東京駐在のカンテレ記者が、キーパーソンに取材するWEB特別レポート。
今回は防衛副大臣の中山泰秀氏。衆議院議員の秘書を経て、現在5期目。
北東アジアの情勢が緊張感を増す中、防衛副大臣としてどう舵取りをするのか。また、11月に迫った大阪都構想の住民投票について、地元選出の国会議員としてどのように向き合うのか聞きました。
中国側から見たら、日本は“障壁”
――Q:日本の安全保障の環境の現状認識は
昨日(10月15日)も中国海警局の船が日本の漁船を追いかける形で領海に対して入ってきました。
日本の周辺を考えると、 東シナ海・南シナ海などのエリアでの中国の力による現状変更を目指す動きがあります。また、北朝鮮からのミサイル・核開発、それから拉致問題、それから北側はロシアと、こういう3正面に対して24時間、365日、自衛隊が対応せざるを得ないような状況になっています。
――Q:平和を享受しているように感じている方も多いと思うんですけど、実はすごくギリギリのところで、せめぎあってる
そうですね。中国は中国で彼らの目標というのがある。 これは私見ですが、やっぱり海の外に出ていくことだと思うんですよ、大陸の国家ですから。
太平洋という大きな海を見ると、ハワイから西側ぐらいの覇権はアメリカが握っている。仮に中国がハワイまで出ていこうとすると、どうしても日本という国を越えざるを得ないということになる。
世界地図を逆さにして見てもらったらよく分かるんですが、中国側から出られる所って決まっているわけですね。 沖縄本島と宮古島の間とか、津軽海峡とかオホーツク海とか。要するに、太平洋に展開しようと思ったら、もう限られたその隙間しかない。
その時に日本列島を考えると、太平洋側から見たら“防波堤”だけど、中国側からは“障壁”に見えてしまう。 その障壁がある意味、乱暴な言い方だけど邪魔に見える。
そう考えると、安定的に出られるようにするために、色々な戦略が向こう側にはあるのかもしれませんよね。それが軍事的に見ると、日本にとっては脅威に見える。 中国の日本の大使館のナンバー2なんかも私のところに、先週こられました。
その際彼らは「お互いの国の間にはいろんな問題があるけれども、懸念があるからこそしっかり話し合いましょう」と言ってくる。その時に、こちらとしては、「少なくとも日本と中国の間で領土問題は存在しない」と返すわけです。我が国固有の領土ですから尖閣諸島は。そこに対するご意見が中国側もあるのであれば、我々は好戦的な態度は持っていませんから。何かお話したいことがあったら言ってこられたら結構だと思いますけれども、領土・領海・領空を守り抜くという揺るがない国益というものはしっかりと主張していく。
弾道ミサイル 北朝鮮から大阪まで約9分で到達
――Q:河野前大臣が計画を停止したイージス・アショア(地上配備型イージス・システ)の代替策として、3案(石油採掘リグ、商船、護衛艦)が検討されている。そもそもの導入の背景は。
日本のミサイル防衛は、イージス艦で弾道ミサイルが大気圏外を飛行している上層の段階で迎撃し、PAC-3で大気圏に再突入した後の最終段階で迎撃するなど、多層防衛を基本としています。
日本の地政学上の特性を考えると、どこが撃ってくるとは言いませんが、近隣諸国で核を持っている国とか弾道ミサイルを持っている国って限られますよね。
例えば北朝鮮が弾道ミサイルを撃ちましたといったら、大阪にある関西テレビの本社までだいたい9分で到達する可能性があるわけです。
それに対応するわけですが、まず飛んでくる弾道ミサイルを見つけるのに時間を要します。今ここを飛んでるよって分かって、それを打ち落とすミサイルをどこでミートさせるか、これにまた計算がいる。この至近距離ではものすごくオプションが限られてくるです。
イージス・アショアもイージス艦と同じ上層で迎撃するものです。残念なことに、導入の背景の一つに人口減少があります。自衛隊員をいくらリクルートとしても入ってくれず、充足率がもう9割ぐらいなんですね。簡単に言えば100人で動かすべき船が、7人8人、欠員が出ているという状態なんですよね。今後も、船を動かして、イージスシステムを、船のイージスで運用していくのが、だんだん隊員にとってもきつくなる可能性が否めない。
地上配備型のイージスがあれば、地上なので要員も少なくて済むわけです。人員確保に要するいろんな意味での必要経費含めて抑えられる。陸にいくつか、地上型のイージスがあれば、船の運用の負担軽減にもつながるだろうと考えていました。
そういうことから、地上と海のイージスを組み合わせたら、負担軽減に繋がるんじゃないかという、そういう側面からやろうという話でした。
――Q:3案の中の護衛艦などを活用する案を軸に検討という報道も
防衛省としては何か決めているわけでは一切ありません。
大阪市を守るのではない 大阪市民の権利を守りたい
――Q:「大阪都構想」の是非を問う住民投票が告示された。どのように評価している。
メリット・デメリットって立ち位置によってだいぶ違うと思うんですよ。
国会議員をしている私の立ち位置から見ると、年に1回「予算要望」を受けるという仕事がある。
これは大阪市などの全国に20ある政令市と47都道府県が持っている、ある意味“特別な権利”で財務省に直接予算の折衝ができるんですよね。
大阪府では、これまでは大阪府・大阪市・堺市の3つの自治体が「予算要望」を国に対して行っていました。 現在は、大阪市で直接的に要求を出したいことがあれば、大阪府とは別に国に対して直接要望できるわけです。ところが、4つの特別区に分かれて、市がなくなるということになれば、区は、国に対して直接要求できないから府を通すしかない。
特別区になった場合、区長の予算要望は、国は直接受けませんから、その時点で何か本末転倒な気がしています。
――Q:維新の会としては二重行政の解消を最大の焦点として掲げている。
それを言うなら、大阪府と政令市としての堺市の関係はどう考えているのか。
そこが明確ではないですよね。
いわゆる「都構想」についてはデメリットしかないと考えています。例えば、これまでは、国から直接「地方交付税」をもらっていましたが、もらえなくなるんですよね。府に一括して交付されることになり、自主財源は4分の1になります。
例えば塾代の助成など市独自の財源でできているものが、府に要望を出して予算をもらわないとできなくなっちゃうんで、本来自分たちの所で上がっていた税収すら、自分たちの財布に返ってこないリスクが出てくる。要はお小遣い制になっちゃうってことですね。
常に母親にお小遣いちょうだい。ダメよって言われたらもらえないってことは、このサービスを区長がこれやりたいと思ってもできなくなっちゃう。
例えば、府議会を考えてみてください。4人の区長が、大阪市が独自に市内で行っているサービスを続けたいと府に要望を出したとしますよね。大阪府の人口のうち、大阪市って30%ですよ。 府議会の中でも3分の1。 府議会で大阪市内のことについて要望を出したとして、過半数を超えないといけないから、そのハードルが非常に厳しくなる。3分の2のマジョリティを説得することは容易ではありませんから。
僕は一市民として、大阪市を守るか守らないとかって箱にこだわっていません。
私が言いたいのは市民として現在持っている権利、それを放棄させないで欲しいということ。市を守るんじゃないと市民の権利を守るんですよ。それをみんなで考えていただきたい。