コインランドリーで使う大型洗濯機のメーカーがまとめたデータによると、ここ数年でコインランドリーの店舗数は右肩上がり。
2015年には1万8000軒ほどでしたが年々増えて、去年は約2万4000軒に。6年間で約6000軒と3割も増えました(TOSEI調べ)。
イマドキのコインランドリーは、さまざまなニーズと用途に合わせて目覚ましい進化を遂げています。
その最前線を取材しました。
異業種も新規参入…業界全体で盛り上がり見せるコインランドリー
薄田ジュリアキャスター:
「大阪府吹田市にあるショッピングセンターに来ました。ここにも半年ほど前に新しくコインランドリーができたそうなんです」
コインランドリー『wash+ イズミヤ千里丘店』。
こちらの機械は洗剤を使わず、アルカリイオン水で汚れを落とすというもの。
客:
「汚れもすごく落ちてたし臭いもなかった。仕上がりもふんわりしてたんで大満足でした」
洗剤を使わないので、すすぎ回数が少なく節水につながります。さらにスマホアプリで操作できたり、女性でも安心して使えるよう、洗濯機内を見えなくする機能もあります。
この店をフランチャイズで運営しているオーナー。本業は全く別の業種です。
スリーエスコーポレーション 井坂美佐社長:
「もともと物流の事業者でして。雨の日はスーパーの利用が少ない一方、コインランドリーは逆に雨の日に利用したいじゃないですか。雨の日の来店の動機になるということで」
異業種が新規参入するなど、ここ20年でコインランドリーの店舗数は右肩上がり(出典:2013年までは厚労省・2015年以降はTOSEI)。
「国際コインランドリーEXPO」という博覧会も開催され、業界全体で盛り上がりをみせています。
“コストよりも時間を優先” 客のニーズつかむ
中には、独自のサービスを展開する店も。
大阪府八尾市にあるドッグランが併設されたコインランドリーは、犬専用の洗濯機を備えているんです。
客:
「月1~2回、洗濯物を持ってドッグランで遊びがてら」
「今日はペットシートとマットを。汚れがすごく落ちるし、毛とかも乾燥機できれいに取れてるんで」
グッドランドリープレイス 中村陽子オーナー:
「完全にペット専用の特注になってます。乾燥機も穴が大きくて毛が排出されやすい。実は洗剤もちょっとお高いんです、人用のよりも」
犬専用の洗濯機は、人間用と比べ400円ほど高いものの、大阪府以外から来る常連客もいるほどの人気だそうです。
なぜ今、これほどコインランドリーが求められているのでしょうか。
大型業務用洗濯機(10kg以上)で国内シェアNo.1のTOSEIを訪ねました。社内には、最新の洗濯機がずらりと並んでいます。
TOSEI関西支店 尾野隆之 支店長:
「こちらはですね、敷布団専用の乾燥機になります」
これまでコインランドリーの布団洗いといえば、掛け布団や毛布を指していましたが、今では敷布団の洗濯から乾燥までできる「次世代型」が登場しています。
敷布団を乾燥機に入れて30分後。取り出してみると、ふっくら仕上がっています。
尾野支店長:
「ライフスタイルが非常に変わってきていて、共稼ぎの時代になっていますので、家事の軽減などが大きく注目を浴びていまして。全国的にコインランドリーの需要っていうのが高まってきています」
コインランドリーの需要は時代背景と深く関わっています。
小型のコインランドリーが広まった1970年代。当時のニーズの多くは、働く単身世帯の日常使用でした。
80年代には、こたつ布団や毛布が水洗いできる素材に変わり、大型のコインランドリーが普及するきっかけに。
この頃から、主婦層の利用もみられるようになりました。
90年代に入ると、専業主婦世帯と共働き世帯の数が初めて逆転(出典:厚労省)。
共働き世帯の増加に合わせ店の数もどんどん増えていき、ニーズもより多様に…。
そして現在。5月30日にオープンした『LAUNDRY DESIGN 長居東店』にお邪魔すると、まさに令和のコインランドリー。
明るくて清潔が当たり前で、ますますオシャレで便利に進化しています。
客:
「インテリアが昔の暗い感じと違うので利用しやすい。子供のために図書館と区役所に行ってきて、(洗濯が)その間にできちゃってるんで。家事の短縮というか、時間の有効活用ができるので、助かっています」
「1日とか半日(洗濯で)つぶれる時もあるんで。確かにお金はかかるんですけど、利便性とか考えると代えられないと思うんで」
今コインランドリーを求めているのは、コストよりも時間を優先する人たちが多いようです。
投資額は「家建つくらい…」 美容室に併設のコインランドリー
日本で唯一かもしれない“コインランドリー女子”のミユキさん。
社会福祉士として働く傍ら、全国のコインランドリーを訪ね、ブログで魅力などを情報発信しています。
ミユキさん:
「いろんな面白いコインランドリーが全国にあるものですから。コインランドリーって無人で無機質なイメージがあると思うんですけども、前なんか、待ってる間中、隣に座ってるおじさんの身の上話みたいなのを…。そういう偶然の出会いみたいなことが、私にとってはコインランドリーの楽しみの一つであったりもします」
そんなコインランドリー女子おススメの店が、兵庫県高砂市にも…。
美容室『ヘアサロン ハル』に、3年前に併設されたコインランドリー。
やってきたお客さんはまず洗濯物を投入して、その間にヘアカットができるという一石二鳥のシステムです。
客:
「まとめて済ませられるというのは時短になるし、午後からはまた違うことに時間が使えるのでいい組み合わせ。(コインランドリーが併設された時は)思い切ったな、回収できるんかなと(笑)。懐事情もすごいなと思いました」
店主の浜田さん。ずいぶん思い切った投資をしたそうで…。
ヘアサロン ハル 浜田健太さん:
「本当ね、ぶっちゃけ家が建つぐらいのお金が…。子育てをしたり家庭があったりするスタッフが多かったんですよ。『ママでもまた美容師ができる』という環境を考えてたら、何がサポートできるかなということで、洗濯をサポートできたら面白いかなと思って」
なんと、コインランドリーを作ったきっかけは、お店で働くスタッフのためだったのです。
スタッフ:
「まず朝に干して来なくていいというのと、夕方に帰ってから取り込まなくていい。めちゃくちゃ楽です」
「(空いた時間で)ゆっくり朝ごはんを食べてコーヒー飲んで。それまでできなかったです」
スタッフも大喜びで、コインランドリーをきっかけに、美容室の新規のお客さんも増えているんだそうです。しかも…。
浜田さん:
「これがウォールストリートジャーナル。日本のコインランドリー事情がこうだと紹介されていて…」
アメリカの経済紙「ウォールストリートジャーナル」で、女性の社会進出に貢献していることや、コインランドリー女子のミユキさんと企画した、洗濯をテーマにしたアート展を開催したことが記事になりました。
今や世界も注目する、日本のコインランドリー。
時代のニーズに応えながら、まだまだ進化しそうです。
(関西テレビ6月21日放送『報道ランナー』内「ヒットにワケあり!オカネのヒミツ」より)