来るでしょう。どっちも可能性はあると?
【馬場代表】「何党が何議席持ってるとか、そういう数の問題があるから、一概に言われへんけどね。我々はやりたいことがあるわけやんか。具体的な政策、『日本大改革プラン』をはじめとして、そういうことができることが確約される、担保される、そういうポジショニングを必ず取ると思うんだよね。名誉のためじゃなくて、ほんまに仕事させてもらうためにやる。そういう発想で、そのとき判断するん違うかな」
■真の目標「維新単独政権」の姿は?
衆院選3回以内で単独過半数を獲得し、単独政権をつくる…これが維新の目標だ。自民と維新の2大政党で競い合うという。政権を担うなら、どんな国を目指すのか。馬場代表は「国民と納税者が“ワクワク・ドキドキ”する国造り」を掲げた。
―Q.「ワクワクドキドキする国」ってどんな国ですか?
【馬場代表】「高度経済成長期、各家庭が夢や希望にあふれてたよね。もっと良うなるんちゃうかとか、こんなの買いたいなとか。そういうワクワクドキドキ感が生まれてくるような社会作り。政治もちゃんとやって、国民が納得してくれる政治をやらないかん」
―Q.人口減、高齢化がそう簡単に止まらない中で、ワクワクドキドキする国ってつくれるんですか?
【馬場代表】「高齢化よりは長寿化やけど、やっぱり元気でワクワクドキドキ。70代半ばくらいになってきたら暗い気持ちになってる。『誰に介護してもらえるのかな』とか。高齢者の皆さん方が安心できる社会づくり。若い人らは、少子化の一因は経済的な部分が大きいということは分かってるわけやから、我々は教育無償化とかもやってる」
―Q.「馬場代表は地味」という声がある。いざ維新が過半数を取る、そうなった時には「馬場総理」なのか、そうじゃないのか?
【馬場代表】「別に内閣総理大臣になるために政治家をやってるんではない。だから、もし政権を任される時に、別に『吉村総理』でも俺はええし。その時のお互いの状況ってあるやん。知事やりながら総理なんかできへんわけやから。そういう巡り合わせみたいなのが、この仕事ってすごく大きい。『俺でないと』とか『吉村に譲って』とか、全く思考回路にはないね」
―Q.この手の話題になると、必ず「橋下さんが戻ってくる?」と聞かれる。あり得るんですか。
【馬場代表】「選挙は無理かも分からん。民間大臣はいけるわけだから、『改革担当大臣』かな。一回やったから(コメンテーターで)飯食うていかれへんようになるかと言ったら、竹中(平蔵)さんも、その時の経験を生かして、また民間に戻ってちゃんと生きていってはるやんか。橋下さんは竹中さんタイプで、残された人生をやりはったらええん違うかな」
―Q.馬場さんは総理大臣になる自信と覚悟はありますか。
【馬場代表】「覚悟はしてるね。市会議員にならせていただいた時に、ガチッとスイッチ入って、当時の後援者の皆さん方の前で『内閣総理大臣目指してやります』とお約束したわけやからな。俺しかおれへんというシチュエーションになった時に、それはやる。でも自信があるか言われたら、自信はないわね」
~取材を終えて~
インタビューの後、馬場代表は「立憲をたたきつぶす必要がある」と豪語して衆院の補欠選挙に臨み、立憲に2連敗した。選挙後も「別に悪口を言っているのではない。今後も厳しく指摘する」と強気の姿勢を崩さない。しかし、立憲と維新の「実力差」と、自民への世論の反発があらわになった今、風向きが変わってくる可能性もありそうだ。自らの政策を実現するために、数々の「奇策」を繰り出してきた維新。これから何が飛び出すのだろうか。
(関西テレビ報道局 東京駐在記者 鈴木祐輔)